本当の意味での21世紀のジェームズ・ボンドの誕生
この作品は、名作『007 リビング・デイライツ』(1987)以来、久しぶりにイアン・フレミングの原作を作品化したものでした。
そして、それは明らかに『トリプルX』(2002)というジェームズ・ボンドの世界観を全否定した「我こそが21世紀のスーパースパイだ!」という宣戦布告に対する答えとして生み出されたものでした。
だからこそ、ダニエル・クレイグは、ヴィン・ディーゼルに匹敵する肉体を作り上げる必要があったのです。そして、エレガントなスーツとラグジュアリー・リゾートによって遥かに格上げし、若者文化に迎合することなく、「シリーズとして歴史を背負う凄み」を徹底的に見せつけたのでした(『トリプルX:再起動』(2017)の中身のなさがこのスパイ像の限界を証明しています。中身がなくても、楽しめる映画さえも作れていません)。
そういう意味をこめてニュー・ボンドは私たちに向かい銃弾を放ち、21世紀のスーパースパイの名をいってみろ!と問いかけたのでした。
カットされたクリケットシーン。
ニュー・ボンド・スタイル2
リネンスーツ
- ブリオーニのダークネイビーのリネンスーツ、ダブルベンツ
- 青と白のエンドオンエンド・ドゥエボットーニシャツ、半袖
- ブラウン・レザーベルト
- ブラウンスエードのチャッカブーツ
ジェームズ・ボンドは、常にその時代の最高峰のテーラーのスーツを着なければならない。
リンディ・ヘミングス(ボンドにブリオーニのスーツを着せた女)

この作品には、トム・フォードのスーツは登場しない。

このシーンで、ダニエルは前歯を二本失います。

ブラウンスエードのチャッカブーツ

このシーンのために30着の同じ服が用意されました。

スタントダブルのベン・クックと共に。

貴重なカラー・ヴァージョン。

ゆったりとりした着心地の良さそうなジャケット。
ル・シッフルを好演したマッツ・ミケルセン
ル・シッフル・スタイル1 ダークブラウン・スーツ
- クリス・カーが仕立てたブラウン・スーツ、3つボタン、シングルベント、4つのカフスボタンの最後のみあけている、袖は長め
- 黒いレザーベルト
- 濃紫色のシャツ
- グリッドチェックのブラックタイ、ウィンザーノット
- ブラック・レザーシューズ

左目から血の涙が出る悪役ル・シッフルの静の魅力。

原作では巨漢の醜い男の設定なので、かつてオーソン・ウェルズが演じたル・シッフルの方が原作に近い。

ダークスーツがとても似合っています。

ボンドムービーの成功の鍵は常に魅力的な悪役に握られています。
クリス・カーは、まだ40代半ばのロンドン・ソーホー地区にあるバーウィック通りにあるビスポーク・テーラーを持つカッターです。
父親エディが1963年に創業した店舗を引き継ぎ、『キングスマン』シリーズなどの映画の仕事も積極的に引き受けています。
新米ボンドだからこそ、魅せれた疾風感!

アロハシャツでありながら大人の男仕様のシックなスタイル。

まだボンドが洗練されていない時代=007としての初仕事。
私は、この男がシャツを脱いだら、相手を殺すことが出来るような肉体を作りたいと考えました。
ダニエル・クレイグ
マダガスカルのアクションシーンで、パルクールという超人的な動きで逃走する犯人を演じるセバスティアン・フーカン(1974-)が素晴らしいです。しかし、何よりも素晴らしいのは、歴代ボンドだと絶対に生み出せなかったであろう追跡者としてのボンドのスピード感をダニエル・クレイグが生み出したところにあります。
秘密兵器を使わずに、コンバースを履いて、ただひたすら追いかける新米シークレット・エージェントの執念をココで描くことが出来たからこそ、その後の展開と、タキシード姿で洗練されていくボンドの姿に説得力が生まれたのでした。
ニュー・ボンド・スタイル3
アロハシャツ
- 花柄のコットン・アロハシャツ、ショートボタンタブの付いた半袖、左胸ポケット、エッジステッチのポイントカラー、7つボタン
- ディーゼルのグレーのコットンTシャツ、クルーネック、袖に鮮やかなレッドストライプ入り、背中に777
- ウェブ・ベルト
- タン色のリネンパンツ、ドローストリング・ウエスト、ルーズフィット
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
- コンバースのジャックパーセルOTR(オンザロード)

ジャッキー・チェンの『香港国際警察』ばりに走ります!このシーンの撮影に6週間かかりました。

コンバースのジャックパーセルOTR

上腕二頭筋の鍛え具合によって調整できるボタンタブが、花柄と同化しているのがイイ。

オメガのシーマスター・プラネットオーシャン2900.50.91

この撮影のために40枚のシャツとパンツが用意された。

ディーゼルのTシャツ。

歴代ボンド史上最強のマッチョさ。
作品データ
作品名:007 カジノ・ロワイヤル 007 Casino Royale (2006)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ダニエル・クレイグ/エヴァ・グリーン/カテリーナ・ムリーノ/イワナ・ミルセヴィッチ/ジュディ・デンチ/マッツ・ミケルセン
- 【007 カジノ・ロワイヤル】ダニエル・クレイグのニュー・ボンド誕生
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.1|ダニエル・クレイグ6代目ボンド就任
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.2|コンバースをはいたダニエル・クレイグ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.3|ダニエル・クレイグのマッチョボディ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.4|ダニエル・クレイグとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.5|ダニエル・クレイグとアストンマーティンDBS
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.6|ダニエル・クレイグとサンスペル
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.7|ダニエル・クレイグとブリオーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.8|イワナ・ミルセヴィッチとロベルト・カヴァリ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.9|カテリーナ・ムリーノと第四のボンドガール「M」
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.10|エヴァ・グリーンとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.11|エヴァ・グリーンとグッチ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.12|エヴァ・グリーンの美容哲学
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.13|エヴァ・グリーンとヴェルサーチ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.14|エヴァ・グリーンとサンタ・マリア・ノヴェッラ