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【ル ラボ】ガイアック10 東京(アニック・メナード)

アニック・メナード
©LE LABO
アニック・メナードブランドルラボ調香師香りの美学
この記事は約9分で読めます。

ガイアック10 東京

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Gaiac 10
種類:オード・パルファム
ブランド:ルラボ
調香師:アニック・メナード
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,650円、15ml/17,050円、50ml/40,700円、100ml/61,600円
公式ホームページ:ルラボ

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感想(2件)

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日本への〝真実の愛〟が生み出した「ガイアック10」

©LE LABO

ルラボには日本に対する強烈なシンパシーがあります。なぜなら私たちの作品はすべて〝侘び寂び〟という哲学に基づいて作られているからです。

ファブリース・ペノー

ルラボが出店している都市ごとの限定の香り「シティ エクスクルーシブ コレクション」の第四弾として、2008年に発売された東京限定の香りが「ガイアック10」です。この香りは、2007年にオープンした代官山の2号店(1号店はニューヨーク)を記念して作られました。

ルラボというフレグランス・ブランドの凄いところは、2号店をパリやロンドンではなく日本に出したところにあります。まだ日本が香水氷河期だった2007年にそれをやってのけたのでした。それほど二人の創業者にとって日本という国は、特別の国だったのです。

(聖なる木パロサントの一種である)ガイアックウッドをベースに4種類の合成ムスクとシダー、オリバナムをブレンドした「ガイアック10」は、「パチュリ 24」を作ったアニック・メナードにより調香されました。

それは約1,000回の試行を重ねた上で、選ばれた10種類の香料のみで生み出された俳句のような香りとも言えます。

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ひとつの誤解から生み出された〝日本の木の香り〟

〝最初の女帝〟推古天皇(554-628)

日本の海岸に流れ着き、煙を上げて魅惑的な香りを放ったという希少なガイアックウッド。その木をベースにした香りです。

ファブリース・ペノー

恐らくファブリース・ペノーは、『日本書紀』の「推古三年夏四月、沈水、漂着於淡路嶋、其大一圍。嶋人、不知沈水、以交薪焼於竈。其烟氣遠薫、則異以献之。」の一文の沈水=沈香を、ガイアックウッドであると誤解したのでしょう。

595年(推古天皇3年)に淡路島に漂着した沈香を、島民が、薪と共にかまどで焼くと、その煙は類まれなる薫りを放ちました。そして、朝廷に献上することになり日本に香木が伝来したという言い伝えです(現在では、この沈香は白檀だったという説が有力です)。

創業者の誤解から日本とは縁も所縁もないガイアックウッドで、東京の香りを作ることになったのでした。

そして、結果的にこの「ガイアック10」により、アルベルト・モリヤスが「バニラ44(ヴァニーユ44)」で光を当てた不遇の香料だったガイアックウッド(チープで粗い香りを生むため)は、ルラボを象徴する香料となったのでした。

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4種類の合成ムスクとは?


南米の熱帯に生息する3.5mほどに成長する木であるガイアックウッドの香りは、シダーほどドライでもなく、スモーキーでバニラとローズの中間のような柔らかなウッディの甘さが特徴です。

僅か10種類の香料で生み出されたこの香りは、日常生活の中で意識しない香り立ちからはじまります。つまりは、合成ムスクの冴えない燻製のような香りからはじまります。それは例えるなら、海岸に流れ着いた流木を直に嗅いでるかのような、ミネラルをふくんだアニマリックで生臭い香りです。

しかし、10分も経つと、非常にマイルドで、優しく、ほんのり漂う心地よい香りへと進化してゆくのです。この漂う煙(まるで『日本書紀』の一文である「煙の香りが遠くまで届いた」を再現するように)のような贅沢な香りが、4種類の合成ムスクにより表現されていくのです。

この香りは香道という儀式に着想を得ています。そして、とてもスピリチュアルな香りです。それは日本文化に対する私たちの認識と一致しています。シャイだから一歩引いているのではなく、自分よりも大きな声を出さない香水という考え方です。

ファブリース・ペノー

このファブリースの説明が、この香りに対するすべてを物語っています。つまりはタビの魅力を再認識させたメゾン・マルジェラのTabiシューズようなスタンスで、古来の日本の魅力を、現在に迎え入れた香りなのです。

スプレーされ解き放たれた「ガイアック10」は、無香料のようでありながら、4種類の合成ムスクによる「冴えないから、素敵に変わる神秘体験」からはじまります。ここでその4種類の合成香料について説明しておきましょう。

  1. ヘルベトリド(フィルメニッヒ) 数少ないトップノート・ムスク。揮発性の洋ナシのようなファセットと滑らかなアンブレットのアンダートーンが特徴。
  2. カシュメラン(IFF) スパイシー、フルーティー、シプレ、バルサミック、バニリックといった複雑なウッディ・ムスク。
  3. ハバノリド(フィルメニッヒ) 高級感が漂う、静謐さと官能性を秘めた温かいウッディ・ムスク。
  4. アンブレットリド(IFF) 持続力と他の香りにパワーを生み、ほのかにレッドベリーのようなフルーティーさも付け加える。
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肌の上に乗るのではなく、全身に降り注ぐような香り

