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ジャン=ポール・ゴルチエ

【ジャン=ポール ゴルチエ】フラジャイル(フランシス・クルジャン)

ジャン=ポール・ゴルチエ
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フラジャイル

原名:Fragile
種類:オード・パルファム
ブランド:ジャン=ポール・ゴルチエ
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:1999年
対象性別:女性
価格:不明

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黄金のシャワー艶めく『香りのスノードーム』

©JeanPaul Gaultier

ドヴィマ・ウィズ・エレファンツ、1955年。撮影:リチャード・アヴェドン

1995年に「ル マル」により、鮮烈なデビューを果たしたフランシス・クルジャンが、1999年という世紀末に生み出したジャン=ポール・ゴルチエにおける二作目となる「フラジャイル」は、ゴルチエの女性用フレグランス第二弾でもありました。

この香りを生み出していた時、丁度、(今はジボダンに吸収された)クエスト・インターナショナルの彼の隣の部屋で誕生しつつある香りが「ジャドール」でした。カリス・ベッカーによるこの香りもチューベローズが魅力的な香りでした。

ドヴィマ・ウィズ・エレファント」を現在(1999年当時)に蘇らせたようなファッション・フォトが印象的な「フラジャイル」のキャンペーン・モデルはエリン・オコナー(1978-)でした。

リチャード・アヴェドンにより磨き上げられた彼女は、当時カール・ラガーフェルドに「世界でもっとも美しいモデルの一人」と絶賛され、大親友のゴルチエからは、「まるで演劇を見るような、とてつもない刺激を受ける人」と絶賛されていたファッション・モデルでした。

灼熱の中、2004年に行われたアレキサンダー・マックイーンのスワンドレスのフォトシューティングにおける仕事の姿勢も含めて、エリン・オコナーという人は、涼しい顔で(苦労を耐え忍び)栄光を勝ち取る人であり、その浮つかない人柄と相反する感性の独自さから、多くのデザイナーが、惚れこみました。

そんな世紀末のドヴィマとも言えるエリン・オコナーを、そのまま黄金の火花が舞い散るスノードームの中に閉じ込めた、ポンプが見えない斬新なボトル・デザイン。「失われるスノードーム」という稀有な概念。その中には黒のイブニング・ドレスを着たエリンがいるのです。

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なくなった時にあなたが生まれ変わる香り

©JeanPaul Gaultier

私たちは皆、金太郎飴のような製品や、すべてが白のミニマリズムには退屈しています。香水のボトルがシャンプーやヘアスプレーのように見えたら、喜びはどこにあるのでしょう? 今、香水ボトルは夢を失いつつあります。だから、私たちはこの香りで、夢を取り戻したいと考えたのでした。使うたびに喜びを与えてくれるボトルの創造を。

シャンタル・ルース

ジャン=ポール・ゴルチエと彼の香水のライセンスを持つボーテ・プレステージ・インターナショナル社( BPI )の社長兼クリエイティブ・ディレクターであるシャンタル・ルースは、世紀末の香りとして、まるで映画『未知との遭遇』の宇宙船のように、きらめく円盤の中に浮かび上がる、この世のものとは思えないリトルブラックドレスを着た美女が佇むチューベローズを誕生させました。

しかも、その名は「恐怖の女王」でも「第七の予言」でも「アルマゲドン」でもなく、〝繊細、はかなさ、壊れやすさ〟を意味する「フラジャイル」と名付けられているのでした。

郵送中の梱包された箱に押された「Fragile=こわれもの」。まさにこの名は、男性の心を打ち砕く媚薬が入っていることを警告しています。

二人はこの香りのコンセプトとして、(1997年春からゴルチエが参加している)オートクチュールの魅力、ドラマ性、演劇性を惜しげなく表現することを目指しました。つまり「フラジャイル」とは、最初から最後まで、真のラグジュアリーの探求の果てに生み出された香りでした。

1999年7月に発表された2000年春夏のオートクチュール・コレクションで、背中が開いた黒いベルベットのドレスを披露し、そのドレスに「フラジャイル 」と名付け、控えめに新作香水をPRしました。

