オードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーン44 『戦争と平和』2(2ページ)

    作品名:戦争と平和 War and Peace (1956)
    監督:キング・ヴィダー
    衣装:マリア・デ・マッテイス
    出演者:オードリー・ヘプバーン/アニタ・エクバーグ/ヘンリー・フォンダ/メル・ファーラー/ヴィットリオ・ガスマン/ハーバート・ロム/ジェレミー・ブレット



    1805年から1813年にわたる〝戦争と恋愛〟の物語。

    ヘンリー・フォンダとオードリー・ヘプバーン。24歳の年の差。

    最も有名な本作のアイコニック・フォト。

    「トルストイは、ナターシャとピエールの間に恋愛感情があることを読者に伝えるのに250ページを費やした」と、プロデューサーのデ・ラウレンティスは語っていました。そして、監督のキング・ヴィダー(1894-1982)は、結婚が決まったピエールに「いいわね、アタシも大人になったらあんな風(エレーナみたい)になりたいわ」と薄っぺらな胸を張るワンシーンで、その250ページ分を集約したのでした。

    ジェニファー・ジョーンズ主演の『白昼の決闘』(1946)を監督したキング・ヴィダーこそが、レフ・トルストイが1863年から7年間かけて執筆した2000ページ150万語にも及ぶ歴史的な大作小説を僅か一ヶ月で脚本にした人だったのです。



    オードリー・ヘプバーン専属のメイクアップ・アーティスト

    ボンネットもさらりと被りこなすオードリー。

    よく見るとバイカラーのリボンがついたボンネット。

    このデイドレスは、帝政ロシア時代風というよりは「大草原の小さな家」風です。

    ドレスの全体図。逆三角形のフォルムが美しい。

    ファッション・モデルのようなオードリーのメイク直し。

    ナターシャ・ルック2 ペールイエロー・ワンピース
    • ボンネット、あずき色と水色のリボン
    • ペールイエローのワンピース
    • 腰にあずき色のサッシュベルト
    • ローヒールパンプス

    オードリーは美しい骨格の持ち主だったので、顔を引き立てるのに細工する必要はあまりなかった。ただし、彼女は顎の線が力強かったので、わたしはこめかみを強調することによってそれを和らげた。そして、濃い眉毛はいつも薄くしなくてはならなかった。一緒に新しい映画の仕事をするたびに、前の映画よりも少しずつ眉毛を薄くするようにしたが、やりすぎないように注意した。なぜなら、彼女のような顔には少し濃い目の眉毛が必要だったからです。

    アルベルト・デ・ロッシ

    オードリー・ヘプバーンは、本作出演の条件として、ヘアメイクにはアルベルトとグラツィアのデ・ロッシ夫妻を要求しました。『ローマの休日』(1953)におけるアルベルトの仕事っぷりにすっかり感心してのことでした。

    オードリーという女優が、〝永遠のファッション・アイコン〟として輝き続けている理由は、彼女自身がコンプレックスの塊だったところにあります。恐らく彼女自身が望んでいた肉体は、身長は165cmくらい(実際は少なく見積もっても170cm)。歯並びが良くて、エラが張っていなくて、首はもう少し短め、せめて胸の谷間を無理なく作れる胸の大きさと、より小さな足だったのでしょう。

    しかし、そのコンプレックスを克服する作業が、彼女に個性と、自信のなさから生まれる謙虚さを生み。いざ、完璧な自分を生み出した瞬間には、他を寄せ付けない白鳥が舞うが如く〝神々しい美〟を生み出させたのでした。

    オードリーの永遠の美は、〝私って綺麗でしょ!もっと見て!〟という現代的な安っぽいヴィクトリアズ・シークレットのパンティ・レベルの美とは対極に位置したところに存在する美なのです。



    〝美の極意〟とは、一歩前進ではなく、一歩引くこと。

    ナポレオン・ジャケットの圧倒的な輝きの隣に、グレーの地味なドレスで一歩引いて立つオードリーの美的直観力の高さ。

    オードリーはウエストがないので、ハイウエストのドレスがとても似合います。

    ヘンリー・フォンダの熱弁を静かに拝聴するオードリー。

    ヘアスタイルのテストショット。

    ナターシャ・ルック3 グレーデイドレス
    • ブルーグレーのワンピース、スタンドアウェーカラー、首元と袖に白のレース
    • ネイビーのローヒールパンプス

    13歳という設定のオードリーが、さすがに13歳には見えないのですが、十分に若々しく見えるのは、そのヘアスタイル以上に、一切アクセサリーを付けていないことからでしょう。

    オードリーがどの作品においても教えてくれる〝モードの極意=美の極意〟とは、決して、自慢せず、一歩引いたエレガンスを演出することが、結果的に、一歩前に押し出されたエレガンスになるということです。

    それは、昨今のSNSにおけるうんざりする風潮の一つである〝私をもっと褒めて!〟的な、自己愛たっぷりにスタイル&ファッション披露することが(時にはわかり易く自信のなさを装ったりもする)、いかに内面の安っぽさを披露しているに過ぎないのかということも教えてくれます。結局は、そんなSNSを多用して自分を発信している芸能人は、永遠に忘れ去られる存在になる切符を手に入れたも同然であり、一時、低レベルな物真似族の賛同を得ることは出来ても、ファッション・アイコンには決してなり得ないのです。

    オードリー・ヘプバーンが多くの女性にとって、益々タイムレスな輝きを放っているのは、そういった〝自慢することが美〟と勘違いしている浅ましきSNS族に対するカウンター・アイコンとしての役割も担っているからとも言えます。



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