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ルイ・ヴィトン

【ルイ ヴィトン】レ・ゼクストレ コレクションの世界へようこそ

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON/ Florian Joy
この記事は約15分で読めます。

レ・ゼクストレ コレクション

【特別監修】カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様

 

Les Extraits Collection ルイ・ヴィトンジャック・キャヴァリエを専属調香師にしたのは、2012年1月のことでした。そして、2016年9月15日、約70年ぶりにルイ・ヴィトンの香水「レ パルファン ルイ ヴィトン」が発売されることになりました。

それから5年の月日が流れ、ルイ・ヴィトンとキャヴァリエが、5周年の節目にあたり、新たなる船出の始まりとして2021年10月7日に最高級コレクションである「レ・ゼクストレ コレクション」を発表したのでした。

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究極のルイ・ヴィトンの香り

©LOUIS VUITTON / Florian Joy

フランク・ゲーリー ©LOUIS VUITTON

私はずっとこのルールを破りたいと考えていました。ほとんど毎日です。なぜなら、現在の香水は完璧に希釈されており、香水とは、拡散性と輝きを備えるものと考えられているからです。

私たちの香水は通常15〜20%の濃度ですが、30%という高い濃度で調香することによって、もはや過去のものとなっているエクストレの魅力を再発見する旅に出たのでした。私は、古典的な香りのファミリーを再解釈し、新しいものを作りたかったのです。

新しい感情を生み出すために、エクストレの旅に出て、素材をより柔軟に解釈し、天然素材や合成香料の美しさを明らかにしたかったのです。

ジャック・キャヴァリエ

このコレクションの誕生のきっかけは、2014年10月にフランク・ゲーリー(1929-)のデザインにより、フォンダシオン・ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団美術館)がパリに開館したことでした。建築界の巨匠とルイ・ヴィトンの間で接点が生まれたこの時、ルイ・ヴィトンの専属調香師としてキャヴァリエは3年目の冬を迎えようとしていました。

まず最初に、キャヴァリエが、エクストレ・ドゥ・パルファンを創造するというアイデアを会社に伝え、「であるならば、そのための特別なボトルをデザインできる人がいる」という回答を得て、二人のコラボレーションが決定したのでした。それは2019年のことでした。それは90歳を迎え、なおも新しい創作に意欲を燃やす、〝生きる伝説〟が香りの巨匠の手を借りて生み出した史上初めての〝見えない建築物〟なのでした。

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『空を飛べる香水』=エクストレ・ドゥ・パルファンとは?

2019年にフランク・ゲーリーが設計したメゾン・ソウル ©LOUIS VUITTON

私はある日、フランクに世界で最も優れた調香師は誰かと尋ねました。すると彼は私だと答えてくれました。だから私はこう言いました。「いいえ、風なんです。風は花や森、土や葉の香りを運んでくれるんです」と。

するとフランクはこう言いました。「私が設計したパリのルイ・ヴィトン財団美術館のインスピレーションも、風であり、風が木や水や建物とどのように相互作用するかでした」そして、彼は笑いました。

ジャック・キャヴァリエ

香りがはじめて現代アートの領域に踏み込んだ〝究極のルイ・ヴィトンの香り〟とも言えるこの5種類の香りは、通常のルイ・ヴィトンの香水(100ml 38,500円)の2倍の77,000円の価格がつけられています(販売スタート当時)。

それは30%の賦香率(香料の濃度)というパルファンの濃度の越えたエクストレ・ドゥ・パルファンを、点付けでなく、スプレー仕様で生み出した画期的な香りでした(ちなみにパルファン ド コローニュは12%、通常ラインは15%)。

通常エクストレをスプレーで使用すると、香料濃度が高すぎ、周囲の人にも迷惑がかかり、しかも自分自身も香りに酔ってしまいます。であるにも関わらずエクストレをスプレー仕様にするために、キャヴァリエは30年間の調香師としてのキャリアを全て注ぎ込んだのでした。

