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『昼下りの情事』Vol.3|オードリーのカクテルドレスとサブリナパンツ

オードリー・ヘプバーン
Love in the Afternoon (1957) - Audrey Hepburn
オードリー・ヘプバーン
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プリマドンナのようなカクテルドレス

「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲が流れるオペラ座のシーンで、オードリー・ヘプバーンが着ているジバンシィのカクテルドレスのスカートが、まるで舞台上のプリマドンナのチュールスカートのようでとても美しいです。

オードリー・ヘプバーンという女優の恐ろしさは、カジュアルウエアを、エレガントなドレスのように着こなし、リトルブラックドレスを、自分の第二の肌のようにフィットさせ、さらにイブニングドレスを、妖精が誕生したかのような透明感(しかもどこか控えめな表情をつけて)で易々と着こなすところにあります。

この自由自在にドレスのパワーと一体化するところが、『ローマの休日』のローブデコルテ、『麗しのサブリナ』のサブリナドレス、『戦争と平和』の数々のドレスでも感じ取ることが出来る、オードリーの〝ファッション・モデルには出来ないことをやってのける天賦の才〟なのです。

長い首がひときわ際立つボディラインと愁いを含んだルックスによって、オードリーは、イブニングドレスを無表情で着るのではなく、ドラマティックに着ることが出来るのです。だからこそ、彼女のドレス姿は、ただ美しいだけではなく、永遠に女性の心を揺り動かし続けるのでしょう。

ディズニーのアニメーションから抜け出てきたかのような10代のプリンセスルック。

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20代のオードリーとユベールが到達したひとつの頂点

隙のないお人形のようなシルエット。

リトルブラックドレス姿でこのドレスを持つオードリー。

オリジナルのカクテルドレス。

このカクテルドレスこそは、本作撮影時(1956年8月~12月)に27歳だったオードリー・ヘプバーンと29歳のユベール・ド・ジバンシィが到達したひとつの頂点とも言える作品でした。

それはオードリー自身の20代の集大成とも言える妖精のような透明感を、オペラ座の空気を借り、永遠のものにした瞬間でした。なによりもストラップレスビスチェのウエストが52cmという細さに驚かされます。

「クチュールの黄金時代」である1950年代だからこそ、ユベールも生み出すことが出来た非常に贅沢な素材とサヴォアフェールがふんだんに使用されているドレスです。

しかし、より興味深い事実は、オードリーは、第二次世界大戦の厳しい環境で育った経験から、自分の衣装を使用した後で、倉庫に眠らせておくことは避けたいと考え、出演契約の条項に、衣装を引き取るという一文を常に加えていたという事実です。

例えば、このドレスに関しては、ユベールに少しサイズに余裕をもって作ってもらいました。そして、何度かイベントでこのドレスを着用した後、1958年に幼馴染のタニア・スター=ブスマンに、彼女の出産記念としてこのドレスを贈りったのでした。

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アリアーヌのファッション6

カクテルドレス
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • ギリシア風ストラップレススカラップドレス、胸元にグリーンのビジュー、オーガンジーのフリルスカート、ヘムにもビジュー、ウエストにブルーシルク・リボン
  • シルクのホワイトジャケット、シングル2つボタン
  • ロングホワイトグローブ
  • グリーンのヘッドアクセ
  • 白のパンプス

私の統計では、寝るときに、うつ伏せになる女性の86%は秘密の恋愛中ということです。

クロード・シャヴァス(オードリーの父親)の台詞

アリアーヌ王妃と呼びたくなるオーラがあります。

そして、バレエのプリマドンナのようでもあります。

オードリーの美しいデコルテライン。

オードリーはこのドレスがとても気に入り、ブラック・ヴァージョンのドレスも、ジバンシィに作ってもらい買い上げたほどでした。

気品溢れるシルクのホワイトジャケットです。

ジャケットを着るとカクテルドレスの雰囲気ががらっと変わります。

ゲイリー・クーパーの台詞曰く「リヴィエラ、ビアリッツ、ポルトフィーノ」が当時のラグジュアリー・リゾートらしい。

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ココ・シャネルを意識した台詞の数々

パリ・リッツの廊下に佇むオードリー・ヘプバーン。

パリ・リッツが舞台のこの作品には、当時、実際にそこに住んでいたココ・シャネルを意識した台詞が散りばめられています。まず最初に、フラナガンを不倫相手の夫の襲撃から救い出すため、その妻とアリアーヌが入れ替わるのですが、危うく、妻の香水の残り香で、夫に「どこかに隠れているはずだ!」とばれそうになります。

そして、後日のアリアーヌとフラナガンの会話の中では、香水で大儲けしている大富豪からこのコートを貰ったというアリアーヌの作り話がはじまります。両方のシーンでアリアーヌはリトルブラックドレスを着ています。つまり、ココ・シャネルが住んでいるパリ・リッツで、彼女が発明したリトルブラックドレスを着て、香水の話をしているのです。

そして、極め付けが、ココ・シャネルの有名な逸話である「イギリスのデュークからセーブルを貰ったのよ」をアリアーヌが話すわけなのです。

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アリアーヌのファッション7

毛皮コート
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • 白テンのコート
  • ボートネックのリトルブラックドレス
  • パテントレザーのボウ付きローヒールパンプス
  • 白のショートグローブ

この作品のもうひとつの主役はジプシーの4人組の楽団でした。彼らはビリー・ワイルダーがパリのとある場末の酒場で見つけ出演させたのでした。

21世紀に失われたエレガンスが映像の中に残っています。

毛皮の中には、リトルブラックドレスを着ています。

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オードリーのサブリナパンツ再び。

ユベール・ド・ジバンシィがデザインしたサブリナパンツです。

麗しのサブリナ』のサブリナパンツはジバンシィがデザインしたものではなかったのですが、こちらのサブリナパンツは、ジバンシィによるものです。ポイントは、

1.パンツ・ルックに、ヒールの高い靴を合わせないこと。それをしてしまうと脚とヒップラインを過度に強調してしまうことになる
2.アクセサリーは一点のみ。ヘアリボン
3.上質な素材とデザインに拘る。カーディガンが衿付き、ブラウスが丸みのある細めのカラー付き、パンツの足首のボタン。ワンポイントの個性こそエレガンスの真髄
4.手首、足首、腰のライン、首元の見せ方の上手さ

この4点が、オードリーのカジュアル・エレガンスの鉄則なのです。

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アリアーヌのファッション8

サブリナパンツ
  • デザイン:ユベール・ド・ジバンシィ
  • 赤の衿付きニットカーディガン
  • 白ブラウス、丸みのある細めのシャツカラー
  • サブリナパンツ、トリコロールカラーのピンストライプ、フィット感のある伸縮素材、足首にボタン付き
  • 赤のカマーバンド
  • 赤のヘアリボン
  • 赤のバレエシューズ

オードリーの嫌いな色のうちの一つが赤でした。そして、トリコロール・パンツ。

でも赤づくめのファッションがとても似合っています。

赤のカマーバンドのアンサンブルなどはさすがジバンシィです。

ウエスト位置は高く、シャツインして小奇麗に。カーディガンのボタンはトップのみ。

ブラウスも、色、質感、シルエット全てがパーフェクトです。

作品データ

作品名:昼下りの情事 Love in the Afternoon (1957)
監督:ビリー・ワイルダー
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ゲイリー・クーパー/モーリス・シュヴァリエ