トム・フォード

トム・フォードの香水の全て〔2018年5月更新〕(3ページ)

    トム・フォードの香水の全て
    All About Tom Ford

    たとえば、トム・フォードという男は、女性が踵の平らな靴を履くのを好まない。だから、彼の下で働く女性たちは、この偉大な上司がいつ来るか分からないので必ず引き出しにハイヒールを忍ばせておく。

    グッチ時代からトム・フォードと言うデザイナーは、ファッション・ディクテイター(独裁者)と呼ばれるほどに、全てのクリエイションを自分で管理していました。そして、現在もブランドのすべてを靴一足の生産にいたるまで目を通しています。そんな男がクリエイトする香水だからこそ、並々ならぬラグジュアリー・エッセンスがそこに存在するのです。


    『トム・フォード』という香水帝国の誕生

    人は店で必要なものや不可欠なものを買うが、それに対して高い金を払う。なぜなら、店は我々に、まれにしか買い手がつかないような物の価格の分も上乗せして値段をつけているからだ。それは贅沢品や高級品の類のことだ。このようにして高級品は、必要不可欠な品物に恒常的に税金をかけつづけるのだ。

    『人間的な、あまりにも人間的な』ニーチェ

    2日間だけ伸ばしている顎髭と短く刈り上げた髪。その姿はまるで映画スターのようなトム・フォードの経歴をここで軽くおさらいしておこう。

    1962年にアメリカのテキサス州オースティンの上流階級で生まれたトムの祖母はクレージュを着るようなお洒落な美人でした。「ボクが祖母から受けた影響は計り知れない」とトムは回想しています。やがて、ニューメキシコ州サンタフェで10代を過ごし、映画俳優を目指し、ニューヨークで、スタジオ54や、アンディ・ウォーホルのファクトリーに出入りするようになります。

    そして、パーソンズにて建築デザインを学びました(パリで学業を終え、卒業前の研修をクロエの広報担当補佐として受ける)。1988年にペリー・エリスで、デザイン・ディレクターになり(同時期、マーク・ジェイコブスも在籍)、90年にはグッチのレディースウェアのデザインスタッフに加わります。そして、1994年にグッチのクリエイティブ・ディレクターに就任。やわらかな曲線と茶色を好む今までのグッチのイメージを一新して、全てを黒一色に変えたのでした。

    従来のクラシック路線からセクシー・エレガンス路線に転換し、世界的なグッチブームを起こします。それは、60年代のグッチ全盛期のラインナップ以外の無駄な商品ラインナップを削減(約2万点から約5千点まで)したことと、宣伝キャンペーンに力を入れ、トム・フォード自身の存在感と、スタイリストのカリン・ロイトフェルドとフォトグラファーのマリオ・テスティーノの素晴らしい写真のイメージが生み出した爆発的なブームであり、倒産寸前だったグッチは、約10年間で10倍の売り上げを叩き出すことになります。そして、世界中の老舗ブランドが、若手のデザイナーをクリエイティブ・ディレクターに起用する流れがここから生まれたのです。

    2000年に入り、トム・フォードは、グッチが買収したイヴ・サンローランのリヴ・ゴーシュのクリエイティヴ・ディレクターも兼任することになります(この時期YSLのフレグランス「オピウム」と「M7」をヒットさせる)。そして、2004年4月退任し、グッチ時代のCEOだったドメニコ・デ・ソーレ(1984年デ・ソーレはグッチ・アメリカの主導権を手にしました。この頃ダブルGのライセンスが、グッチ一族によってばら撒かれていました。デ・ソーレは、極東に工場を移す案を却下し、イタリアにある工房にこだわり、価格帯をエルメスよりはるかに安く、シャネルのすぐ下ぐらいに設定しなおす。さらに、当時、大量生産されていた緑と赤の帯に、二つのGのロゴをあしらったビニール張りのバッグを製造中止にした。ここからグッチ革命の狼煙は上げられたのでした)と共に2005年トム・フォードを設立します。それはメンズファッションからのスタートでした。

    2006年、トム・フォード初のフレグランスである「ブラック・オーキッド」を発売。そして、2007年、プライベート・ブレンド第一弾として、「パープル・パチョリ」を発売します。2008年以降は、『007慰めの報酬』から『007スペクター』までの3作品のジェームズ・ボンド・スーツのデザインを担当する。2011年SSよりレディース・スタート。同時にトム・フォード・ビューティもスタートし、エスティ・ローダーと提携し、香水という分野においても『トム・フォード帝国』を築き上げたのでした。


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