想像を絶するプレッシャと戦い、勝った男。
私は有名になってからインターネットで自分の名前を検索するようなことはしなかった。もしそんなことをしたら見たくもないことを見てしまい正気じゃいられないことを知っていたからです。
しかし、ジェームズ・ボンドが決まったとき、私は愚かにも自分の名前を検索してしまいました。そして、その後、正気を取り戻すのに大変苦労しました。
ダニエル・クレイグ
バーバラ・ブロッコリ(1960-)は、007シリーズの生みの親であるアルバート・R・ブロッコリの娘として、『007 私を愛したスパイ』(1977)からシリーズに参加していました。そして、ピアース・ブロスナンが5代目ボンドに就任した『007 ゴールデンアイ』(1995)以後は、父親違いの兄マイケル・G・ウィルソン(1942-、本作ではモンテネグロの警察署長役としても登場)と共に、007シリーズのプロデューサーとして辣腕を振るっています。
そんな彼女が、当初、6代目ボンドとして考えていたのが、ジョージ・クルーニーでした。しかし、ミーティングの末、「私はアメリカ人です。ジェームズ・ボンドは英国人であるべきです」と断られることになりました。
そんな時に『レイヤー・ケーキ』(2005)を見て、彼女はダニエル・クレイグこそニュー・ボンドに相応しいと考えたのでした。
そして、2005年10月14日に、178cmという歴代ボンドの中でもっとも背が低く、ブロンドヘアを染めることを拒否した男ダニエル・クレイグが、6代目のニュー・ボンドとしてアナウンスされたのでした。その瞬間、世界中で「ジェームズ・ボンド映画」はもう終わったなという空気が蔓延したのでした。そんな逆境の中、この007シリーズ屈指の傑作は生み出されたのでした。
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初仕事で失敗してしまい、Mの自宅に押しかけるボンド。
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ボンドが洗練されていく過程が楽しめる作品とも言えます。
ニュー・ボンドのファッション4
トップコート
- ブリオーニのブラック・トップコート、シングルブレスト、ノッチラペル、3つボタン、膝丈
- ブラック・ポロシャツ
- テッド・ベイカーのグレンチェックのトラウザー
- ジョン・ロブのロムゼイ、ブラックカーフ・チャッカブーツ
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
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「傲慢な人間が自分を知ることはめったにないのよ」とMに厳しく戒められるボンド。
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ノールのバルセロナ・チェアと、ハーマンミラーのオフィスチェアがあるMの自宅。
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「ボンドもまた失敗を経験して一人前の諜報部員になったということを示したかった」というダニエル・クレイグ。
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このシーンと同じパンツを履いています。
オーバーサイズ気味のブリオーニ・スーツ
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自家用ジェットから、イビサ島に降りた直後のDJみたいなアングル。
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このスーツのサイジングには賛否両論があります。
2005年6月か7月から、本作のための衣装の準備をスタートしました。脚本を読んで、プロデューサーとマーティン・キャンベル監督と打ち合わせした後、ダニエル・クレイグと打ち合わせしたの。彼自身、とてもファッションが好きな人なので、彼の意見を取り入れながら色々決めていったわ。昔『トゥームレイダー』(2001)で一緒に仕事していたからとてもやりやすかったの。
リンディ・ヘミングス
本作の衣装を担当したリンディ・ヘミングス(1948-)は、『007 ゴールデン・アイ』から本作に至るまで5作品の衣装を担当しました。イギリス・ウェールズ出身で、ロンドンの王立演劇学校でステージ・マネージメントを学んでいたのですが、少しだけ受講していたデザインコースの方に興味惹かれ、将来の進路を舞台の衣裳デザイナーへと変更したのでした。
1970年代から80年代にかけて、薄給の中、演劇のための衣裳デザイナーを務め上げた後、90年代から本格的に映画界で活躍することになりました。007シリーズの他に『トゥームレイダー』シリーズ、『バットマン』シリーズ、『ワンダーウーマン』(2017)などの衣裳を担当しています。
しかし、このブリオーニのグレースーツのシルエットはいただけません。
ニュー・ボンドのファッション5
ライトグレースーツ
- ブリオーニのライトグレーリネンスーツ、ピークドラペル、3つボタン、ダブルベンツ
- 白のトラックストライプシャツ、半袖、エポレットつき
- ブラック・レザーベルト
- ジョン・ロブのブラウンスエードのサンドン・チャッカブーツ
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
- ペルソール2244
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ボンドというよりは、麻薬カルテルの悪党に見えます。
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007史上最低のボンドカーと言われる、フォードのモンデオ2007年型を運転します。
