オードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーン20 『パリの恋人』3(2ページ)

    作品名:パリの恋人 Funny Face (1957)
    監督:スタンリー・ドーネン
    衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド
    出演者:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプソン/ドヴィマ



    「オーバーサイズ」とは、ゴミ袋のような服を着ることではない。





    ファニーフェイス・ルック9 ホワイトパンツ・ルック
    • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
    • 白のクロップド・スーツ、スラッシュド・ネック
    • ウエストに太いピンクリボン
    • かなり高いヘッドのストローハットに2段リボン
    • ピンクのバレエシューズ

    ファスト・ファッション業界の巧妙な戦略。それは「オーバーサイズを永遠のトレンド」にすることです。かつて、ガウチョ・パンツとは名ばかりの、サイズ感がでたらめな(短所をより短所にする)ゴミ袋のようなパンツを履いている女性が増殖されました。そして、生地のクオリティも悪く、「殿中でござる」と呼びかけてもおかしくないようなこのパンツを履く者達が、今ではしたり顔で、オーバーサイズがトレンドなのよと言う始末です。

    結局のところ、大きすぎるものを買わせることによって、ファスト・ファッションの最大の弱点である「販売員による的確なサイズ感のアドバイスがない」ということと「良質からは程遠い生地」が、消費者の意識から遠のいていく見事な戦略なのです。これは実に革命的な戦略であり、この事により、世界中の町並み(特に日本)において、ファッション感度の高い人と、低い人の差が、段違いに拡大することになりました。このオードリーのスタイリングを見ていただければ理解いただけると思いますが、オーバーサイズというものの妙は、かなり良質な生地が要求され、そして、丈感の絶対性が要求される、高品質なクローズから生み出されるアンバランスなバランスなのです。

    私たちは、そろそろ、ファスト・ファッションからファッションの言葉をもぎ取り、ファスト・クローズとでも呼び、そして、ライフスタイルの二面性の必要性を再確認しないといけません。ファスト・クローズとは所詮はファスト・クローズであり、他人には大してお勧めする必要もないインスタント食品のようなものなのです(買い物カゴでショッピングするスタイル)。もちろん重要なのは、他人におすすめしても恥ずかしくない(勿論自慢する必要はありません)個性を生み出す真のファッションの要素(スロー・クローズもしくはスロー・ファッション)を自分の中に組み込んでいくことなのです。



    ジバンシィの仮縫いに10時間費やしたオードリー。



    ユベール・ド・ジバンシィ(当時29才)とオードリー・ヘプバーン(当時27才)。セットにて。

    本作のためにフィッティングしている二人。

    ファニーフェイス・ルック10 ローブデコルテ・ルック
    • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
    • ピンクローズのフローラル刺繍入りのオフショルダーのグレーのローブデコルテドレス。フレアスカート
    • グレーのローヒールパンプス

    オードリーは、映画の中の衣装を選ぶ時も、プライベートで服を選ぶ時も、一日の大半を費やしたと言われています。それは普通の女優なら1時間くらいで終わらせる衣装の仮縫いにおいても、オードリーは10時間くらいかけた姿勢にも明確であり、彼女は問題の箇所を直しては再びフィッティングで確認して、何度か繰り返し、徹底的に完璧な「シンプルさ」を求めたと言われています。

    「シンプル」という言葉の意味の奥深さを知ることから、芸術的感性の磨きは始まるとするならば、オードリーは20代にして早くも「シンプル」の奥に潜む輝きを探し出そうとしていたのです。あくまでも自分の物差しで、デザイナーであるユベール・ド・ジバンシィと意見交換し合えたからこそ、映画女優とファッション・デザイナーの長年の友情は保たれ、ファッションの歴史に大いなる影響を与えるに至ったのでしょう。そして、そこにはイーディス・ヘッドやリチャード・アヴェドン達との交流もあったればこそ、彼女の個性は、彼女自身の【確信という名の覚醒】の道をたどったわけなのです。



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