ディオールオム シリーズ
Dior Homme クリスチャン・ディオール初のメンズ・ライン「ディオールオム」がエディ・スリマンによって、2001-2002秋冬のパリコレクションからスタートしました。
そして、革新的な細身のシルエットのスーツやスキニージーンズによって、痩せっぽちで、貧相な男子達がプリンスのように輝くシルエットを生み出したのでした。まさに筋骨隆々の男性たちに対する「反逆のファッション」として、瞬く間にファッション・シーンに大旋風を巻き起こしたのでした。そんなディオールオム旋風真っ只中の2005年にスタートしたのが、フレグランス・ラインでした。
エディ・スリマンが二度目にプロデュースした一般向け香水
(1995年から2004年にかけて)ディオールのパルファム部門のグローバル・マーケティング・ディレクター、サビーナ・ベッリは、1999年に「ジャドール」により見事アメリカ市場を再度席巻することに成功しました。その勢いの中、1997年に「デューン プールオム」が果たせなかった、メンズ・フレグランス市場へ再挑戦したのが、2001年に発売された「ハイヤー」でした。しかし、期待していた成功を収めることは出来ませんでした。
あまり知られていないのですが、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)よりクリスチャン・ディオール初のメンズ・ライン、ディオール・オムをスタートさせたエディ・スリマンがこの香りに深く関わっています。彼は元々1997年にイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのメンズラインのクリエイティブディレクターに抜擢されるも、2000年にイヴ・サンローランがグッチ・グループに買収され、ディオールに移籍することになりました。
ディオール・オムが社会現象と言えるほどに大旋風を巻き起こし、2003年夏に3年間の契約延長をし、メンズフレグランスのクリエイティブ・ディレクターも兼任することになりました。そして「ハイヤー」に引き続きエディ・スリマンが関わった香りが、ディオール・ラ・コ レクシオン・プリヴェの「ボア ダルジャン」、「オー ノワール」、「コロン ブランシュ」の3つのユニセックスの香りでした。
そして、この延長線上に生み出されたディオール・オム初のメンズ・フレグランスが「ディオール オム」でした。それはエディが調香界の若き貴公子・オリヴィエ・ポルジュとタッグを組み「21世紀に新たに付け加えられた男性にとってのエレガンスの最後のアイテムとしてのコロンの一提案」として創造されました(IFFにより製造された)。
アイリスを男性用フレグランスのために使用すべく、シャネルのNo.19からヒントを得た画期的な香りであり、アイリスの女性らしさとベチバーの男性らしさが巧みにブレンドされています。まさにメンズ・フレグランスにフローラル旋風を巻き起こすきっかけになりました。
それは、それまでメンズ・フレグランスにおけるフローラル(この香りまで10の香りしか存在しない)と言えば、ラベンダーとローズしかなかったフローラルにおける「第三の男」を生み出した瞬間でした。
ディオールがずっと伝えていかないといけない香り
このシリーズの香りは、リニューアルが頻繁に繰り返されているので、ディオールの販売員ですら正確にその遍歴を教えられていません。ラグジュアリー・ブランドにとって、これから意識改革していかないといけない部分は、まさにこの部分にあります。
同じ名前で、中身がリニューアルされた商品を販売することは、市場の原理として当然の選択です。それを正確に顧客様にお伝えすることがブランドの精神を守ることに繋がるのですが、そのためには、お客様に伝える必要のない部分も含めて、それぞれのシリーズのリニューアルの歴史を、販売員に徹底的に教えていかないといけないのです。
現在、ストーリーテリング及びストーリーシェアリングをお客様とする流れが奨励されています。しかし、そのためには、まずストーリーをお伝えする販売員自体が、トレーナー(今、名ばかりのトレーナーが業界に蔓延っています)からストーリーをシェアリングされていないと、幼稚なストーリーのお伝えの仕方(心のない、退屈な説明)で終わってしまうことになるのです。
そういった意味でも、数々のリニューアル及びフランカーを生み出してきた「ディオール オム」と「ミス ディオール」「ジャドール」「ディオール アディクト」を正しく販売員が教わることは、ディオールにとって急務のことなのではないでしょうか。
ちなみに現在販売されている三作品全ては、初代専属調香師だったフランソワ・ドゥマシーにより調香されたものです。
現在発売中の三作品
ディオール オム<2020年版>
ディオール オム コロン
ディオール オム スポーツ<2021年版>
過去に発売されていた五作品
ディオール オム<オリジナル版>
ディオール オム<2011年版>
ディオール オム スポーツ<2008年版>
ディオール オム スポーツ<2012年版>
ディオール オム スポーツ<2017年版>