ジャック・キャヴァリエ

ジャック・キャヴァリエ ルイ・ヴィトンの調香師(5ページ)

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ジャック・キャヴァリエ
Jacques Cavallier
1962年、フランス・〝香りの都〟グラース生まれ。
ジャック・キャヴァリエの全ての香水一覧
ジャック・キャヴァリエの全香水一覧(写真なし)
<代表作>
ヴォカリーズ(資生堂)
クラシック(ジャン=ポール・ゴルティエ)
ステラ(ステラ・マッカートニー)
ニュ(イヴ・サンローラン)
ノワール・デ・ノワール(トム・フォード)
ブルガリ・プールオム(ブルガリ)
レ・パルファン ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン)
ロードゥイッセイ(イッセイ・ミヤケ)

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調香界のモーツァルト

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彼が創り出すフレグランスの特徴は香りの構造がピラミッド型ではなく、スパイラル構造であること。つまり時間によって香り全体が変化するのではなく、香料が時間差で飛び出す構造です。

『香水ブランド物語』 平田幸子

2016年9月、香水を販売していない〝最後のラグジュアリー・ブランド〟であった、ルイ・ヴィトンが7種類の香水「レ・パルファン・ルイ・ヴィトン」を発売しました。東京と大阪の二店舗で、初日に少なくとも2000万円もの売り上げを上げたと推定されるこの奇跡のコレクションをクリエイトした人こそ、2012年にルイ・ヴィトンの専属調香師になったジャック・キャヴァリエです。世界の2大香料メーカーの1つフィルメニッヒ社の調香師を22年間つとめ、三大調香師の1人(ソフィア・グロスマンジャック・ポルジュ)と呼ばれるにいたります。

キャヴァリエは、3代続く調香師であり、母親は、香料の成分のブレンダーでした。6才の頃より両親の仕事を手伝うようになり、調香師である父親に、天然原料について叩き込まれるようになりました。そして、ローズ、アガー・ウッド、ジャスミン、オレンジ・フラワーの品質が香水の品質を左右する必要不可欠な要素だと考えるようになりました。

10才より、学校が休みの時期には、両親が働く香水工場で働くようになります。やがて天然香料で有名なシャラボで3年間働きました。その間朝の5時から7時まで2時間、父親から原材料について学びました。「私のクリエイトのルーツはこの毎朝の二時間にあります」とキャヴァリエ自身も回想しています。

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ロードゥイッセイというモンスター・フレグランス

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ジャック・キャヴァリエとオリヴィエ・クレスプ。

ジャック・キャヴァリエは、1990年にフィルメニッヒ社で働くようになりました。そして、そこで二人のキーパーソンと出会うことになります。〝義兄弟〟アルベルト・モリヤスと、美しき師匠シャンタル・ルース(元フライト・アテンダント)です。「ロードゥイッセイは彼女がいたからこそ完成できた作品です」とまでキャヴァリエに言わしめた人です。フィルメニッヒ社在籍中の彼のキャリアは、まさに〝調香界のモーツァルト〟と呼ぶに相応しいものでした。

シャンタル・ルース

特筆すべき彼の成功は、オゾンノートの創造です。カロンという、ウォーター・メロンの香りを伴った軽い潮風のような香りの物質を使用し、ロードゥイッセイを代表とするオゾンノートの香水を1990年代に大流行させました。一方で、1995年にブルガリ・プールオムにより、1万円前後の香水が、ラグジュアリー・ブランドを身近な存在にする役割を担うことになりました。

キャヴァリエ自身はジョルジオ・アルマーニの「アクアディジオ」と「ロードゥイッセイ」が自身の最も成功した作品だと考えています。一方、彼自身のお気に入りの香水として、1966年にエドモンド・ルドニツカにより生み出されたクリスチャン・ディオールの「オー・ソバージュ」と、1977年にジャン・ルイ・シュザックとジャン・アミック、レイモンド・シャイランにより生み出されたイヴ・サンローランの「オピウム」を挙げています。「〝オピウム〟こそが、1970年代後半の香料の進歩の導火線でした」と語っています。

見えない芸術=香水。見える芸術=ボトル

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キャヴァリエは、後にトム・フォードのためにYSLの香水を作り、トム・フォード・ブランド・スタートの後には、2007年にタスカン・レザーノワール・ド・ノワール(両方ともハリー・フレメントとの共作)を作りました。「アメリカ人は甘さを愛しています。一方、アジア人はオスマンサスを愛しています」と語るキャヴァリエにとって、自身の香水の神様は、奥様と言い切ります。「私は自分の全ての香水から、一番最初に思い浮かべるのは妻です。それは、最後にどの香りにするか選んでもらうのが彼女だからです」。

現在、二人の間の娘も調香の勉強をしているといいます。キャヴァリエは、合計で今まで80以上の香水をラグジュアリー・ブランドのために調香しました。香水の芸術性を誰よりも理解し、時代を最も敏感に映し出す彼の作品の数々は、彼の香水を愛用していた人々にとって、その時代を生きた記憶を呼び起こす魔法の水なのです。人間は、ふとした瞬間に全く失っていた記憶が呼び覚まされる時があります。それは香りによってなのです。

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