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【ディオール】ジャドール シリーズの全て

クリスチャン・ディオール
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クリスチャン・ディオール
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ジャドール シリーズ

J’Adore クリスチャン・ディオールというブランドにとって最も重要なフレグランス・シリーズが二つあります。ひとつは「ミス ディオール」そして、もうひとつは「ジャドール」です。

「ジャドール」とは、フランス語で、〝大好き〟という意味です。そしてこの〝J’Adore〟には〝or(ゴールド)〟と〝Dior〟の文字が入っていて、もし「黄金」に香りがあるならばどんな香りなのだろう?という妄想をボトルに閉じ込めた香りでもあります。

それは言葉の領域を超えた、心から解き放たれる〝大好き!〟なのです。

さらに言うと、世紀末、1999年7月に恐怖の大王の変わりに、世界を愛で満たすために舞い降りた「愛と宿命の香り」とも言えます。そしてこの香りが、当時衰退の道を歩みはじめていたディオールにとって、世紀末救世主伝説と呼ばれるほどの大ヒットを生み出し、今に至る、ディオール帝国の復活の狼煙となったのでした。

ジャドールは、香水の歴史を通じて非常に人気のある〝香りのフラワーブーケ〟ですが、これはフローラルに対する全く新しい解釈でした。ジャドール以前は、80年代や90年代のスタイルのように、フローラルノートはとてもダーティでアニマリックでした。

しかしジャドールが、とてもクリーンで、ブライトで、ルミナスなものを持ってきたのでした。それは実に繊細な小さなタッチがたくさん加えられたフローラルブーケです。花の印象はありますが、バラよりジャスミンが多いのか、ヴァイオレットよりハニーサックルが多いのか、チューベローズよりスズランが多いのかはわかりません。とてもよくブレンドされているので、フローラルだとしか言えません。花を愛する人それぞれのジャドールとの関係を築いていける、新しい香りの概念を生み出したのでした。

フランシス・クルジャン

1999年広告。初代ミューズ:カルメン・カース。撮影:ジャン・バプティスト・モンディーノ。©DIORBEAUTY

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ジャドールの黄金伝説=「香水に興味のない人に香水を売る方法」

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クリスチャン・ディオール(1905-1957)は、ファッションブランドにおけるフレグランスの重要性にいち早く気づいたファッション・デザイナーの一人でした。そんな彼が最初に生み出したフレグランスが、1947年の「ミス ディオール」でした。そして、52年の時が流れ、20世紀末、香水産業は斜陽の兆候を見せ始めていました。

フランスの市場は、香水に興味を失い始め、アメリカの市場は、これ以上成長の見込みがなく、ドイツ・日本の市場は縮小傾向にありました。であるにもかかわらず、香水のためのPR予算は跳ね上がる一方でした。

ひとつの新しい香水の為に数千万ドル経費がかかる状況の中、どのブランドの香水部門も新作に対して、満足の行く売上を上げることができないでいました。

そんな中、シャネルN°5は、どれだけ新しい香水が販売されようともフランスにおいて年間売上No.1の地位に君臨していました。つまり、人々は香りに対して新しいものよりも、定番の香りを求めていました。そのような時代に「ジャドール」は産声をあげたのでした。

もし、ゴールドを香りにしたら、どんな香りになるのだろうか?

トッズの靴のようにとても快適な履き心地でありながら、セクシーなスティレットヒール

そんな香りを作ってほしいという要望が、パルファン・クリスチャン・ディオールから、女性調香師カリス・ベッカーに出されたのでした。

「ジャドール」とは、フランス語で、「大好き」という意味です。そんな大げさな名を冠した官能的なフローラルブーケのフレグランスが、ただその香りが魅力的なだけでなく、香り以外の要素にも重点を置くことによって、12年後に、フランスで最も売れるウィメンズ・フレグランスの地位を獲得することになるのでした。

何よりも重要なのはボトル・デザインである!と考えたパルファン・クリスチャン・ディオールの商品開発部門は、フレグランスに興味がない人でも一度見たら記憶に残るエレガントなボトルシルエットを作り上げようと考えたのでした。

