究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
トム・フォード

【トム フォード】ウード ウッド(リシャール・エルパン)

トム・フォード
©TOM FORD
この記事は約6分で読めます。

ウード ウッド

原名:Oud Wood
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:リシャール・エルパン
発表年:2007年(日本発売 2012年)
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/14,300円、30ml/28,050円、50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード

スポンサーリンク

トム・フォードによる『逆襲のウード』

©TOM FORD

ローズウッド、サンダルウッド、そしてウードの頭脳的なコンビネーションにスパイシーな香りを加えた「ウードウッド」は、これまでで最も完璧なフレグランスのひとつかもしれない。トム・フォードとキャリン・コーリーのクリエイティブ・ディレクションのもと、フィルメニッヒのリシャール・エルパンが創作したもので、カルダモンとバニラも入っている。

チャンドラー・バール(ニューヨーク・タイムズ、2021年)

2007年にトム・フォードプライベート ブレンド コレクションの第一弾として発表された12種類のフレグランスの中の一本です。

トム・フォードという人間がポリシーにしている精神があります。それは「新しいことを恐れず、失敗を恐れず、必ずその失敗を忘れない」という精神です。トムが、このコレクションのプロジェクトを実行したのはこの香りのためにあったと言っても過言ではありません。

それは5年前の2002年に遡る出来事からはじまります。トムは当時イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターでした。そして、アルベルト・モリヤスジャック・キャヴァリエという最高のふたりを召喚し、当時まだまだ未知の領域だったウード(=沈香)の香り「M7」を創り上げたのでした。しかし、結果は、見事なまでのセールス的な惨敗でした。

かくしてトム・フォードは雪辱を果たすことを目的にこの香りを生み出したのでした。そして、この香りにより空前のウード・ブームが世界中で巻き起こったのでした。

ちなみにトムがこの香りを調香したリシャール・エルパンにひとつだけ指示を出しています。「ウードに馴染みのない人にとっても受け止めやすいウードの香りを創ってください」ということでした。そのためこの香りは、通常のウード・フレグランスよりも、親しみやすく、優しいムードが漂っているのです。

それはリシャールが出した恐ろしい結論が生み出した「ウード革命」でした。リシャールはウードの香りではないウードのような香りを作り出し、一般の人々にウードを受け入れる心の準備をさせたのでした。

スポンサーリンク

ウードの香りではないウードのような香り

©TOM FORD

高級仏壇などに使われる上質なローズウッドとカルダモンを、華北山椒による強烈なスパイシーが包み込むような、シャープで新鮮な香りからこの香りははじまります。そして、カルダモンがずっと残るこの香りにおいて、ミドルからウードとベチバーがブレンドされたスモーキーな香りが広がります(ナッツのようなカルダモンとウードのブレンドが絶妙)。

スモーキーさが和らぐと共にはじまるラストノートは、クリーミーなサンダルウッドを中心に、トンカビーンとアンバーとバニラに、ウードとカルダモンがブレンドされ、温かいスパイスとクリーミーに包まれた官能的なドライダウンを迎えます。

2013年に「ウード・コレクション」が発売され、ボトルのラベルがゴールドからシルバーに変わり、香り自体も再調香されました(オリジナルの方がよりスパイシーかつより男性的で、根強い人気があります)。共に発売された新作は「タバコウード」と「ウードフルール」でした。

1994年に創業したジョー・マローン・ロンドン(トム・フォード・ビューティと同じくエスティローダー・グループ)の「フレグランス・コンバイニング」を、ファッションのレイヤードの概念で再定義したのが、トム・フォードの香りのレイヤードの定義です。

その本質にあるのは、ファッションの虚構性と、その虚構が実は虚構ではないというパラドックスの面白さです。「どんな服を着ていても、香りを纏っていても、ようは中身なんです」と力説する人に、問います。寺社の僧侶の服装とあの香りが、ユニクロと体臭(もしくは生乾きの服の匂い)にとって変わったならば、あなたはどう感じますか?そして、その人自身もそのような香りに包まれていて、どのような境地に達することが出来るのでしょうか?

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ウード ウッド」について、「どのような香りか?説明しがたいが、いい香りのアガーウッドには、ハニーのような甘さとウッディな新鮮さという、一風変わったコンビネーションが含まれており、どこかユニークである。少なくとも私の鼻はそういっている。私にはウード・ウッドは天然の沈香のような香りがするし、また、矛盾した既成のフレグランスという特徴を完璧にとらえていると思う。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

2024年に発売された「ウード ウッド パルファム」

©TOM FORD

©TOM FORD


価格:50ml/59,400円
公式ホームページ:トム・フォード

2024年3月1日に全世界で同時発売された「ウード ウッド パルファム」は、日本では「ウード ミネラル」と共に発売されました。50mL/59,400円する「プライベート ブレンド」の中でも最上級の価格帯となります。

現在発売されている「ウード ウッド」は、2013年に再調香されたものであり、2007年に発売されたオリジナルからは、薄められ、持続性のない香りだという評判に終止符を生み出すべく誕生した、実質的な2007年版の復刻版と言えます。

この香りの真骨頂であるウードウッドが、ピンクペッパーとカルダモンのスパイシーさに包み込まれ、スモーキーさや苦々しさをはじめとする様々な側面が、パチョリと混じり合い、豊潤さを増しながら、素肌の上で伸び伸びと引き伸ばされていくところにあります。

シャンパンが弾けるようなフレッシュな感覚と、しずやかに広がるウードの感覚の絶妙なアンバランスなバランスが、身も心もよろめかせてゆくのです。やがて、クリーミーなサンダルウッドとトンカビーン・アブソリュート、バニラが、うっとりするような独特なウードの余韻で満たしてくれるのです。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ウード ウッド
原名:Oud Wood
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:リシャール・エルパン
発表年:2007年(日本発売 2012年)
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/14,300円、30ml/28,050円、50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード


トップノート:ブラジリアン・ローズウッド、カルダモン、華北山椒
ミドルノート:アガーウッド、ベティバー
ラストノート:トンカビーン、バニラ、アンバー、サンダルウッド