作品名:007 オクトパシー Octopussy(1983)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ロジャー・ムーア/モード・アダムス/クリスティナ・ウェイボーン/ルイ・ジュールダン/スティーヴン・バーコフ
ジェームズ・ボンド版『インディ・ジョーンズ』
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ロジャー・ムーアはサファリ・ルックが大好きでした。
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しかし、当時のボンドファンからも全く支持されませんでした。
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グレージュ色のスリッポンのアンサンブルが最低です。
ジェームズ・ボンド・スタイル6 サファリルック
- フランク・フォスターによるウールのサファリ・スーツ、エポレット
- ダグラス・ヘイワードによるトラウザー
- グレージュのスリッポン
- セイコー・デジボーグG757
そして、ムーア=ボンドを象徴するファッションがここに登場します。サファリルックです。当時から賛否両論だったこのスタイルは、今見るとかなり厳しいものがあります。しかし、ロジャー・ムーア本人は、このスタイルがとてもお気に入りでした。そんなサファリ・スーツの魅力が120%発揮されるであろうシチュエーションがここに用意されています。
インドの大富豪のジャングル・ガーデンでのリアル・サファリ・ツアーへのご招待です。
私はこの作品の撮影を心底楽しみました。出演者も撮影クルーも文句なしでした。それはまさに私のボンド退任に相応しい舞台でした。撮影中、私はずっと「これで最後なんだ」と考えながら撮影にのぞんでいました。
ロジャー・ムーア
まさに、そんな心境の中で生み出されたこのリアル鬼ごっこは、インディ・ジョーンズをスケール・ダウンしたような冴えないものになりました。しかも最後には、観光ツアーの御一行に助けてもらうというボンドムービー史上最弱の展開へと突き進んでいくのでした。
汚染度MAXのインドの河で、ずぶ濡れになるサファリスーツ姿のボンドは、ダンディズムとは程遠い男の姿を体現していました。
カマル・カーンのサファリ・ルック
どうやらルイ・ジュールダン(1921-2015)扮するカマル・カーンのオリーブ色のサファリスーツの方が、ボンドのサファリスーツよりも遥かにダンディズムに満ち溢れていました。
スーツを脱ぐと途端におじいちゃん化するロジャー・ムーア
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撮影当時37歳のモード・アダムスと55歳のロジャー・ムーア。
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このベストがまたおじいちゃん度を増す。
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モード・アダムスの熟した雰囲気をもてあましているJB。
ジェームズ・ボンド・スタイル7 ハンタールック
- スエードのハンティングベスト、スラッシュポケット付き
- フランク・フォスターによるブラウンのコットン製のエンドオンエンドシャツ
- ダークブラウントラウザー
- ダークブラウン・レザーベルト
- ダークブラウンのレザースリッポン
- セイコー・デジボーグG757
スーツスタイルでないロジャー・ムーアのスタイルは急激に老け込んで見えます。前作に引き続き、ベストというものは、男性を老化させるアイテムの好例と言えるでしょう。
空飛ぶギロチンを持つ男
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ルイ・ジュールダンは、かつて『007 ムーンレイカー』のドレクスラー役をオファーされたことがありました。
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マオカラースーツを着る二人の悪役とギロチン。
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スティーヴン・バーコフ。この男の活躍がもっと見たかった!
三人の敵役が登場するのですが、三人とも実にあっさりと死んでしまいます。特にスティーヴン・バーコフ(1937-)が演じたオルロフ将軍が面白い役柄だっただけに残念です。まさにリアル・サウザーかリアル・ギレンそのもののルックスなのです。
そして、もうひとつ忘れてはならないのは、空飛ぶギロチンの登場です。もしかして、これは『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』(1975)からインスパイアされた武器でしょうか?しかし、この武器がほとんど魅力的に描かれていません。この武器こそ、メインクラスの悪役に持たすべきだったのでしょう。