ワン&オンリー・オーシャンクラブ
ボンド映画に必要なシーンのひとつとして、全くお金を気にせずに最高級のリゾートホテルに滞在するシーンがあります。考えるに、私たちは、歴代ボンドが滞在したホテルや場所に憧れ、その場所を訪れることを夢に見て、大人になったのかもしれません。
バハマが舞台になる本作において、ボンドは、アトランティス・パラダイス・アイランドには滞在せず、バハマ最高級のリゾートホテル・ワン&オンリー・オーシャン・クラブに滞在します。
私はこのホテルと、グレート・エグズーマ島にあるエメラルドベイに滞在したことがあるのですが(共に現在はフォーシーズンズ・リゾート)、共に、一泊20万円ほどの宿泊料を取る割には、サービスも雑で(これはバハマ人の国民性もある)、部屋や施設の老朽化も激しく、食事なども並程度のコストパフォーマンスが良くないホテルでした。
周辺のビーチも写真向けのビーチであり、泳ぎに適さないビーチでした(特にエメラルドベイのビーチは海がミルク色なので、怖くて遠くまでは泳げない)。
寧ろ、バハマならばキャット・アイランドのフェルナンデス・ベイ・ビレッジが最高でしょう。コテージの前のビーチは、地球上で5本の指に入るビーチと言えます。それは1kmぐらい150cmの水深が続き、海底が透き通って見える〝魔法のビーチ〟なのです。ここは、まだまだ誰にも知られていない秘境リゾートと言えます。
それにしても本作のボンドが凄いのは、人妻を落とす(それとも堕とす?)方法の露骨さです。ポーカーで男からアストン・マーチンDB5を巻き上げ、その車で、男の美人妻を待ち構え、勘違いして乗り込んだところを口説き落とし、「ジェームズあなたは人妻趣味なの?」と聞かれ、「事が簡単だからね」と答える鬼畜ぶり。
そして、男から高級車と美人妻、そして、その命までかっさらうのでした。まさに、六代目ボンドが歩いた後にはペンペン草も生えないのです。
ニュー・ボンドのファッション7
カジュアルシャツ
- アルファニ(メイシーズのPB)の黒のポリエステル長袖シャツ、胸ポケット
- テッド・ベイカーのブラウンのリネンパンツ
- ブラックレザーのブラッチャー
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
ニュー・ボンドのファッション8
ジョルジオ・アルマーニのレザージャケット
- ジョルジオ・アルマーニのダークブラウン・レザージャケット、4つのフロントポケット、ダブルジップ、ウエスト丈、ウールスタンディングカラー
- サンスペルのグレーのエジプト綿のクルーネックの半袖〝リビエラ〟Tシャツ、特注でタイトなシルエットに
- テッド・ベイカーのブラウンのリネンパンツ
- ダークブラウンのレザーベルト
- ブラックレザーのブラッチャー
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
あのレザージャケットを、私がはじめてロデオ・ドライブで見たときは、4000ドルしました。それをダニエルに見てもらって、これは映画に必要だと合意しました。そして、アルマーニ社から使用許可を得ました。しかし、撮影のために25着は必要だったので、交渉をして一着400ユーロで作ってもらったのです。
リンディ・ヘミングス
サンスペルのポロシャツ
ショーン・コネリー時代のボンドがよく着ていたポロシャツを、ダニエル・クレイグのニューボンドが久しぶりに着ます。ちなみにサンスペルのポロシャツは、筋骨隆々じゃないと似合わないシルエットなので、〝着る男を選ぶポロシャツ〟として有名です。
ちなみに、本作の監督として、ショーン・コネリー(1930-2020)が監督するという案まで出ていました。さらに、クエンティン・タランティーノが監督をする可能性もありました。その時は、フェリックス・ライターをサミュエル・L・ジャクソン、ヴェスパー・リンドをユマ・サーマンが演じる可能性がありました。
ニュー・ボンドのファッション9
ポロシャツ
- 〝リヴィエラポロ〟サンスペルのネイビーブルーポロシャツ、特注、コットンメッシュ、左胸にパッチポケット、1954年から使われている古いレース編機でタテ編み
- カーキ色のフレアパンツ
- ダークブラウンのレザーベルト
- ブラウンスエードのチャッカブーツ
- オメガのシーマスター・プラネットオーシャン Ref.2900.50.91、黒のラバーストラップ
- ペルソール2244
ダニエルのブロンドヘアと透き通るようなブルーアイを生かすために、ほとんどの衣裳にブルーかネイビーブルーをミックスしました。
リンディ・ヘミングス
ボンドスーツのお披露目。
物語が約1時間進み、ジェームズ・ボンドが私たちの見慣れたボンドスーツ姿で現れます。そして、ようやくメイン・ボンドガールである、ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)が登場します。その第一声が「I’m the money」でした。彼女は英国財務省からボンド資金の管理係として派遣された女性でした。
「君の名前をつけた両親を憎んだかい?」という憎まれ口を叩くボンド。人妻の扱い方は心得ていても、まだまだ未婚女性の扱いには慣れていないボンドに、「そのスーツを一目見れば、あなたがオックスフォードか名門校出身だということが分かるわ。でもいやいや着ているのもよく分かる。貧乏だったから同級生からはいつも仲間外れ。学資は誰かのお情け?それが心のしこりになっている。私を孤児と決め付けたけど、それはあなた自身がそうだからよ」と、キツい言葉を返すのでした。
さらに追尾弾としてもう一言。「ロレックス?(原作ではボンドはロレックスを身につけている)」「いや、オメガだ」。ここでボンドは、はじめてオメガのシーマスターダイバーを装着します。
ニュー・ボンドのファッション10
ネイビースーツ
- ブリオーニ、近くで見ないと分からないグレーストライプのネイビースーツ、3つボタン、シングルベント、ベルトなし
- ブリオーニの白のストライプシャツ
- バーガンディ・タイ
- エス・テー・デュポンの5174カフリンクス、パラジウム仕上げ
- オメガのシーマスターダイバー 300m Ref.2220.80、ステンレス・ブレスレット
作品データ
作品名:007 カジノ・ロワイヤル 007 Casino Royale (2006)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ダニエル・クレイグ/エヴァ・グリーン/カテリーナ・ムリーノ/イワナ・ミルセヴィッチ/ジュディ・デンチ/マッツ・ミケルセン
- 【007 カジノ・ロワイヤル】ダニエル・クレイグのニュー・ボンド誕生
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.1|ダニエル・クレイグ6代目ボンド就任
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.2|コンバースをはいたダニエル・クレイグ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.3|ダニエル・クレイグのマッチョボディ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.4|ダニエル・クレイグとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.5|ダニエル・クレイグとアストンマーティンDBS
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.6|ダニエル・クレイグとサンスペル
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.7|ダニエル・クレイグとブリオーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.8|イワナ・ミルセヴィッチとロベルト・カヴァリ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.9|カテリーナ・ムリーノと第四のボンドガール「M」
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.10|エヴァ・グリーンとジョルジオ・アルマーニ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.11|エヴァ・グリーンとグッチ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.12|エヴァ・グリーンの美容哲学
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.13|エヴァ・グリーンとヴェルサーチェ
- 『007 カジノ・ロワイヤル』Vol.14|エヴァ・グリーンとサンタ・マリア・ノヴェッラ