フレッド・アステア

フレッド・アステア1 『パリの恋人』6(3ページ)

作品名:パリの恋人 Funny Face (1957)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド
出演者:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプソン/ドヴィマ

この男は、どこまでもエレガントな男だった。

1927年のミュージカル『ファニーフェイス』のフレッド・アステア。

1927年「ファニーフェイス」。姉のアデルと競演。

マレーネ・ディートリッヒが、フレッド・アステアについて3文字で表現して下さいと聞かれたときに、ただ「エレガント。エレガント。エレガント。」と答えました。

『パリの恋人』の原題は「ファニーフェイス」です。内容は全く別物ですが、流れる数々の曲は、1927年に大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカル「ファニーフェイス」のものです。この時の主役はアデル&フレッド・アステアでした。そして、このミュージカルから、アステアはその華麗なるタップダンスのステップを披露したのでした(しかし、あくまでもこの時のアステアは、彼自身も尊敬する偉大なるダンサーである姉アデルの添え物的な存在でした)。

約30年の時を経て復活した「ファニーフェイス」。それはオードリー・ヘプバーン×ユベール・ド・ジバンシィの本格的な融合の始まりであり、そこにリチャード・アヴェドンが加わることから生まれるであろう〝想像を絶するファッション・アイコン〟を受け止められるだけの相手役が必要でした。パリを舞台にエレガントを体現したダンスの出来る男がです。その男こそが、当時50代半ばだったフレッド・アステア(1899-1987)だったのです。

後に、マイケル・ジャクソンが、最も崇拝するエンターテイナーの筆頭として彼の名を上げ、最も自分のパフォーマンスに影響を与えた映画としてあげた『パリの恋人』。この作品におけるオードリーのクレイジー・ダンス・シーンのファッションに触発され、丈の短めのパンツに白のソックスとペニーローファーというスタイルが、(マイケル・ジャクソンにより)更なる継承を経たわけなのです。

本作がファッションに与えた影響について語るにおいて、フレッド・アステアの安定感を語らずして、何も語ったことにはなりません。オードリー・ヘプバーンとドヴィマの輝きが〝神のごとく〟だったのは、ファッション・フォトグラファーとしてのセンスの良さを示せた「エレガント」を体現する男フレッド・アステアの存在がいればこそだったのです。

ブルックス・ブラザーズのボタンダウン・シャツ

センスの良さを示す二つのアイテム。ストールクリップとスカーフ・ベルト。

スカーフの結び目の見せ方にも常に拘りを見せるアステア。

リチャード・アヴェドンの役柄が出来るハリウッド・スターは彼をおいて他にいませんでした。

リチャード・アヴェドンとヴェルーシュカ、1967年。

フレッド・アステア・ルック1 スカーフ・ベルト・ルック
  • ブルックス・ブラザーズの水色のボタンダウン・シャツ
  • 赤ベースのスカーフ・ベルト
  • グレーのテーラード・ワイドパンツ
  • ローファー
  • 金のストールクリップ
  • 左手小指にリング

1896年に英国でポロ観戦していたブルックス・ブラザーズの創業者の孫にあたる当時の社長ジョン・E・ブルックスが、選手が着ていたシャツの襟が顔に当たらないように、その襟にボディに留めるボタンが付いていたことから着想を得て、1900年にポロカラーシャツが発売されました。それまでノーカラーで、着脱式の硬いカラーを付けていた堅苦しいメンズ・ファッションに、カジュアルの要素が加わることになり、その着心地の良さからすぐに大ヒットしました。

そして、クラーク・ゲーブル、ケーリー・グラント、タイロン・パワーとフレッド・アステアが、映画の中でこのシャツを愛用することによって、このボタンダウンシャツを象徴するファッション・アイコンとなりました。それはアンディ・ウォーホルが、ブルックス・ブラザーズの白いボタンダウンシャツしか着ないようになるほどにメンズ・ファッションのひとつの洗練として影響を与え今に至ります。

程よいリラックス感と、エレガントさを併せ持つ稀有なスタイル。それがボタンダウンシャツを上手く着こなした場合に生まれます。この作品におけるフレッド・アステアのボタンダウン・シャツの着こなしは、その意味において、タイムレスな男の装いが生み出すパワーを教えてくれます。

1.隣にいる女性のファッション・センスをより輝かせ
2.精神安定剤のような安心感を周りに与えつつ、モード感も生み出し
3.根本に存在する男性のエレガントさを、カジュアルな雰囲気で打ち出す

そんなパワーを生み出せるシャツ。それがボタンダウン・シャツなのです。

ページ:

1

2 3

ファッションアイコン(女優編)

PAGE TOP