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【エルメス】モンスーンの庭(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
©Hermès
エルメス
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モンスーンの庭

原名:Un Jardin Apres la Mousson
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/19,580円

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感想(61件)

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感覚を研ぎ澄まし、鼻ではなく、肌で自然を読む

©Hermès

インドには、さまざまな色彩、香り、音に満ち溢れています。それはまさにカオスです。調香師を職業とする私でさえも混乱させられるくらいです。そして、それがインドの魅力でもあるのです。

ジャン=クロード・エレナ

エルメスの専属調香師ジャン=クロード・エレナは、ポール・セザンヌの「感覚を研ぎ澄まし、自然を読む」という言葉を念頭に『庭園』シリーズを創造しています。そんな彼の手による「地中海の庭」「ナイルの庭」に続く、エルメスの『庭園』シリーズ第三弾「モンスーンの庭」が、2008年に発表されました。300回もの試作を経て、僅か30種類の原料により生み出された香りです。

ちなみに、エレナは「テール ドゥ エルメス」(2006)の成功もあり、僅か4年間で、就任前の3倍の売り上げをエルメスにもたらしていました。

それまでの二作品の着想源のアフリカ大陸から大移動し、今作は、エルメスの2008年の年間テーマのインド(Fantaisies Indiennes)に合わせ、ユーラシア大陸の心臓部であるかの地をテーマにした香りとなりました。

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ジャン=クロード・エレナの『ケララの旅』

©Onmanorama

クマラコム レイク リゾート

クマラコム レイク リゾート

「モンスーンの庭」を調香するためにエレナは、2007年にはじめて〝亜大陸のヴェネツィア〟と呼ばれるケララ州を訪れました。そして、6月の第一週にやって来るモンスーンを実際に体験したのでした。

アーユルヴェーダ(世界三大伝統医学のひとつ)発祥の地であり、古代ローマ人が〝ブラックゴールド〟と呼んだカルダモンとペッパーを求めやって来るようになってから、世界最大の香辛料の産地となったインドのスパイス貿易の中心だったケララ。観光地としても(特にヨーロッパ人に)人気が高い、年間の平均気温が28度から35度の熱帯海岸性気候の地です。

エレナは、香りを作るために旅をする時に、敬愛するヘミングウェイに倣い何も書き込まれていないモレスキンのノートブックと共に旅に出ます。エレナがこの国に到着してノートに書いたはじめての言葉は、「ここでは、昨日も明日も同じ言葉なんだ」でした。

そして、彼は一週間の滞在中に手渡されたジンジャーを混ぜたライムエードを忘れられませんでした。「とても安っぽい香り」なのに、いざ飲むとその清涼感の素晴らしさに夢中になったのでした。

香りのスケッチが最終段階に入った2008年2月に、エレナは2回目の滞在(10日間)を果たしました。この時はヴェンバナード湖畔にあるクマラコム・レイク・リゾートに滞在しました。

「ジンジャーと水」をベースに、モンスーンの後で、大地が静けさを取り戻していく姿を描き上げたのでした(本当の名前は「モンスーンの後の庭」)。葉の上の水滴や湿り気を帯びた大地など、水を、植物として、<香りで翻訳してみたいという明確な意図で創られた香りです。

ゲランの「アプレロンデ」(にわか雨の後で)と、エレナの敬愛するエドモン・ルドニツカの「ル パルファム ドゥ テレーズ」の影響を強く感じる香りです。

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カンタロープとカヒリ・ジンジャーで描く「雨の後の庭」

カヒリ・ジンジャー

この香りを生み出すときの私の最大の野望は、水がすべての香りを消し去った〝失われた自然の香り〟をどう表現するかでした。

ただ香りを再現するだけでは、調香師とは言えません。香料を使って、自分らしい方法でものがたりを語るとき、初めてそこに香水が生まれるのです。

ジャン=クロード・エレナ

「モンスーンの庭」という名前が誤解を受けやすいのは、天地がひっくり返るようなモンスーンにより、荒れ果てた大地の香りという印象を受けてしまうからでしょう。

しかし、エルメスとエレナが意図していたのは、太陽により奪われたものが、モンスーンにより大地に取り戻され、乾燥した燃えるような風を追い払ったときに現れる、水であふれた世界の自然のよみがえりを香りで表現することでした。

つまり、正確な名称は「太陽に奪われた大地の恵みを取り戻す、モンスーンの後の庭」なのです。

そんな〝水を植物として捉えた〟この香りは、オゾニックなみずみずしいカンタロープ(メロナール)に、ライムとベルガモット、さらに冷たいシトラスのようなカルダモンとジンジャーを中心としたスパイスが注ぎ込まれるようにしてはじまります。そこに挽きたてのブラックペッパーが追加され、すべてが繊細に発泡してゆきます。

再び太陽が蘇えり、カンタロープが失われていく中、ヘンドリックスジンの雨がスコールのように降り注ぎます。そして、生き生きとしたキューカンバーとコリアンダーが、(土臭さや辛味が弱められクリーンな)湿った大地のようなベチバーと溶け合い、ペトリコールの匂いを広がらせてゆきます。

そこにはどこか温い水に包まれてリラックスしているような不思議な浮遊感があります。一方で、鼻先に、乾いた草の香りも感じさせ、雨上がりの湖のほとりにいるような気分にさせられます。

やがて、大地の再生を思わせるカヒリ・ジンジャーが、スパイスとマリンノート(カロンは使用されていないウォーターアコード)のマリアージュを祝福するカリヨンのように厳かなるグリーンな甘さを染み入らせていくのです。まさに乾いた心にうるおいをもたらしてくれる〝大地のカクテル〟のようです。

カンタロープからキューカンバーを経て、カヒリ・ジンジャーが肌の上で開花していく様が実感できるのがこの香りの最大の魅力ともいえます。

ちなみにこの香りは、エルメスのフレグランス史上最大の失敗作と言われています。そのことに関してエレナ自身は、「恐らく、モンスーンというネーミングにも問題があったのでしょう。インドではモンスーンは幸運を意味し、人々は田んぼに水を引くことができ、新しい生活が始まります。しかし、ヨーロッパ人にとってモンスーンとは、大災害を連想させるはずです。モンスーンではなく〝雨の後の庭〟という名にすべきでした」とコメントしています。

ただし、この香りについて決して忘れるべきでないひとつの事実は、マリンノートとスパイスの画期的なコントラストに挑戦したという点です。そして、マリンノートに清潔感ではなく、雨上がりの生命の息吹を生み出させたのでした。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「モンスーンの庭」を「フローラル・ペパー」と呼び、「斬新な「地中海の庭」と、気むずかしい「ナイルの庭」の次に発売された。」「中心のアコードはアイデアがすばらしく、皮膚につけると同時にすべてを味わえて、いちばん楽しめる。メロン、トウガラシ、ドライペッパーの実が、私の鼻に、矛盾を内包したフルーティノートとなって、ただの唐辛子とハバネロ唐辛子が区別できるほどにリアルだ。」

「エレナの技はここではほとんど教育的だ。香りを嗅ぐと、解説用のビデオ映像のように、構成がそれぞれに分かれノートは時間をずらして顔をのぞかせ、フレッシュでみずみずしい効果を繰り出しながらも、ずっと抽象的なままだ。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:モンスーンの庭
原名:Un Jardin Apres la Mousson
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/19,580円


シングルノート:ウォーターノート、カルダモン、コリアンダー、ペッパー、ジンジャー、ベチバー、カヒリ・ジンジャー

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