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なくなった時にあなたが生まれ変わる香り

ジャン=ポール・ゴルチエ2004年秋冬のオートクチュール・コレクションのエリン・オコナー。

©JeanPaul Gaultier

チューベローズ=月下香とは、19世紀のヨーロッパにおいては、娼婦が愛用する香りであり、媚薬としての催淫効果があると言われてきました。そんな繊細さとは最も無縁だと思われるチューベローズに、白い羽衣を着せ、金粉がたゆたう中、黄色の花蜜を天空に舞わせる、夢か幻のような艶やかな香りにしているのです。

チューベローズはそのエキスを拡散させ、人々を魅了していくのですが、その寿命は目に見えて減っていく過程を、フレグランスで表現したもの。それはオンナという存在がエイジレスでもアンチエイジングでもなく、滅びがあるからこそ、魅惑のシャワーを生み出すことが出来ると言う、美ははかないものであり、それが美の魅力であると言う絶対概念をフレグランス商品としてトータルパッケージしたような香りです。

「そこのあなた・・・アンチエイジングなんて、子供じみた遊びではなく、エイジングとのファイナル・バトルを楽しみましょう」。ゴルチエ節全開の、1999年にかなり斬新なアプローチで生み出されたチューベローズの香りと言えます。

年を取るほど美しくなることは、絶対にありません。しかし、年を取ることによって、美しさが失われていく過程にのみ生み出される熟した果実がそこに実ります。それこそが、表面的な美しさを越える、圧倒的な美なのです。

このフレグランスを使い切ったとき、あなたの美しさのステージは表面的なものから、内面の成熟を伴ったものになる。そんな美のはかなさの砂時計としての世界で唯一のフレグランス。それがゴルチエの「フラジャイル」なのです。なくなった時にあなたが生まれ変わる香りです。

あまりにも、素晴らしい香りなので、うっかり熱く語りすぎてしまいました。

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黄金のチューベローズの儚い香り

©JeanPaul Gaultier

透き通るように美しい清らかなオレンジ・ブロッサムとローズの花の舞の中に、彷徨いこむような情景からこの香りははじまります。

その中に、キリっとした清流のようなラズベリーリーフとベルガモットの香りが流れるように広がり、スパイシーなコリアンダーとジンジャーと遭遇し、舞台が暗転し、一筋の光の中から、リトルブラックドレスを着たクールビューティーが素肌のランウェイを歩くような、フルーティな感覚に満たされていきます。

一吹きした瞬間、背筋がピンとし、みるみるうちに全身が磨き上げられていくかのような錯覚を感じさせる不思議な〝美的体感〟に包まれていくようです。

そして、素肌の奥の方からまったりと甘く優しいジャスミンが立ち上りはじめ、素肌の表面を磨き上げるように、ピンクペッパーとペッパーベリーが広がり全面を覆い尽くした瞬間、目が眩むほどに、舞台が明るくなり、白い花びらのようなリトルホワイトドレスに着替えたクールビューティが、青白く艶めくチューベローズのグリーンな甘やかさを静かに解き放ってゆくのです。

それは、太陽の光に愛される花の香りではなく、月の光に愛される花の香りのようです。月の光がオンナの素肌を若返らせ、束の間の艶めきを与えていく、そして、ムスクとバニラ、アンバーが温かくすべてがひとまとめにとろけて、エレガントなクリーミーでスパイシーでビターな甘さを匂い立たせていくのです。

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香水データ

香水名:フラジャイル
原名:Fragile
種類:オード・パルファム
ブランド:ジャン=ポール・ゴルチエ
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:1999年
対象性別:女性
価格:不明


トップノート:イタリアン・タンジェリン、コリアンダー、ジンジャー、チュニジア産オレンジ・ブロッサム、ベルガモット、スターアニス、ブルガリアン・ローズ
ミドルノート:カーネーション、チューベローズ、アイリス、ジャスミン、インディアン・ジンジャー、イランイラン、ローズ
ラストノート:アンバー、シナモン、ムスク、バニラ、シダー