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【ルイ ヴィトン】コントロモワ(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
ルイ・ヴィトン
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コントロモワ

【特別監修】カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様

原名:Contre Moi
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:100ml/38,500円、200ml/53,900円

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バニラは、旅に出た。そして、『無償の愛』を知る。

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©LOUIS VUITTON

いかにして、大量のキャラメルやプラリネを使用しないでオリエンタルの香水を作れるか?その答えがこの香りです。

ジャック・キャヴァリエ

2016年9月に、ルイ・ヴィトンが、70年ぶりにフレグランス=レ パルファン ルイ ヴィトン(一挙、7種類の香り)を発売しました。全ての香りを調香したのは、2012年にルイ・ヴィトンの専属調香師に就任したジャック・キャヴァリエです。

そのうちのひとつである「コントロモワ」は、フランス語で「そばに居て」の意味です。それは「もっとこっちに来て」という風にただ女性と男性の愛し合うような意味ではなく、(フレグランス・スペシャリストがジャック・キャヴァリエから直接お聞きした話では)〝お母さんが赤ちゃんを抱いているイメージ〟です。

つまりは、大切な人に守られている、抱きしめられている時に感じる人肌の温かさや愛情、〝安らぎ〟〝無償の愛〟を香りにしたものなのです。

それはオレンジ・ブロッサムとタヒチ産バニラをベースに、スイーツの風味を加え、オリエンタルというカテゴリーをリニューアルしたこの香りに、それだけでは終わらない、赤ちゃんのミルクのような安心感をどことなく覚えさせるのです。

「レ パルファン ルイ ヴィトン」全七作品を通してのテーマは〝人生の旅、そして、感情(エモーション)の旅〟です。

最初に生み出された香り。それは、人生という旅に無くては行き先を見失ってしまう「羅針盤=ローズ デ ヴァン」。その旅は「乱気流=タービュランス」に巻き込まれようとも大切な物はあなたの「心の中のハードトランク=ダン ラ ポー」に入れて、いつでも開ける度に思い起こし、何度も何度も「幸せな瞬間=アポジェ」を感じる事ができるでしょう。

そして、五つ目の香り「コントロモワ」において、この旅があなた一人だけの物ではなく、大切な人が〝そばに居て〟心がより豊かに温かくなり、〝愛を奏でるバニラ〟に包み込まれるのです。それは「アポジェ」で感じた〝人生で最高に幸せな瞬間〟の余韻も感じさせてくれるのです。

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キャヴァリエ氏の奥様のこの香りの逸話

©LOUIS VUITTON

この香りにまつわる面白い逸話があります。ジャック・キャヴァリエは、ルイ・ヴィトンの最初のコレクションを生み出すにあたり、奥様に調香段階に分けて試作品を、日常生活で身に纏ってもらい、テストしてもらっていました。

そんなある日、『レ フォンテーヌ パルフュメ』で、上司であるルイ・ヴィトンの会長マイケル・バークが来ており、ミーティングをしていた時、着信がありました。

奥様からの着信でした。もちろんスルーしていたのですが、5回6回と続き、〝これは余程の緊急事態では!〟と考え、会長に断りを入れ、着信を取ったのでした。

すると奥様は激昂しながら、〝あなたに言われてスーパーマーケットに行ったの!〟〝はい、それで?〟〝2人の女性に呼び止められ、何の香水をつけているのかと聞かれました!〟フランスでは他人の香水について尋ねる事は滅多にないことです。だから、興奮して奥様はキャヴァリエに電話したのでした。

このやり取りを聞いていたマイケル・バークはすっかり興奮し、〝つけていた香りを私に嗅がせてください〟とキャヴァリエに頼んだのでした。その香りこそが「コントロモワ」でした。

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近づけば近づくほど愛してしまうバニラの香り

©LOUIS VUITTON

私は、着用者の首にかぶりつきたくなる香りを作りたかった。

ジャック・キャヴァリエ

恋人と別れ、仕事に疲れ、新しい自分を探して、そんな色々な理由で旅に出ていた二人の女性と男性が、旅先で出会い、恋に落ちる瞬間。ひとつだけ確かなこと。それはこの恋は、理性ではなく、本能に基づいて生まれたものだということです。

しかし、そんな言葉以上に「コントロモワ」の香りの背景には〝愛する人がそばにいる安心感〟や、〝人肌に触れている時のぬくもり〟というまさに家族愛や一番近くに大切な人がいるという心の安息、言葉や形では現せない『無償の愛』を感じさせます。

そんな『無償の愛』を包み込むフレッシュ・バニラの香り「コントロモワ」は、〝かつてないほど光に包まれたバニラ〟を生み出すというテーマで生み出された香りです。つまりは、バニラの香りがいまだ到達したことのなかった、樹脂系、スパイス系ではないバニラの場所へと誘う〝新しいバニラの旅〟でもあるのです。