肌との相性が良い天然香料を厳選し、肌の上で、新たなる生命の息遣いを生み出すように、濃度の高い香料を使用しながら〝蝶のように舞い、蜂のように刺す〟つまりは、「持続性があるにも関わらず、強くなく儚げな印象さえ覚えるくらいに軽やかで柔らかく、そして穏やかな香り」を考案したのでした。

見落とされがちなのですが、「30%の香水濃度のエクストレをスプレー仕様でつかえるようにした」ことは、ファッション業界において1966年にイヴ・サンローランがスモーキング・ジャケットを女性に着せた「スモーキング革命」に匹敵する歴史的快挙とも言えます。

ちなみに「スモーキング革命」とは、男性の服装を女性が着たことに意味があるのではなく、男性の服装を女性が着た方が美しいことに意味があったのでした。

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空に浮かぶガラスの帆船

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン © Fondation Louis Vuitton / Iwan Baan

© Fondation Louis Vuitton / Iwan Baan

レ・ゼクストレ コレクション」という〝究極のルイ・ヴィトンの香り〟を理解するために必ず知っておかなければならないこと。それはフランク・ゲーリーのデザインにより、2014年10月に開館したフォンダシオン・ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン財団美術館)という巨大建造物についてです。

ガラス3600枚を使用したというこの〝空に浮かぶガラスの帆船〟こそが、このコレクションのインスピレーションの最大の源なのです。そして、あなたはこの〝ガラスの帆船〟に飛び乗り、ルイ・ヴィトンが生み出す空想の旅へと出発するのです。

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五つの香りの旅の順番は決まっています。

©LOUIS VUITTON / Florian Joy

このコレクションの5つの香りで、私は今までの調香とはまったく違うことに挑戦しました。それは原材料の比率を変えることによって、新しいブレンド方法を発見しました。それはまさに、フランク・ゲーリーが建築でやっているようなこと、つまり動きを生み出すことです。

例えば、ベルガモットを使う場合、素材の別の側面を見せるために、フレッシュさだけでなく、そのフルーツそのものすべてを表現したかったのです。また、これらの香水が非常にシンプルな処方でつくられているのも興味深いところです。ひとつの素材が持つ多面性に着目し、あまり多くの原材料を使用しないようにしました。

ジャック・キャヴァリエ

このコレクションは、それまでの香水の調香における常識を飛び越え、「トップノート、ミドル(ハート)ノート、ラスト(ベース)ノートをなくすことで、各香調の真髄を浮かび上がらせた」(ジャック・キャヴァリエ談)香りなのです。

この香りのヴィジュアルが必ず浮遊しているのは、〝空に浮かぶガラスの帆船〟から見た幻想の香りだからなのです。そして、世界中のブティックにおいて並びが決まっているのも、この香りにはれっきとした物語が存在するからなのです。つまり〝空に浮かぶ空想の船〟の旅は、左から右に進行してゆくのです。

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フランク・ゲーリーによるボトル・デザイン

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy

キャップのくしゃくしゃの形は〝幸せ=ハピネス〟を表しています。それが私の好きなところであり、それぞれの香水の本質でもあります。

フランク・ゲーリー

ちなみにマーク・ニューソンがデザインしたオリジナル・ボトルは、フランク・ゲーリーにより帆船が波を受けて進んでいくイメージにより変形させた楕円形のシルエットとなっています。それは帆船の帆が風で揺れていたり、船から見たときの波の動きの一瞬を切り取ったようにも見えます。

そして、この香りのテーマは、〝自然の中の揺れや動き〟であり、そのテーマを反映したキャップは、アルミニウムを手作業で磨き上げ、風に吹かれて、枯れていた空想の花が目を覚ましたかのように、揺れる繊細さを見事に生み出しています。

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Dancing Blossom(ダンシング ブロッサム)