ルラボの作品は、その不完全さによって定義されます。昨年は1,000種類以上の新しい香水が発売されました。そして、それらはすべて基本的には完璧な香りです。過剰に生産され、フォーカスグループでテストされ、徹底的に作りこまれています。

一方、私たちの香水は、不完全です。そして、それこそがその香水に魂が宿っていることを保証するものなのです。

ファブリース・ペノー

わびさびとは、不完全で非永続的で未完成なものの美しさを表す言葉です。それは控えめで質素なものの美しさ。型にはまらないものの美しさを表しているのです。

レナード・コーレン『Wabi-Sabi わびさびを読み解く』創業者の最愛の本として英語版がルラボのオンラインで販売されている。

4種類の合成ムスクにより演出される日本の〝侘び寂び〟の精神の中に、スモーキーかつ、木のしなやかな甘さを兼ね備えたガイアックウッドが掻き混ぜられて一体化してゆきます。

まるで一瞬にして静寂の空気に包み込まれてゆくような感覚に襲われます。そんな限りなく透明なウッドに対して、天馬が駆けるごとく甘くスモーキーなオリバナムがオーロラのように降り注ぎます。この〝静かなる葛藤〟こそが、「ガイアック10」が、心を打つ香りの理由なのです。

ここにイソEスーパーが魔法の粉のように振り掛けられ、ガイアックウッドのスパイシーな側面と後にシダーに深みと静謐さを与えてゆきます。そして、アンブロックスも加わり、終わりのない儚さを生み出してゆくのです。

良質なガイアックウッドであればあるほどスモーキーさが突出せず、甘さとの見事なバランスを生み出すものです。そして、この香りのガイアックウッドこそが、まさにその最高レベルの品質のものなのです。

どうやら清流に流れる水のように、シダーの軽やかな涼しさが、オリバナムに空中浮遊するようなステルス・フレグランスの役割を与えているようです。

つまりは、香料の割合が30%という高濃度でありながら、「ガイアック10」は肌の上に乗る香りではなく、全身に降り注ぐような香りだということです。それは〝魂を持つ香り〟なのです。そして、大量に使用したムスク効果により、驚異的な肌なじみの良さを見せてくれるのです。

「ガイアック10」が人々の心を惹きつけて止まない点。それは何回も無限に〝体験〟したくなる香りだからです。その肌なじみの良さに楽しささえも覚えてしまう香りなのです。つまりは、その人の香りになりやすい香りなのです。

そういう意味においては、この香りを調香したアニック・メナードは、一般的な日本人よりも、デーブ・スペクター並みに、〝日本と日本文化と日本人の本質を知る外国人〟なのかもしれません。

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JMLのウッド セージ & シーソルト コロンとの比較

©Jo Malone London

「ガイアック10」のムスクと流木の香りは、ジョーマローンの「ウッド セージ & シーソルト コロン」を連想させます。そこでこの二つの香りを比較してみましょう。

まず「ウッド セージ & シーソルト コロン」は、まだ寒さが残る3月のイギリスの残冬の海岸をイメージしており、その海岸に佇む流木と海そのものの情景の香りを表現するためにアンブレットシード(植物性ムスク)を効果的に使用しています。

一方、「ガイアック10」は流木そのものにフォーカスした香りであり、冬の海岸を連想させるわけではありません。

ちなみにルラボ賢者曰く、「ガイアック10」の〝10〟は10回プッシュすると極上の香水体験が出来るというシークレット・メッセージが秘められているとのことです。つまり、「ガイアック10」とは贅沢に惜しみなく愛を注ぐことが出来る香水なのです。

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日本のフレグランスの鎖国に対する黒船

いつもそこに必要なのは外国の影響です。外部からの刺激です。それがなかったら、お能も、能面も、南洋やチベットの仮面劇と同じように、永久に呪術から脱しきれず、ただの民芸として終わったことでしょう。それが長い冬篭りの夢からめざめて、見事な花と咲いたのが室町時代でした。そのときはじめて、日本の仮面は、模倣をはなれて、自らの表現をかちえたのです。

白洲正子

この香りは、明らかに、アニック・メナードが日本の香道に対して投げかけたメッセージとも言えます。〝そろそろこの誇るべき香りの文化を拘束している固定観念の鎖を断ち切り、日本に新たなる香りの文化を創造していくべきではないか?という問いかけなのです。

香りの中に、日本人特有の感性である〝侘び寂び〟を詰め込んでみたら、欧米人には生み出せない新しい香りが生み出せるのではないだろうかと欧米人のアニック・メナードが、やってのけた香りなのです。

2008年、ファッション・メディアもフレグランス業界も知らない間に、日本のフレグランスの鎖国に対する黒船がやって来ていたのでした。それが「ガイアック10」なのです。

最後に、日本にルラボが上陸して間もなく、ブランドとして人気が出る前に、このような日本限定の香りを作った所に、創業者二人の狂気にも近い日本愛を感じることが出来ます。本来、限定と名の付くものは、ブランドとして圧倒的な知名度が生み出されてから作られて然るべきものなのですから。

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香水データ

香水名:ガイアック10 東京
原名:Gaiac 10
種類:オード・パルファム
ブランド:ルラボ
調香師:アニック・メナード
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/1,650円、15ml/17,050円、50ml/40,700円、100ml/61,600円
公式ホームページ:ルラボ


シングルノート:ムスク、ガイアックウッド、シダー、オリバナム

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感想(4件)

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