もうひとつ別の視点でこの香りを見ると、ルイ・ヴィトン独自の二酸化炭素抽出法で抽出されたフルーティー、フローラル、スパイシーといった色々な側面を持つグラース産のメイローズが、三種類のバニラと遭遇し、ひとつになった瞬間、その背後にオレンジ(ネロリとオレンジ・ブロッサム)の存在がちらりと見えたというミステリアスな側面もある香りなのです。

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多くの愛を経験し、たどり着いたあなたの肌

©LOUIS VUITTON

この香りのために三種類の天然バニラの香料が使用されています。特にマダガスカル産バニラはバニリンの含有量が最も高く芳醇な甘さが特徴です(世界の80%のブルボンバニラはマダガスカル産)。

  1. マダガスカル産バニラ・インフュージョン(非常にアニマリックなバニラ)
  2. マダガスカル産バニラ・エッセンス(甘くてグルマン)
  3. タヒチ産バニラ(最高級バニラ、別名ブラックゴールド、官能的でダーティ)

雪がひらひらと舞い落ちるようにレモンとベルガモットがひんやりとバニラを迎え入れるようにしてこの香りははじまります。ハーブとメイローズが静かに祝福するように厳かな香りを最初から最後まで奏でていきます。

三種類のバニラ(12%のタヒチ産バニラが中心となり)がブレンドされ、クリーミーさ、スモーキーさ、スパイシーさといった様々なバニラの側面が照らし出されてゆきます。それらを引き立てていくのがアンブレットシードとココアです。

このアンブレットシードは二酸化炭素で抽出された非常に高価な植物性ムスクです。このムスクは、洋ナシの香りがアクセントとなる、パウダリーかつフルーティーな香りが特徴です。

やがて、オレンジ・ブロッサムとマグノリアが、バニラに恋する気持ちを教えていくように、より浮遊するようなエアリーな輝きを与えてゆきます。さらに、クリーミーなバニラの熱気を、冷ましていくようにリキュールのような洋ナシが爽やかな香りの余韻を運んでくれます。

ここに密やかに情熱的なバニラが生み出されるのです。そこには熟成した円やかなバニラがあるのではなく、新鮮な花を連想させるバニラがあるのです。

この香りのバニラは、女性です。この女性は、多くの恋を経験し、最後に、あなたの肌と同化していくのです。だからこそ「コントロモワ」は男性の肌との相性も抜群なのです。なぜなら、男性の肌の上では、〝愛の言葉を求めるバニラ〟に様変わりする訳なのですから。

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〝もっとも愛に近づいたムスク〟に包まれるバニラ

ニオイトロロアオイの種子=アンブレットシード。

ケーキを連想させるタヒチのバニラ、料理の風味を強調するマダガスカルのバニラ、その二つのバニラをこの香りの中に入れました。そして、バニラの香りに高貴さを与えると、レザーのアクセントがつき、より動物的になります。

この香りは、気だるげなコンポジションでありながら、ほんの少し倒錯的です。バニラも、それに寄り添う愛らしいオレンジブロッサムも、まさかそんなことはないだろうと思うだろう。

しかし、この香りもまた、磁気的な官能性を示している。混乱させるが、メッセージは明確だ。〝欲望のために、そして欲望されるために生きる女性のためのフレグランスである。

ジャック・キャヴァリエ

「コントロモワ」のバニラから私は何よりも『無償の愛』を感じます。それはバニラと二つの天然香料とのシンフォニーにより生み出されていると言っても過言ではありません。

ひとつは、「ローズ デ ヴァン」でも使用していた二酸化炭素抽出されたグラース産のメイローズが使用されているこ点です。それはジャック・キャヴァリエが2~3歳の頃に、自分の顔にお母様が毎朝塗ってくれていたローズウォーターの香りを想い起こさせ、お母様との愛情に満ちた関係性を連想させます。つまりは、誰もが温かい手に抱きしめられた一番初めの記憶です。

「コントロモワ」を香ってローズがあからさまに顔を出してくるわけではないのですが、記憶の彼方に誰もが持つ母との想い出のように、ローズの香りがひっそりと佇んでいるような構成なのかなと私は考えます。

そして、もうひとつは、二酸化炭素抽出されたアンブレットシードが使われているということです。つまりこの香りは「ジャックの魔法のムスク」が到達した2016年の時点で、〝もっとも愛に近づいたムスク〟が使用されているという点です。

希少な天然香料がいくつも重なり合い「そばに居て」という名を生み出しているように私には感じ取れます。この香りは主人公はあくまでバニラなのですが、私にはメイローズ、オレンジ・ブロッサムやアンブレットシードがそのバニラの良さを引き立たせ、そして、包み込むような安心感を与えているように思えます。

