彼女こそが本作の筆頭ボンドガールでした。
元々女優としての野心がほとんどなかった若林映子様は、1965年に再婚しており、この作品を最後に女優を引退する予定でした。
本作の前にも1959年にロモロ・マルチェリーニ監督のイタリア映画「レ・オリエンターレ」、1961年にルイジ・フィリッポ・ダミーコ監督のイタリア映画「Akiko」、さらに同年、フランツ・ピーター・ウィート監督の西ドイツ映画「遥かなる熱風」においては、『地獄に堕ちた勇者ども』のヘルムート・グリームと共演しており、当時の日本人女優としては珍しいほどに海外撮影の経験が豊富な女優でした。
だからこそ当初、浜美枝様が演じたキッシー鈴木役を彼女が演じる予定でした。そして、二人は撮影前に三ヶ月間英国でプライベートレッスンを受けることになるのでした。しかし、美枝様の英語力が上達しなかったため、英語での意思の疎通が求められる公安エージェント・スキ役を演じることになり、役名をアキへと改めることになりました。
つまるところ、この作品には、メインのボンドガールは3名おり、そのうちの2名は日本人女優なのですが、タイトルとエンディングにおける映子様の名前の位置は、ショーン・コネリーに次ぐ2番目なのです。その事実が、彼女こそが、本作における正式な5代目ボンドガールということを示しています。
日本人女性の魅力。それは間違いなくストレートの黒髪。
ストレートの黒髪姿にサブリナパンツで軽やかに走るどこかボーイッシュな映子様。
サックスカラーのワンピースで地下道を走る姿においてもそうだったのですが、軽やかな身の裁きは、身体能力の高さと物腰の優雅さを感じさせます。
オードリー・ヘプバーンもグレース・ケリーもブリジット・バルドー、アンナ・カリーナもそうなのですが、美しい女性は、身体能力が高く、走れる女性なのです。
アキ・ルック2
パンツルック
- グレイベージュのオーバーサイズのボーイフレンド・セーター
- ブルーネイビーのサブリナパンツ
- 白のテニスシューズ

神戸港で撮影されたアクション・シーン。

映子様は、中盤まで日本列島を股にかけての大活躍を見せます。

彼女こそ、元祖スパイを愛したスパイです。
アキ・ルック3
ピンクドレス
- ピンクのシフトドレス(ローンドレス)。ハイカラー、7分丈のベルスリーブ、Wパネルスカート
- ベージュのハイヒールパンプス

日本の庭園に、相性の良い爽やかなピンクワンピ。ウイスキーはもちろんサントリー・オールド(タイアップしている可能性大)。

60年代の東宝映画にやたら登場するピンク。それをトーホーピンクと呼ぶ。

首の長い映子様に合わせた美しいネックライン。

パンプスの形状がよく分かる写真。

コクーンシルエットのピンクワンピース。

このワンピースの横からのシルエットが分かる貴重な写真。

談笑するショーン・コネリーと若林映子様。

妙にハイテンションなショーン・コネリー。

そして、真ん中に丹波哲郎。
アキ・ルック4
着物
- 鯱の様なヘアスタイル
- ネイビーに縁取りの花柄。全体的に薄いネイビーの着物。金の帯

映子様の首の長さが着物姿を映えさせます。

当時、ショーン・コネリーは「着物姿の日本女性はセクシーじゃない」とコメントしていました。

すごい絵です。タンバとボンドとヘリと姫路城。

1960年代の海外映画としては驚きのしっかりした着物の着付け。

バックスタイルも美しい。

明らかに映子様と話しているときのコネリーは、映画の中よりも生き生きしている。
作品データ
作品名:007は二度死ぬ You Only Live Twice(1967)
監督:ルイス・ギルバート
衣装:アイリーン・サリバン
出演者:ショーン・コネリー/若林映子/浜美枝/丹波哲郎/カリン・ドール/ドナルド・プレザンス
- 【007は二度死ぬ】ジェームズ・ボンド日本上陸
- 『007は二度死ぬ』Vol.1|日本に来たジェームズ・ボンド=ショーン・コネリー
- 『007は二度死ぬ』Vol.2|ショーン・コネリーとトヨタと姫路城
- 『007は二度死ぬ』Vol.3|丹波哲郎とドナルド・プレザンス
- 『007は二度死ぬ』Vol.4|若林映子・日本人ボンドガール第一号
- 『007は二度死ぬ』Vol.5|若林映子とショーン・コネリー
- 『007は二度死ぬ』Vol.6|若林映子と「60年代のスウィンギング・ニッポン」
- 『007は二度死ぬ』Vol.7|浜美枝・もう一人の日本人ボンドガール第一号
- 『007は二度死ぬ』Vol.8|竹取姫のような浜美枝様
- 『007は二度死ぬ』Vol.9|カリン・ドール、第三のボンドガール
- 『007は二度死ぬ』Vol.10|ナンシー・シナトラの神曲