オードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーン19 『パリの恋人』2(2ページ)

    作品名:パリの恋人 Funny Face (1957)
    監督:スタンリー・ドーネン
    衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド
    出演者:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプソン/ドヴィマ



    「モードである」ということは、「コンプレックスがある」ということ。


    みんな君の目に夢中だよ。

    細すぎる肉体と、平べったい胸に悩むオードリーに対してジバンシィが言った一言。人は、短所に幻滅するのではなく、長所に魅了されるものである。

    ファニーフェイス・ルック4 スワン・ルック
    • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
    • 床丈のマント付きのピンク・ガウン
    • タイトなサテンの王室風ホワイトドレス
    • オールバックにした額に光るティアラとイヤリング
    • 白のサテンのロンググローブ
    • 白のローヒールパンプス

    オードリー・ヘプバーンという人は、まさにコンプレックスの塊の人でした。1.歯並びが悪い。2.えらが張っていて顔が四角。3.胸がぺったんこ。4.お尻が小さく綺麗なウエストラインが生まれない。5.足が大きい。以上が彼女にとって彼女自身が言及している主なコンプレックスでした。

    本作においてオードリーは、本格的にユベール・ド・ジバンシィに衣装デザインしてもらうことになります。ある日、彼女はずっと気になっていた質問をユベールにぶつけました。「私のスタイルがもっと良かったら、デザインしやすいでしょ?」と。それに対してユベールはこう答えました。「オードリー。キミのバレリーナとして訓練された肉体と物腰。女優として培われた表現力。それ以上に何が必要なのですか?」

    コンプレックスがあるからこそ、人は、懸命にそれを克服しようと努力します。そして、ただ外見にこだわることなく内面を見つめることが出来ます。自分のコンプレックスを整形手術により克服することは、それはそれで、自分に自信がつくということにおいて素晴らしいことでしょう。しかし、内面の充実の伴わぬ外見に対する信奉によって、人生において進める道など、たかが知れてきます。どれほど美しかろうと、そこに知性と個性が伴ってこその美意識なのです。

    そして、真実を言うならば、整形手術によって生み出される真実は、若さの崩壊と、人間よさらばです。無表情がその女性を支配し、終りなき整形手術の連鎖の中で、依存症になります。そういう人は早晩にして整形手術代を稼ぎ出す仕事に従事することになります。それが高級娼婦(もしくは高給取りの旦那を持つ妻)であれば、何らかの価値も生み出すでしょうが、ごく平凡な風俗嬢であれば、整形手術をしてあなたが得たものは何だったのか?という本質が、死神のように付きまとう人生に支配されることになります。

    オードリー・ヘプバーンの魅力は、その歯並びを改善しなかった所にあります。そして、えらを削らなかった所にあります(豊胸しなかった点も)。最終的には皺だらけの容姿を曝け出し、ユニセフ親善大使として生きる道を選びます。それが彼女にとっての人生に対する答えだったのでしょう。彼女は少なくともアンチエイジングには興味はなかったのです。人間の魅力とは、個性から生まれます。「汚れた顔の天使」が存在するように、人々にとって、あまりに美に固執することは、往々にして美からかけ離れる結果を生み出すものなのです。



    伝説となったオードリーのバルーン・フォト

    後にプロのファッション・モデルによって撮影されたモチーフ・フォトと比べて見ても、この時の風船がいかに大きかったことか。

    しかも、雨の中の撮影。よどんだ背景に生えるカラフルな風船とオールブラックのオードリーのコントラスト。

    ぬかるんだ地面さえも忘れさせるオードリーの存在の美。

    アヴェドンは言いました。「その風船にぶら下がって飛んでけそうじゃないとダメだ」と。

    ファニーフェイス・ルック5 リトル・ブラック・ドレス・ルック
    • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
    • ショートスリーブ・リトル・ブラック・ドレス
    • 円盤型のブラックハット
    • エルメスの白のショートグローブ
    • ブラック・パンプス

    チュイルリー公園のカルーゼル凱旋門前で撮影されたこのバルーン・フォト。後に、多くのファッション誌で模倣されることになるこの強烈なイメージのコンセプトは、風船にぶら下がって飛ぶ女性でした。だからこそ、リチャード・アヴェドンは、本当に飛んでいけそうなサイズ&数の風船を求めたのです。

    このシーンは、間違いなく『パリの恋人』が生み出したオードリーの一つのイメージであるモード感を演出していました。その前のシーンのランウェイ・モードに対して、こちらは、非日常的なモードです。それをピエール・カルダンやパコ・ラバンヌ、クレージュが行う遥か昔に、『宇宙戦争』のH・G・ウェルズと、『80日間世界一周』のジュール・ヴェルヌの世界観をミックスさせたSF×モードミックス・イメージを提案したのでした。コンセプトはこうです。「風船で飛んでしまいそうな軽やかな優雅さ」です。



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