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【フレデリック マル】ムスク ラバジュール(モーリス・ルーセル)

フレデリック・マル
フレデリック・マルブランドモーリス・ルーセル調香師香りの美学
この記事は約9分で読めます。

ムスク ラバジュール

原名:Musc Ravageur
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:モーリス・ルーセル
発表年:2000年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/6,820円、30ml/18,150円、50ml/23,650円、100ml/34,100円
公式ホームページ:高島屋オンラインストア

フレデリック マル ムスク ラバジュール 30ml FREDERIC MALLE MUSC RAVAGEUR [4596]

価格:18,326円
(2021/5/27 14:54時点)
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フレデリック・マルで最も売れている香り

この香りは、ボトルの中のセックスだ。私がこの香りをはじめて嗅いだときに受けた印象は〝ハイパー・セクシュアル・ウーマン〟でした。

フレデリック・マル

フレデリック・マルという21世紀のフレグランスのあり方を変えた歴史的フレグランス・ブランドの奥に潜むスフィンクスに語りかける前に、まずは通過しておくことをお勧めする香りが、この「ムスク ラバジュール」です。

この香りには、フレデリック・マルというブランドの持つ3つの本質があります。

  1. 主役は調香師。完全に自由な環境で、一切のマーケティング・テストを行わず、香料に一切の制限を設けず、惜しみなく時間を費やし、ひとつの香りを作っていく。
  2. 新しいものを崇拝するのではなく、古きものから、普遍的なものを見つけ出し、現代に向け転生させる。
  3. フレデリック・マルの香りを調香するということは、どの調香師も掛け値なしの能力が発揮できる場である一方で、真の実力が試される場でもあります。

この香りには、異端的な精神があり、調香師が本当に作りたいモノを作る情熱があり、妥協できないという程良い緊張感があります。

ところで、この香りのプロモーション・フィルムが実に面白いです。洗練された内容かどうかはともかくとして、フレデリック・マルがこの香りに対して持つイメージが、『007/ロシアより愛をこめて』の世界観であることがよく理解出来ます。

21世紀のホワイトムスクに対する反逆精神

私のすべての香りは、欲望を呼び覚ます賛美歌です。そして、私がそれまで調香した香りの中で、この香りこそが、女性の官能性を最も呼び覚ます香りだと考えています。

モーリス・ルーセル

「ムスク ラバジュール(身を焦がすムスク)」のラバジュールとは、フランス語で「破滅、破壊、有害生物」を意味します。それはより分かりやすく訳すならば「あなたの純潔を脅かすムスク」という意味になります。もはやこのネーミングだけで、ほぼ70%の勝利を収めたも同然です。

そこに、ミーハー層も取り込んでいくオバマ大統領、ジョージ・クルーニー、ピアース・ブロスナン、そして、BIGBANGのG-DRAGONも愛用していたというキーワードを織り交ぜたなら、間違いなく「破滅的に売れるムスク」は誕生する訳なのです。

グッチの「エンヴィ」という、負の要素しかない素材の組み合わせから、一発逆転の香りへと昇華させた天才調香師モーリス・ルーセルによって、2000年に生み出されたこの香りは、フローラルの要素を一切排したアンバーオリエンタルの金字塔です。

そして、この香りこそが21世紀のシャリマーなのです(よりアニマリックなシャリマー)。

つまりは、21世紀のムスク(麝香)という概念が、クリーンなホワイトムスクにとって変わられたことに対する反逆の心がこの香りを生み出したとも言えます。それはホワイトムスクの〝洗い立て〟というイメージを破壊すべく、昔ながらのオリエンタル(アニマリック)なムスクの側面を爆発すべく生み出された香りなのです。

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ムスクラバジュールへの道

この香りを発売した当時、香りのトレンドは全く逆の方向にありました。誰もが、ディオールの「ジャドール」のような香りを求めていました。しかし、発売されると同時に、この香りは、フレデリック・マルで最初のベストセラーになったのでした。

フレデリック・マル

2000年にここまで完全なオリエンタルノートを生み出すということは明らかに時代の流れに反することでした。そんなこの香りの誕生は、(フレデリック・マルがブランドを創設する9ヶ月前の)1999年の某日に、パリでマルがピエール・ブルドンに、誰か自分のブランドに相応しい調香師がいないかと尋ねたことからはじまりました。

そして、「一人、びっくりするほど気性が荒いが、才能豊かな調香師がいます。彼はあなたに最高傑作か破滅的な作品かどちらかを与えてくれることでしょう」というブルドンの返答と共に、モーリス・ルーセルが紹介されたのでした。

元々クエスト社で同僚として働いていたピエール・ブルドン(91年~93年)とモーリス・ルーセル(84年~96年)は、そこで交友を深めていました。かつてセルジュ・ルタンスの「フェミニテデュボワ」制作の際には、モーリスとクリストファー・シェルドレイクが、ルタンスにモロッコに呼ばれ、試作品を持ち込みました。

そして、結果的に、シェルドレイクの試作品(ピエール・ブルドンが共作した)が選ばれたのですが、モーリスの試作品が後に「アイリス シルバー ミスト」として世に出るのでした。

さて、ニューヨークでマルの訪問を受けたモーリスは、ブランドの立ち上げについて説明を受け、商品化されていない自信作がないか尋ねられました。そして、数週間後に、モーリスはいくつかの香りを持参するのではなく、ただ「ムスク ラバジュール」のプロトタイプ一つだけを持参して、パリのマルを訪れたのでした。

