『ゴールドフィンガー』からスパイブームは本格化した
『007/ゴールドフィンガー』は、英国で1964年9月17日に公開されました。そして、12月21日の全米公開を皮切りに世界各地で公開され、空前のスパイブームを巻き起こしました。それは、映画の世界を飛び越え、もはや社会現象になるほどでした。
日本では、1965年4月24日に公開され、同年の興行成績No.1を記録し、国内においても、秘密諜報部員=スパイという言葉が市民権を獲得することになりました。結果的に300万ドルの予算で、1億2500万ドルもの興行収入を獲得し、1964年に世界で最も高い興行収入を上げる作品となりました。
ジェームズ・ボンドのクールなスーツスタイルは世界中の男女の羨望の的となり、東レが「007ルック」、テイジンが「ボンド・シリーズ」と題した紳士服を販売しました。
この作品を機に世界中の男たちが、007(当時はダブルオーセブンとではなくゼロゼロセブンと呼ぶ)に憧れたのでした。そして、日本における007熱は、第五作目の『007は二度死ぬ』(1967)において沸点に達するのでした。
そして、ジェームズ・ボンドは男性のアイコンになった。
本作の中でジェームズ・ボンドは5種類のスーツスタイルを披露してくれます(2種類のタキシードは除く)。その中で、本作を代表するスーツは、間違いなくこのグレーの3ピースでしょう(それまでのボンドムービーの中で、ボンドは3着のグレンチェックのスーツを着ていました)。
ゴールドフィンガーのケンタッキー州の牧場に監禁されている時に、到底、死の淵に立たされているとは思えないほどの優雅さで、着こなすこのスーツは、まるで女優にとってのイブニングドレスのような役割を果たしていました。
ここに、ボンドムービーがなぜ永遠のメンズアイコンになり得たかと言う秘密が隠されています。それは、スーツスタイルであるべきではないシーンにおいて優雅にスーツを着こなしているところにあるのです。つまり絶対にあり得ないシチュエーションを作り、スーツの魅力を限界まで引き出していくところにボンドムービーの真骨頂があるのです。
それは絶対にジャケットを着用し、ボタンを締め、ネクタイを絶対に緩めず、絶えず真っ直ぐにする英国紳士の嗜みを究極に体現させる徹底ぶりにより生み出された〝ダンディズムの極致〟なのでした。
ジェームズ・ボンド・スタイル9
アイコニック・スーツ
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- グレーのグレンチェック3ピーススーツ、ナローノッチラペル、2つボタン、チェンジポケット、ダブルベンツ、同色のベスト、6つボタン、こちらにもノッチラペル、サイドアジャスターのトラウザー
- 白のリネンのポケットチーフ
- フランク・フォスター、白ボタンダウン・ドレスシャツ
- スリムなダークネイビー・シルクニットタイ
- ラウンドゴールドカフリンクス
- ブラックレザー・2アイレット・ダービーシューズ
ジェームズ・ボンド・スタイル10
バトルスーツ
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- 黒と茶のシャドーストライプ・スーツ、2つボタン、ノーベント、サイドアジャスターのトラウザー
- 白のリネンのポケットチーフ
- フランク・フォスター、白のドレスシャツ
- ブラックシルク・ニットタイ
- ブローグブーツ
スーツは大人の男のバロメーター
ボンドムービーが教えてくれる事。それはスーツスタイルのゴールデンルールです。何よりも、スーツにレザーシューズはマストであり、ネクタイもマスト、そして、何よりも半袖のシャツは、あり得ないということを教えてくれます。
ファッションとは何か?それはルールを破ることと同じくらいに、ルールを尊重する心から生まれるものなのです。
どうやらファスト・ファッション文化とは、ルールを破ることでも、ルールを守ることでもない、無味乾燥なファッションを放棄したインスタント文化であり、子供服を大人が着ているようなものなのです。
ジェームズ・ボンド・スタイル11
チャコールグレー3ピース・スタイル
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- 黒チャコールグレー・ウール・フランネル3ピーススーツ、2つボタン、ノーベント、サイドアジャスターのトラウザー
- 白いリネンのポケットチーフ
- フランク・フォスター、白にグレーストライプシャツ
- ブラックニットシルクタイ
- グリュエンのプレシジョン510
作品データ
作品名:007/ゴールドフィンガー Goldfinger (1964)
監督:ガイ・ハミルトン
衣装:エルサ・フェネル
出演者:ショーン・コネリー/オナー・ブラックマン/ゲルト・フレーベ/シャーリー・イートン/タニア・マレット
- 【007/ゴールドフィンガー】空飛ぶギロチンハットと黄金美女
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.1|ショーン・コネリーとロレックスとワルサーPKK
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.2|ショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.3|ショーン・コネリーとハロルド坂田
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.4|ショーン・コネリーとアンソニー・シンクレア
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- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.7|オナー・ブラックマンのパンツ・ルック
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