アイリス シルバー ミスト
原名:Iris Silver Mist
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:モーリス・ルーセル
発表年:1994年
対象性別:ユニセックス
価格:不明
モーリス・ルーセルの唯一のルタンス
この香りはシモネッタ・ヴェスプッチのために作った香りです。彼女こそが、サンドロ・ボッティチェッリのミューズであり、『ヴィーナスの誕生』のヴィーナスのモデルです。フィレンツェ一の美女とうたわれた彼女は、15歳でゲイの男性と結婚し、幸せではありませんでした。
そして、当時の上流階級の女性のように太陽の光によってではなく、寒空の下、月の光で髪を美しいブロンドに脱色していたため、結核にかかり、23歳の若さで死んでしまいました。
セルジュ・ルタンス
パレ・ロワイヤル本店限定の香りの中でも最も人気が高く、香水史においても重要だとされている香り「アイリス シルバー ミスト」は、セルジュ・ルタンスの作品の中でも、珍しくクリストファー・シェルドレイクが調香を担当していません。
この香りの調香師は、なんと一度っきりのセルジュ・ルタンス降臨となるモーリス・ルーセルなのです。
トスカーナ地方では、リネンをしまう戸棚に香り付けするためにアイリスの根茎が置かれているといいます。そこからセルジュがインスピレーションを得て生み出されたのがこの香りです(天然のタンスにゴン!)。
「爆発するアイリスを作ってください」と依頼されたモーリスは、この香りの創造に相当苦心したらしい(もしかしたらこの時に、セルジュとモーリスの関係が修復不可能になったのかもしれない)。とにかくトップノートから爆裂するアイリスノートを希望したのです。
アイリスの根茎を許容量を果てしなく越えて使用すると、アーシーさを突き抜けたメタリックな香り立ちに包まれます。それはもはやアイリスというよりも干し草やニンジンの香りとしか形容しようがない香り立ちとなります。
しかし、何よりも圧巻なのは、そんなメタリック・アイリスを、霧のようにガルバナムとベチバー、サンダルウッドが包み込んでいく瞬間です。更にその奥深くからムスクが、シャングリラに到達したかのような幻想性と共に現れるのです。
アイリス・ラバジュール
大事な商談に望むスーツスタイルの男女が、身に纏うと、絶大なる後方支援効果を生み出せそうな香りです。極上のアイリスは、肌には乗らず、肌に馴染んでいくという〝香りのマタンゴ現象〟がよく理解できる香り。
ルタンスのひらめきは、モロッコの古めかしい図書館で生まれました。ふとグレーのフランネルスーツを着た紳士がつけやすいフローラルのフレグランスを作りたいと思い立ったのでした。
しかし、そんな事よりも何よりも重要なのは、モーリス・ルーセルがフレデリック・マルで「ムスク ラバジュール」を創造する6年前にこの香りを生み出したということです。それは間違いなく、この時の「香りは爆発だ!」経験があればこそ、ムスクもラバジュールしたのでしょう。
そういう意味においてこの香りは、「アイリス・ラバジュール」と名付けるべき香りかもしれません。
ちなみにこの香りには、アイリスの根から分離されたイロンが使用されています。それはイオノンのような感情に訴える温かみを持つ香りではなく、メランコリーなクールな豪奢さを発散します。ちなみにイロンはかなり希少なので、シャネルの「キュイール ドゥ ルシー」など数少ない香水にしか使用されていません。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アイリス シルバー ミスト」を「アイリスの根」と呼び、「アイリスと偽者のアイリス(たいていはこっちだ)が普及するかなり前に、セルジュ・ルタンスはモーリス・ルーセルに極めつきのアイリスを作るように依頼した。どうやらルタンスはアイリスの分量を最大限にするようにしつこく迫ったらしい。」
「その中にはイリバールという滅多に使われない粗野なアイリスニトリスもあった。こうして出来上がったのは、これまでにない粉っぽさと根が香る。想像を絶する不吉なアイリスだった。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:アイリス シルバー ミスト
原名:Iris Silver Mist
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:モーリス・ルーセル
発表年:1994年
対象性別:ユニセックス
価格:不明
シングルノート:ベチバー、ムスク、アイリス、サンダルウッド、ヴァージニアシダー、ガルバナム、クローブ、インセンス、ベンゾイン