元々は、ジャン=ポール・ゴルチエの「フラジャイル」のために調香したものなのですが、ゴルチエのようなリスクを恐れずに冒険するブランドでさえも恐れるほど、大胆でセクシーな香りだったため、フランシス・クルジャンに最終選考で敗れた香りでした。

この作品こそが、「自分自身の最高傑作だ」と考えていたモーリスは、どこかで発売してもらうことを切望し、色々なブランドでプレゼンしていました。

マルのこのプロトタイプに対する第一印象は、コティの「エメロード」を思わせるクラシカルな香りでありながら、まるでいきなり美しい女性が裸で自宅の玄関口に立っているような感覚を覚えたのでした。

そして、マルは自身のアシスタントのミレーヌに、この香りのプロトタイプを身に纏い、退社してもらい実験したのでした。ミレーヌがパリのメトロに乗ったとき、今だかつてないほど、男性の視線を感じ「自分の裸を見られているような」違和感を感じたと伝えました。

かくして、トップにベルガモットのフレッシュさを追加し、10回の処方修正を繰り返した最終ヴァージョンをモーリスは完成させ、マルはこのヴァージョンを再びミレーヌにつけてもらうのでした。そして、今回は、パリのメトロで、彼女は(もはや露出狂を見るような視線ではなく)男性から猛烈なアプローチを受けてしまうのでした。

この逸話からマルはこの香りを「ムスクラバジュール」と名づけ、フレデリック・マルの最初の9つの香りのうちのひとつとして発売されたのでした。

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約束もせず知らせもなしに自らの野獣が目を覚ます。

コンスタンティン・カカーニアスがこの香りをイメージして描いたイラスト。

眠りから目覚めさせるような新鮮なベルガモットとタンジェリンの歓喜の歌からこの香りははじまります。それは壮大なオペラの幕開けのような典型的なクラシックな香水の幕開けのムードを漂わせています。そして、ラベンダーが暗闇の中で微笑んでいます。

すぐにスパイシーなシナモンとクローブが噛み付き合いながら、パウダリーなトンカビーンの号令のもと、肉体の冷たい部分にはシナモンを、温かい部分にはクローブをという感じに、懐柔するように神経細胞にまで溶け込んでゆきます。

このスパイスによりアニマリックな肉蜜のようなものが全身から放たれる瞬間に、この香りの中で何かが弾けることになります。(ラブダナム、ベンゾイン、アンバーグリス、アンブレットシードがブレンドされた)アンバーノートとバニラ、ムスク、カストリウムとシベットの合成されたものが、大容量で有無を言わさず、服従させる気持ち満々で肉体だけでなく心まで従わせるように香り立つのです。

そして、更には男性の中の女性と、女性の中の男性を呼び覚ましながら、その甘い香りの果てに、この攻防戦に終止符を打つ破滅的な〝何か〟を与えるクリーミーなサンダルウッドとガイアックウッド、シダーウッド、パチョリが香りの脊椎となり現れるのです。

この〝何か〟が、身に纏うコンディションによって変わっていくのがこの香りの最大の魅力なのです。そして、ある時は、間違いなく自分の中に眠る野獣を呼び覚ます香りなのです。

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蘇る金狼=ネオオリエンタル革命。

『ラストタンゴ・イン・パリ』のマリア・シュナイダー

この香りにより、時代遅れとされていたアンバー・オリエンタル・フレグランスは見事に復権し、2001年以降定着していく「ネオオリエンタル時代」が到来することになるのです。

フレデリック・マルにとってこの香りは、マーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが主演した『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)のあの変態的な猟奇的なセックスの空気を感じるということです。

この香りは、イヴ・サンローランの「ニュ」(2001)、そして、ナルシソ・ロドリゲスの「フォー ハー」(2003)、カルティエの「ル ベゼ デュ ドラゴン」(2003)に影響を与えました。

そして、モーリス・ルーセルがルラボで調香した「ラブダナム18」がよく比較される香りです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ムスク ラバジュール」を「ヒッピー風ムスク」と呼び、「フランス語のラバジュールには、抗いがたい男性の美しさに心を奪われるという意味が含まれている。もちろんモーリス・ルーセルには感服しているが、この香水にそういった情熱が感じられるとは思えない。」

「確かに、動物様バーバーショップとでもいうような強烈なムスク調なのだが、それ以外の構成が、調和したムスクの大きな外陰部をもっと大きなイチジクの葉で覆い隠すような動きをするので、結局はセルジュ・ルタンスの「アンブルスュルタン」になってしまう。つまりモロッコ風マーケットに漂う繊細なヒッピーアンバーなのだ。」

「その上はじめのうちは荒削りな魅力が見えても、次第に調和はくずれ、安っぽい残香へと向かう。それは単純で、驚くほど気取りのない「エンヴィ フォー メン」を連想させる。悪くはないが、見掛け倒し。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ムスク ラバジュール
原名:Musc Ravageur
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:モーリス・ルーセル
発表年:2000年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/6,820円、30ml/18,150円、50ml/23,650円、100ml/34,100円
公式ホームページ:高島屋オンラインストア


トップノート:ラベンダー、ベルガモット、タンジェリン
ミドルノート:シナモン、クローブ
ラストノート:サンダルウッド、トンカビーン、バニラ、ガイアックウッド、シダー、アンバー、パチョリ

フレデリック マル ムスク ラバジュール 50ml 香水 【メール便(ゆうパケット)対象外】 【SG】 【あす楽_土曜営業】

価格:22,500円
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