オードリー・ヘプバーン

『昼下りの情事』Vol.1|オードリー・ヘプバーンとリトルブラックドレス

〝ひと回り年上の男性〟がファッション・アイコンを作る。

ローマの休日』(1953)でグレゴリー・ペック(13歳差)、『麗しのサブリナ』(1954)でハンフリー・ボガート(30歳差)とウィリアム・ホールデン(11歳差)、『パリの恋人』(1957)でフレッド・アステア(30歳差)といった具合に、オードリー・ヘプバーンのこれまでの相手役の男優は、全て10歳以上年の離れた〝大人のオトコ〟でした。

そして、本作においてもかつて「この男は、うしろを向いて立っているだけで女性ファンの心をつかむ」とまで言われたハリウッドの名優ゲイリー・クーパー(1901-61)と共演しています。そんな一回りも年の離れた男性との恋愛映画が許された時代だったからこそ、オードリーの生々しさの伴わない神話的な魅力が保たれたのでした。

本作において当時28歳のオードリーは、19歳の役柄を演じるために、センター分けボブのサイドを内巻きにしたり、二つくくりにして、本物のティーンエイジャーに見えるような無理のない若々しさを演出しました。そこには、『ローマの休日』でアン王女とアーニャという永遠のスタイル・アイコンを創造する手助けをした、アルベルト&グラツィア・デ・ロッシ夫妻のメイクアップの力が大きかったことは言うまでもありません。

オードリーが〝永遠のスタイル・アイコン〟に見えるのは、洗練された中年&初老男性に取り巻かれた作品にのみ出演しているからでした。これは、思い切った意見なのかもしれませんが、〝永遠のスタイル・アイコン〟となる女優は、どうも一回りは年の離れた男性と共演する傾向がありました。

結局は、それが同世代の心しか打たない物語なのか、世代を超えて心を打つ物語なのかの違いであり、昔の映画女優にスタイル・アイコンが多かった理由なのではないでしょうか。

つまり、魅力的な年の取り方をしている〝大人のオトコ〟をいかにアクセサリーのように自分の周りにはべらす事が出来るか?ということなのです。

当時大流行したアリアーヌ・カット。センターで分けて内巻きにカールし、オードリーの頬を覆うスタイル。

ローマの休日』のメイクアップ・アーティスト、アルベルト&グラツィア・デ・ロッシ夫妻によるアリアーヌ・スタイル。

アルベルト・デ・ロッシがオードリーに与えた影響は少なくない。

アルベルト&グラツィア・デ・ロッシ

アリアーヌ スタイル1

パリジェンヌ・パジャマ
  • ハイドンの交響曲第88番を弾く
  • ヒトデ柄のウールガウン、白の襟と袖、そして、紐ベルト
  • パジャマ
  • フラットシューズ

当時28歳だったオードリーが19歳の音楽大生を演じました。

シュヴァリエは、当時フランスを代表する国民的エンターテイナーでした。

あくまでも太眉がオードリー・スタイルです。

乙女心をくすぐるアイテムに満ち溢れた19歳のパリジェンヌのお部屋。

モーリス シュヴァリエの圧倒的な存在感

ゲイリー・クーパーとモーリス・シュヴァリエとオードリー。クーパーのポロシャツが可愛い。

オードリー・ヘプバーンという女優の素晴らしさを端的に述べると、オランダ人とイギリス人のハーフであり、フランス人の血は一切流れていない身でありながら、パリジェンヌを演じられるところにあります。そして、パリという街もオードリーの存在により、より洗練とファッションの都というイメージを世界中の人々に与えたのでした。

さらに本作でオードリーのパリジェンヌとしての魅力を高める効果を生みだしているのは、音楽です。もうオープニングの『魅惑のワルツ』の調べから、私たちの心はパリへと飛んで行きそうです。50年代のハリウッド映画には、人の声の入らない優雅な音が充満していました。そして、モーリス・シュヴァリエの語りが始まります。

パリは恋人たちの都ですという喩えを実に軽妙に語りはじめるのです。ビリー・ワイルダーの素晴らしいところは、物語の始まり方にあるのです。パリのあらゆるタイプの恋人像をセ・シ・ボンのメロディーにあわせて紹介していくのです。そして、禁じられた愛に夢中な恋人たちがいますとなり、オードリーの父親モーリス・シュヴァリエ=私立探偵の登場と相成るのです。

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アリアーヌ スタイル2

リトルブラックドレス
  • デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
  • リトルブラックドレス、ブラックシャンタン、四角いデコルテ、ハーフスリーブ、フロントにリボン、プリーツスカート
  • オーガンジーのショートガウン
  • ヘッドドレス、ブラックショール、ジバンシィ1965SS
  • ローヒールパンプス
  • 白のショートブローブ

ヘアスタイルは後にジャクリーン・ケネディのヘアスタイルを考案したケネス・バッテレによるものです。「パリの心」とヘアスタイル名を名づけました。

ヒールは高ければ高いほどよいわけではないという見本。

リトルブラックドレスにアクセサリーは不要です。

このドレスのウエストラインの美しさがよくわかります。シュヴァリエ、68歳の誕生日。

台本を熱心に読むオードリー。

モーリス・シュヴァリエの父親像も素晴らしいです。ビリー・ワイルダーの素晴らしさは、必ず魅力的な脇役を生み出すところにあります。

19歳のオードリーが、大人の気品に満ち溢れるアップスタイル。

オードリーは、常に首のポジションが美しいのです。

ゲイリー・クーパーのタキシードのホワイト・ジャケットがとてもエレガントです。

オールブラックにショートグローブの使い方がオードリースタイルの真髄。

ゲイリー・クーパーというプレイボーイ

カラーでも白黒でも、どちらでも魅力的な女優はそういません。

ここでパリのリッツに滞在するプレイボーイの大富豪を演じるゲイリー・クーパーについて少し語らせてください。彼の存在があればこそ、オードリーは痛々しくなくごく自然に10代の少女を演じることが出来たのです。

ゲイリー・クーパーはビリー・ワイルダーが回想する印象では「ベントレーに乗り、最高の仕立ての上着に素晴らしいネクタイ、胸にはポケットチーフをのぞかせてスタジオ入りしていた」プレイボーイでした。元々は西部劇のスタントマンから俳優になり、マレーネ・ディートリッヒの『モロッコ』(1930)に出演しスターになった人ですが、1931年から32年にかけて付き合っていたヨーロッパの伯爵夫人ドロシー・テイラー・ディフラッソ(1888-1954)が彼に与えた影響はすさまじかったと言われています。

「ローマに到着したとき、クーパーの外見はカウボーイそのものだった。しかし、帰国するときのクーパーは皇太子のようになっていた」と言う程にドロシーとの一年間の交際によりクーパーはすっかり洗練されたのでした。このドロシーという人は、ラスベガスを作ったマフィア・バグジー・シーゲルとも恋仲だった女性で、色々謎の多い女性でした。

作品データ

作品名:昼下りの情事 Love in the Afternoon (1957)
監督:ビリー・ワイルダー
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ゲイリー・クーパー/モーリス・シュヴァリエ

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ファッションアイコン(女優編)

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