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〝真っ白な粉雪〟を想わせる香り

この香りからフレグランス・スペシャリスト様がイメージする写真。

ここまでの香りの説明は、カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様の協力により生み出された賜物です。そして、以後の文章は、スペシャリスト様の言葉が生み出す熱量を損なわないように、そのまままるごと掲載させていただきます。

私が「コントロモワ」をはじめて嗅いだときに呼び覚まされた香水は、グタールの「ヴァニーユ エキスキーズ」でした。共に〝真っ白な粉雪〟の軽やかで、冷たくも温かい気持ちにさせてくれる香りの雰囲気があります。

ちなみに私がルイ・ヴィトンの製品の中で最も〝雪〟を感じたのは、すでに廃盤になっているフレグランスキャンドル(『外は雪が降っている』という意味の)「ドゥオール イル ネージュ」です。

一方、フレグランスの中で〝雪〟を感じさせるのがこの香りなのです。私にとって、「コントロモワ」はバニラの甘い香りというよりは、ふんわりと街なかで舞い散る粉雪のような軽やかさを持った香りです。

ちなみにゲランの「ドゥーブル ヴァニーユ」と比較すると、前者は繊細でしっとりとしたイメージ。一方こちらは軽やかでパウダースノウのような細やかなパウダリーさを持っているイメージです。

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「コントロモワ」を男性が纏うと・・・


私は、「コントロモワ」のバニラは男性にとても相性が良いと考えます。

もちろん女性が纏うと軽やかな甘さがふわふわとその方の周りを漂いますが、男性が纏った時の印象は、優しく見守ってくれるような温かさと、そばに居て体温を感じるような… さりげないぬくもり、さりげない包容力、さりげない優しさを感じさせてくれます。

そして、〝記憶のどこかに置いてきた香り〟のように、懐かしさを感じてそばに居て欲しいと女性に思わせる香りとなるのです。

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「コントロモワ」のおすすめレイヤリング

©LOUIS VUITTON

私は、調香師たちが苦心して生み出したものを重ねづけさせるという精神が理解できません。それはピカソの絵を買って、その上から絵を描くようなものです。混ぜて良くなるという発想自体が不愉快です。

フレデリック・マル

ジョー マローン ロンドントム フォード、ゲランの「アクア アレゴリア」など重ね付けが提唱されている香水以外は、ひとつで香りが完成されているのが本来の香水の魅力であり、ルイ・ヴィトンの香水も基本的にひとつでその世界観が表現できるように作られています。

更にいうと、通常香水におけるレイヤリングとは、シャワージェル→ボディクリーム→フレグランスの重ね付けの流れのことを指します。

なので私も軽々しくお客様にレイヤリングをおすすめする事はありません。そういったことを全てお伝えさせて頂いた上で常連客様にだけ提案しているレイヤリングをここに特別公開させて頂きます。

「コントロモワ」のレイヤリングは、この香りのどこを引き立たせるかによっておすすめのレイヤリングが変わります。私個人はこの香りから南国で漂う甘いお花の香りや温かく心地よい空気を感じるので、意外と「サン ソング」や「オン ザ ビーチ」との相性が良いと感じています。

その他の『パルファン ド コローニュ』に比べてなぜこの2種類なのかと言うと、どちらにもネロリ(「サン ソング」に関してはオレンジ・ブロッサムも)が大きな役割を果たしており、〝心地よさ〟や〝緊張して疲れた心を解きほぐして〟くれます。

特に自由に旅ができない現代に、束の間の逃避行で気持ちをリフレッシュできる香りになるのではないかと思います(そう考えると「カリフォルニア ドリーム」との相性も良さそうです)。

私的には、「ローズ デ ヴァン」と合わせるのが大好きです。あまり意識していなかったのですが「コントロモワ」 のローズの部分が引き立つのでしょう。「ローズ デ ヴァン」のベース(ラストノートとは異なります)にほのかなウッディを感じるのですが、そのウッディ調を「コントロモワ」がよりフローラルでムスキーなものに変えてくれるような香り方になります。

クール バタン」ほどパウダリーが強く出ず、「スペル オン ユー」ほどキラキラ明るい香りではなく、大人の女性が持つ余裕と可愛らしさ、〝愛らしさ〟のような印象を与えてくれるのが「ローズ デ ヴァン」と「コントロモワ」のレイヤリングだと思います。

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香水データ

香水名:コントロモワ
原名:Contre Moi
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:100ml/38,500円、200ml/53,900円


トップノート:ベルガモット、レモン、ハーバルノート
ミドルノート:マグノリア、オレンジ・ブロッサム、洋ナシ、グラース産メイローズ
ラストノート:アンブレットシード、ビターココア、タヒチ産バニラ、マダガスカル産バニラ