こうして生まれたのが、宝飾デザイナーのエルヴェ・ファン・デル・シュトレーテンによる、古代ギリシアのアンフォラ(陶器の器)のようなボトルデザインです。

それは、1947年にクリスチャン・ディオールによって生み出されたニュールックのドレスのラインと、マサイ族のネックレス(当時のディオールのデザイナーであるジョン・ガリアーノのアイデア)を融合させたデザインでした。

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世界一の香水の座に、駆け上ったジャドール

1999年広告。初代モデル:カルメン・カース。撮影:ジャン・バプティスト・モンディーノ。©DIORBEAUTY

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「ジャドール」は、1999年に発売され、ディオールの主力フレグランス・シリーズになりました。しかし、決してシャネルNo.5以上の売り上げを上げることは叶いませんでした。

そんな状況に痺れを切らしたパルファン・クリスチャン・ディオールは、2010年代はじめより、あるフレグランスが爆発的な売り上げを上げるためには、フレグランスが嫌いな人にフレグランスを売るしかないと意を決したのでした。

そして、この時期を境に、ディオールの香水は、顧客に混乱を与えていくようになりました。2011年末、昔のハリウッド女優たち(グレース・ケリーやマリリン・モンロー)とシャーリーズ・セロンを競演させた「ジャドール」の新キャンペーン・フィルムとそれに付随する大掛かりなイメージ戦略により、ついにシャネルNo.5を追い抜き、フランスで最も売れているウィメンズ・フレグランスの地位を獲得するに至りました。

2024年現在、女優や著名人を積極的に起用し、ネーミングを頻繁に変え、顧客を混乱させてしまう「ディオール・マジック=攪乱戦略」は、依然効果を生み出しています。しかし、一方で、ブランドとしての信頼性が問われはじめています。

果たして、フレグランスの品質とは全く関係のない部分にあれだけのお金を投入しているブランドの製品自体の品質は如何なものなのだろうか?という疑念を人々は抱き始めているのです。

「ジャドール」シリーズとは、そんな、ディオールのフレグランスの光と影を象徴する「宿命の香り」=「パルファン・ファタール」。このボトルデザインとシャーリーズ・セロンさえ居れば、売れ続けるであろう「奇跡の黄金水」、それが「ジャドール」シリーズなのです。

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現在販売中のジャドール6作品


ジャドール ロー 2023版
2023年に発売されたフランシス・クルジャンの手による「ジャドール」。ジャスミン、オレンジ・ブロッサム、ローズのアブソリュートの三重奏が織り成す〝黄金のジャドール〟。

ジャドール パルファン ドー
2022年に発売されたフランソワ・ドゥマシーの白鳥の歌。日本の研究所から取得したナノエマルジョン技術を駆使して、アルコールフリーで生み出された〝ジャドールの超神水〟。ヘアミストとしても使用可能。

ジャドール インフィニッシム(クリスチャン・ディオール)
2020年に発売されたアンフルラージュで抽出したグラース産チューベローズを使用した〝無限大ジャドール〟。ひとまとめになっていた花束が、解き放たれ、自由を謳歌していく感覚を、素肌と心で感じ取る香り。

ジャドール オー ルミエール
2016年に発売された別名「ジャドール オードトワレ」。2002年に発売され、今作が三代目。シャンパンにもっとも近いジャドール。日本でもっとも好まれているジャドールです。

ジャドール エクストレ ドゥ パルファン
2014年に発売されたジャドール唯一のパルファム。お気に入りのバージョンの「ジャドール」と一緒に点づけして使用すると絶大なる効果を発揮する、〝ジャドールをさらに豊かにするジャドールの黄金の蜜〟。

ジャドール
1999年に発売された歴史的傑作。最初に頬を叩き、後から甘い言葉を囁くような煌きを持つ稀有な香りだった。2010年に再調香され、その効力は弱まるも、ピーチとローズをメインにした濃厚なフルーティ・フローラルシャワーは健在ではある。

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販売が終了したジャドール6作品


ジャドール アブソリュ

ジャドール アブソリュ<2018年版>

ジャドール イン ジョイ

ジャドール ヴォワル ドゥ パルファン

ジャドール トゥッシュ ドゥ パルファン

ジャドール ロー