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ヴィクシー・エンジェルのアレッサンドラ・アンブロジオ。
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時計ベルトと統一した黒ベルトに対して、茶色の靴のアンバランスさ。
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まだまだ駐車係に間違われる新米諜報部員ボンド。
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半袖シャツに、透かしストライプでエポレットつきであることがよく分かります。
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ペルソール2244
ダニエル・クレイグが世界制覇を果たした瞬間。
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きっかけは『ミュンヘン』撮影時に会ったモサドの元情報部員でした。
ニューボンドを象徴するシーンのひとつは、『007/ドクター・ノオ』(1962)と『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002)のボンドガール達がそうしてきたように、エメラルドブルーのバハマの海水から筋骨隆々のダニエル・クレイグが登場するシーンでした。それはまさにボンドが若返ったのではなく、生まれ変わった瞬間でした。
かつて、初代ボンド=ショーン・コネリーがそうだったように、ダニエル・クレイグは、女性のためのセックス・シンボルになったのでした。
そして、男性にとって、ブラッド・ピットやブルース・リー、チャールズ・ブロンソンのようなマッスル・アイコン(=その男達をひとたび見てしまうと、筋トレしたくなるという意味において)に昇格したのでした。
ダニエル・クレイグが肉体改造を決断した理由は、6代目ボンドを引き受けた後、イアン・フレミングの原作を全て読み、さらに『ミュンヘン』(2005)の役作りのためにアドバイサーをしてもらったモサドとMI6の元諜報部員達と交流していく中で、本物の諜報部員のように演じるためには何が必要か考えた末の結論でした。
このためにパーソナル・トレーナーとしてサイモン・ウォーターソンを雇い、煙草を止め、炭水化物は午後には一切取らず、プロテインを取り、有酸素運動を中心に、週5日間徹底的に肉体を鍛えて、9キロの筋肉を増強し、UFCの戦士のような肉体改造に成功したのでした。
ニュー・ボンドのファッション6
競泳トランクス
- ラ・ペルラのスカイブルー競泳トランクス
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本当の秘密諜報部員は鋼の肉体を持っていることを知り、ニュー・ボンドはリアル・スパイのような外見を作ろうと心に決めたのでした。
作品データ
作品名:007 カジノ・ロワイヤル 007 Casino Royale (2006)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ダニエル・クレイグ/エヴァ・グリーン/カテリーナ・ムリーノ/イワナ・ミルセヴィッチ/ジュディ・デンチ/マッツ・ミケルセン
- 【007 カジノ・ロワイヤル】ダニエル・クレイグのニュー・ボンド誕生
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.1|ダニエル・クレイグ6代目ボンド就任
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.2|コンバースをはいたダニエル・クレイグ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.3|ダニエル・クレイグのマッチョボディ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.4|ダニエル・クレイグとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.5|ダニエル・クレイグとアストンマーティンDBS
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.6|ダニエル・クレイグとサンスペル
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.7|ダニエル・クレイグとブリオーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.8|イワナ・ミルセヴィッチとロベルト・カヴァリ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.9|カテリーナ・ムリーノと第四のボンドガール「M」
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.10|エヴァ・グリーンとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.11|エヴァ・グリーンとグッチ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.12|エヴァ・グリーンの美容哲学
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.13|エヴァ・グリーンとヴェルサーチェ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.14|エヴァ・グリーンとサンタ・マリア・ノヴェッラ