ボンド・ガール

カリン・ドール/ナンシー・シナトラ 『007は二度死ぬ』5(2ページ)

    作品名:007は二度死ぬ You Only Live Twice(1967)
    監督:ルイス・ギルバート
    衣装:アイリーン・サリバン
    出演者:ショーン・コネリー/若林映子/浜美枝/丹波哲郎/カリン・ドール/ドナルド・プレザンス

    60年代のスインギング・アイコン、ナンシー・シナトラ。

    本作の主題歌「ユー・オンリー・リヴ・トゥワイス」ナンシー・シナトラ

    「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」リトル・ペギー・マーチ、1963年。

    「ジョニー・エンジェル」シェリー・フェブレー、1962年。

    ナンシー・シナトラ(1940-)の唄う秀逸なボンド・ムービーのタイトル・ソング。この音色の哀愁は、上記の二曲に共通する響きがあります。それはつまり、オールディーズの王道の響きであり、そんな音色の曲をオールディーズ・スタイルとは全く逆のゴーゴー・スタイルのナンシーが歌っているところが面白いのです。しかも、それが60年代の日本の情緒に見事にマッチしているところがジョン・バリーの天才性であるとしか言いようがありません。さすが、当時、ジェーン・バーキンの旦那であるだけあります。

    これぞゴーゴー・スタイル。膝下のブーツにワンピースミニ。

    作曲者のジョン・バリー(この時期の妻はジェーン・バーキン)とナンシー・シナトラ。

    1967年5月2日、ロンドンにて、60人編成のオーケストラと共に20時間かけて収録にのぞみました。不思議なメロディに対するレコーディングに苦戦したナンシーは、早々に、スタジオから去ろうとしたほどでした。何とか頑張って歌い続けるのでしたが、ジョン・バリーに求められた歌声に対して「こんな声じゃ、ミニーマウスみたいだわ」とクレームを出しながらの険悪なムードでのレコーディングでした。そして、バリーは完成した25テイクのパートを繋ぎ合わせてこの曲を作り上げたのでした。


    元テイク・ザットのロビー・ウィリアムズの「ミレニアム」(全英No.1、1998年)は、本曲をサンプリングしている。

    当初ジョン・バリーはこの曲をアレサ・フランクリンに歌ってもらいたかった。(写真はナンシー・シナトラ)

    バリーはこの曲に、「なにかミステリアスなムード」が欲しかった。

    しかし、プロデューサーのアルバート・ブロッコリは、友人のフランク・シナトラに唄ってもらいたかったのだが、娘を紹介され、「にくい貴方」が気に入っていたブロッコリは起用を決めたのである。(元々、ナンシーにお願いしたかったとも言われている)

    こんなマネーペニーが見たかった!

    初登場する英国海軍婦人部隊の制服を着るマネーペニー。当時39歳。

    マネーペニーとボンドのお約束の会話が存在しなければ、ボンドムービーではありません。

    オープニングの中国人ボンドガール。

    美人という程でもない平均的なルックスのツァイ・チン。

    当時クリストファー・リー(=スカラマンガ)のフー・マンチュー・シリーズにおいて、妹のリン・タンを演じていた。

    ボンドガールの後、彼女は、京劇の伝説的スターの〝非業の死を遂げた父〟の跡を継ぐように、演劇に身を捧げます。

    イギリスーアメリカー中国と股にかけて活躍するリアル・ボンドのような女性です。

    「中国の女性は味が違う」というジェームズ・ボンドの第一声からはじまるオープニング。そこでボンドが二度死ぬ工作をする中国系の諜報部員リンを演じるツァイ・チン(1936-)は、ロンドンの王立演劇学校出身(中国人初の学生)という本格派の女優です。後にダニエル・クレイグの『007 カジノ・ロワイヤル』において、再度ボンドムービーに出演しています。

    父親の周信芳(1895-1975)は上海京劇の伝説的トップスターであり、解放後の中国において梅蘭芳と並ぶ京劇界の二台巨星と言われました。しかし、この撮影当時に父親は文化大革命により紅衛兵に迫害されている最中でした(のちに1975年迫害死した)。ツァイ・チン自身、上海で、中国の植民地化、日本の侵略、共産化までの激動の歴史を目撃しており、まさに激動の20世紀の中国史を体感した女性でした。1972年には、イギリスのドキュメンタリー・ドラマにおいて、文化大革命で父親のように迫害されて殺された劉少奇の妻・王光美を演じて、今までのステレオタイプなアジア人女性役からの脱却に成功しました。

    1970年代にハーバード大学でシェイクスピアの研究を始め、やがて、文化革命後の改革開放の中国において、ドラマの監督として招聘されるに至ります。そして、1993年『ジョイ・ラック・クラブ』においてキャリアの絶頂に達します。以上の情報を知った上で、このオープニングにおける彼女の僅かな出番を見ると感慨深いものがあります。



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