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/83,600円
香調:フローラル
香料:グラース産メイローズ(二酸化炭素抽出法)、中国産ジャスミンサンバック、インド産チューベローズ、中国産オスマンサス

〝空に浮かぶガラスの帆船〟が到達した最初の世界は、四季の花々がそれぞれ「ようこそ」とおじぎをして挨拶しているかのように、ジャスミン、メイローズ、オスマンサス、チューベローズの花びらが代わる代わる舞い落ちる〝空中庭園〟の世界です。

それはまるで『眠れる森の美女』の3人の妖精から贈り物が与えられる瞬間のようです。花の妖精が、肌の上に着地し、オルゴールがくるくるとまわり、ロンドのようにいつまでも挨拶してくれるのです。

ダンシング・ハウス ©Amazing Czechia

ちなみにこの香りの着想源は、1995年にフランク・ゲーリーがチェコ・プラハで生み出したダンシング・ハウス(踊る家)です。

左側のガラス張りのビルが、右側のコンクリートビルに抱きかかえられているようなシルエットからジンジャー&フレッドという別名を持つビルです。それは1930年代の有名なミュージカル・スターであるフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビ名から採られました。

ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステア

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Cosmic Cloud(コズミック クラウド)

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/83,600円
香調:スイート(グルマン)
香料:ブラックカラント、パチョリ、ベルガモット、ムスク、ベネズエラ産トンカビーン、ペルー産アンブレットシード

次に〝空に浮かぶガラスの帆船〟がその花々に手を取り導かれてたどり着いた世界。それはヘンゼルとグレーテルのお菓子の家のような〝食べることが出来るふわふわとした綿菓子の雲〟の世界です。

ブルガリ プール オム」以降、〝ムスクの魔術師〟と呼ばれるようになったキャヴァリエの本領が発揮された浮遊感たっぷりなムスクに、ベルガモットとブラックカラントがブレンドされ、甘い甘い美味しいものをたくさん与えてくれる、無償の愛さえ感じるチョコレートパウダーのようなトンカビーンが綿菓子の雲を作り上げてゆきます。

2005年にフランク・ゲーリーが発表したランプ「クラウド」がこの香りの着想源のひとつです。思わず食べたくなる存在感がこの香りとの共通点です。

©BELUX

©BELUX

©BELUX

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Rhapsody(ラプソディー)

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/83,600円
香調:シプレ
香料:イランイラン、マテ、ベチバー、オークモス、スズラン、グラース産ジャスミン(二酸化炭素抽出法)、パチョリ

〝食べることが出来るふわふわとした綿菓子の雲〟の上で、うたた寝をしていると、イランイランやグラース産ジャスミンの酔いしれる、人を誘うような甘美な香りと共に、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」がどこからともなく流れてきます。そんな〝魅惑の調べ〟に酔いしれる世界のはじまりです。

やがてマテ茶のスモーキーさが妖しさを増し、ベチバーやパチョリが夜を連れてきて、天空の森から聴こえてくる美しい虫のシプレの奏でに身も心も委ねてゆくのです。

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Symphony(シンフォニー)

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/83,600円
香調:フルーティ
香料:グレープフルーツ、ジンジャー、ベルガモット

朝が来て〝空に浮かぶガラスの帆船〟は、天空の海の波に飲み込まれてゆきます。そして、ガラスの帆船は、まるでガラスの圧搾マシーンのように、グレープフルーツ、ベルガモット、オレンジを強く絞り上げてゆくのです。

それはジューシーともゼスティーとも言えない実に幻想的なシトラスの大粒の涙のようです。心に染み込んでいくような五感を揺さぶるシトラスシャワーに身も心も圧倒されてゆきます。

やがて、その涙を、二酸化炭素で抽出されたレモンのように煌くジンジャーが掬い上げていきます。遂にスパイシーさの中に眠る甘さが目覚めるのです。その瞬間、天空の海原に太陽が照りつけるように、華々しいシトラスの歓喜が呼び覚まされるのです。

