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【キリアン】テイスト オブ ヘブン(カリス・ベッカー)

カリス・ベッカー
©Kilian
カリス・ベッカーキリアンブランド調香師香りの美学
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テイスト オブ ヘブン

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:A Taste of Heaven
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売

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天国の香りは、みんなに売れない香り

©Kilian

この香りは、私自身の為に作った香りなのです。まさにセクシーさとシックさが奇跡的に融合した香りです。この香りのアイデアは、何年か前にガールフレンドがいつもつけていたカルバン・クラインの「オブセッション」から得たものです。ドライダウンすると、パチョリ、バニラ、ダークウッド、アンバーが出てくるのです。それは私にアブサンを連想させました。

しかし、この香りは、私の商品の中で最も売れていないもののひとつなんです。つまり、私の香りは大衆的ではないんです。

キリアン・ヘネシー

キリアン・ヘネシーは2007年10月に「バイ・キリアン」(現在は「キリアン」)という名でブランド創業するにあたり、6作品からなるコレクション「ルーヴル ノワール —愛が描く甘い誘惑の世界—」を発表しました。このコレクションは、三つのテーマに分けられています。

テイスト オブ ヘブン(楽園の味)」には「アブサン ヴェルテ(緑のアブサン)」という副題がついています。Artificial paradises(人工の楽園、ボードレールの詩より)のテーマで生み出された香水です。

人工の楽園とは、ドラッグ(阿片など)によって人為的に到達できる〝理想の世界〟のことです。男らしさはあるが、女性も身に纏える香水です。一言で表すならpain(苦)です。

お茶の香りを作る天才であるカリス・ベッカーにより調香されました。彼女が創造したはじめてのお酒の香りですが、日本では未発売の香りです。フゼアでありながら、世の中にあふれかえっているフゼアとは一線を画す香りです。

日本で手に入るラルチザンの「フー アブサン」、ナーゾマットの「アブサン」と比較しても、より本物のアブサンに近い香りと言えます。

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さぁ、ガラスに注ぎ込まれたアブサンを飲み干すのだ!

©Kilian

「楽園の味=天国の味」という名のこの香りは、カラブリア産のベルガモットが爆音を響かせ現れ、すぐに去ってゆき、グリーンかつカンファーの効いたアロマティックでありながら蜂蜜のように甘いミステリアスなラベンダーの咆哮(まさにアニマリック!)からはじまります。

このラベンダーのミステリアスさは、ラベンダー・バレーム・オイルとラバンジン・アブリアリス、ラバンジン・グリーン・アブソリュート、ラバンジン・グリーン・コンクリートという4種類のラベンダーがブレンドされ生み出されています。

色々なラベンダーの側面が万華鏡のように変化していきます。そして、ゼラニウムがミントのようなローズィーな側面を加えています。

すぐに薬のような苦みのある緑の液体が注ぎ込まれてゆきます。その液体の名はアブサンです。ラムシュタインがオープニングで火炎放射器を吹く映画『トリプルX』(2002)で登場する緑の液体です。そして、オレンジフラワーが甘く白い花を咲かせます。

やがて、アブサンが減退し、クリーミーなバニラとトンカビーンが黄金色の輝きを放ちながら注ぎ込まれ、香り全体が円やかになってゆきます。しかし、もうすぐで完全なグルマンになるかというところで、アーシィーなオークモスとパチョリが、フゼアとオリエンタルの境界線上で、回転木馬のように香り全体を回転させます。

廻りまわる中、アブサンが再び息を吹き返し、ラベンダーバニラと渾然一体となり、アブサンの入ったグラスを片手に物憂げな気分に浸るような余韻に包まれてゆきます。

ゲランの「ジッキー」やキャロンの「プール アン オム」と比較される香りです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「テイスト オブ ヘブン」を「ラベンダーバニラ」と呼び、「最初に発表した5つの香水のうち、4つまでが優秀なカリス・ベッカー(ジャドールビヨンド パラダイスなどを作った調香師)によって調香されている。これはよい知らせであると同時に、ビッグファイブ(大手香料会社5社)で働いている調香師たちが、いかに普段の仕事に不満を感じているかということも示している。報酬が少なくても小規模な会社のために働くことによって、重圧のかかる日々の仕事から一時的に逃げ出すのだ。」

「徹底的にバニラとラベンダーそのものの香りで、最高級の原材料をふんだんに使っている(焦げた砂糖のようなヘリクリサムノートのラベンダーアブソリュートで、可憐な黄緑色)。ワームウッド(ニガヨモギ)の香りがアクセントとして効いており、ドライダウンは健康的なオークモスだ。もしあなたが、キャロンの「プール アン オム」が好きで、けれどももう少し濃厚で複雑な強さがほしいと思っているのならば、この香水がぴったりだ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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緑の妖精=アブサンの〝死の天使〟伝説

アルベール・メニャン『緑色のミューズ』(1895年)

ヴィクトル・オリヴァ『アブサンを飲む男』(1901年)

飲みはじめは普通の酒と変わりない。しかし、しばらく飲み続けると、しだいにモンスターのような、おぞましいものが見えはじめる。そして、これに耐えたら、最終段階にたどり着くのです。そこでは、見たいもの、素晴らしい好奇心をそそるものが見ることができる。

オスカー・ワイルド

この緑の液体(ストレートで飲むことはまずない)に、水を混ぜると水晶玉の中で精霊が踊っているようなオパールの質感が生まれることから「緑の妖精=the green fairy( la fee verte)」と呼ばれるアブサン。

スプーンの上に角砂糖を置き、角砂糖がスプーンで溶けるまで水を垂らすという飲み方もあることから、独特な世界観を持つリキュールとして今も世界中で根強い愛好家を持ちます。

悪魔が発明した液体とも、生命の霊薬とも言われたアブサンは、18世紀後半にスイスで誕生した薬草系リキュールの一つです。ニガヨモギ、アニス、ウイキョウなどを中心に複数のハーブ、スパイスが主成分です。アルコール度数が高くほとんどが45%~80%のものです。

19世紀にフランスの芸術家たちに愛飲され、オスカー・ワイルドポール・ヴェルレーヌを殺し、ロートレックゴッホを狂気に陥れたこの液体により、多くの男たちが家族を自らの手で崩壊させ、貞淑なるうら若き乙女たちを梅毒を持つ売春婦に変えてしまいました。

ニガヨモギ(ワームウッド)の香味成分であるツジョンにより幻覚などの向精神作用が引き起こされるとされ、スイスでは1910年~2005年にかけて禁止されました(フランスでは1915年~1988年の間)。ちなみにヨハネの黙示録にはワームウッドという死の天使が登場します。

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香水データ

香水名:テイスト オブ ヘブン
原名:A Taste of Heaven
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売


シングルノート:アフリカ産オレンジフラワー、ゼラニウム、ベルガモット、ローズ、ニガヨモギ、ラベンダー、パチョリ、オークモス、アンバー、バニラ、トンカビーン、コスタス

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