そして、千の火のごとく、天空の海原をパープルカラーに染めてゆくのです。

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Stellar Times(ステラー タイムズ)

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/83,600円
香調:オリエンタル
香料:ホワイトアンバー、オレンジブロッサム、ペルーバルサム

いよいよ、〝空に浮かぶガラスの帆船〟の最後の航海がはじまります。天空を突き抜け、宇宙空間に突入するのです。青色とオレンジ色の惑星の間を飛び越える中、アンバーグリスとアンバーの煌きに包まれた帆船は、どうやら着地点を見つけたようです。

流星のようなオレンジブロッサムを背景に、その着地点は不夜城のように黄金の輝きを放っています。着地点に近づくにつれ、ペルーバルサムのレザーの香りが存在を増します。どうやら、ここは天空のルイ・ヴィトン・ブティックのようです。無数の星のラッパがみんな鳴り響いて、3600個のガラスに乱反射してゆきます。

あらゆる香りの要素を詰め込んだ、天上のラグジュアリー・サーカスへようこそ。そして、〝空に浮かぶガラスの帆船〟は、あなたの心の中に着地し、幻想と現実をつないでゆくのです。

「ステラー タイムズ」の香りは、2008年にハイジュエリーの世界にルイ・ヴィトンがデビューしてから12年の歳月が経ち到達したルイ・ヴィトンの旅の最終章であるハイジュエリーコレクション「ステラー タイムズ」が着想源のひとつです。

2020年秋に発表されたこのコレクションのテーマもまた〝宇宙、輝く星座。そして、銀河の果てへの旅立ち〟でした。

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ルイ・ヴィトンの香りの楽しみ方

©LOUIS VUITTON/ Florian Joy

最後に「レ・ゼクストレ コレクション」の楽しみ方について、カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様にお聞きしました。

「最近ではどんなことでも、〝時短〟や〝効率的〟〝お手軽感覚〟が良しとされてます。しかし、香水とは本来〝ゆったりと優雅に楽しむもの〟であり、時には非現実的な物である、というのを「レ・ゼクストレ」では再確認させてくれます」

つまりは、香料を羅列する香りに対する楽しみ方とは対極に位置する=何の香料が使用されているかも忘れさせてくれる〝良い意味でストンと心に落ちる香水〟それが、この5種類の香りなのです。

「このコレクションは、ルイ・ヴィトンの贅沢な幻想空間の中で、それぞれのストーリーに身も心も委ねられるのが正しい楽しみ方だと思います。だからこそ、ルイ・ヴィトンのフレグランス・スペシャリストと会話しながら、あなただけの〝究極のルイ・ヴィトン〟を選ぶ瞬間から〝空に浮かぶガラスの帆船〟の旅ははじまると思っていただけると幸いです」。

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Myriad(ミリアド) – 新たなる〝究極の旅〟

©LOUIS VUITTON / Florian Joy


カイエデモード徹底分析ページ
価格:100ml/101,200円
香調:ウード
香料:グラース産メイローズ、ブルガリア産ローズエッセンス、ウード、カカオ、サフラナール

「ミリアド」は、真っ暗闇の道を突き進んでいく先にある栄光の輝きを素肌に伝えてくれる香りです。〝暗黒の旅の先にある、新たなる希望の香り〟は、パンデミックの中、宇宙に向かうファンタスティック・ヴォヤージュを描き上げた前五部作から一転し、パンデミックが明け、世界中を股にかけて旅に出る、暗黒への怖れと、その先にある喜びを感じさせてくれます。

それは真っ暗闇の中で気づかない幾千もの漆黒の輝きを全身で受け止め〝人生のボーナストラック〟を掴んでいくという〝人生謳歌の香り〟とも言えます。一番暗い人生の旅の先には、朝日が昇るような人生のハイライトが待っているんだよと、元気付けてくれる香りなのです。