究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
エルメス

【エルメス】アマゾン(モーリス・モラン)

エルメス
©Hermès
この記事は約5分で読めます。

アマゾン

原名:Amazone
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:モーリス・モラン
発表年:1974年
対象性別:女性
価格:100ml/23,320円

スポンサーリンク

女性にとっての馬=上質な服、バッグ、宝石、車、そして香水。

1989年 ©Hermès

1976年 ©Hermès

「アマゾン」が1977年春に日本にデビューしてから、「アマゾン」の匂いに魅せられた女性の多くを知る。

イランイラン、オークモス、樹木の香りのエッセンスは、シトラス系グリーンノートのユニセックス調の香りで、草原に馳せる颯爽たる乗馬服の女性、その目の輝き、理智に富むまなざし、新しい革の匂い、オートクチュール香水にみられぬ魅力をのぞかせ、その名も、アマゾン、紀元前、アマゾネス女族からとったいかにも現代版に直すと、乗馬婦人という意を含んでいるように、スポーティで、それでいて、キャリアウーマンらしいしたたかさももつ香調が、人気の秘密だろう。

『世界の香水と化粧品物語』平田満男(1982年)

1974年にエルメスより発売された「アマゾン」は、「エルメスの最初のカスタマーは馬でした」という有名なフレーズに基づき、女性と馬の親和性を突き詰めた香りです。エルメス初のフルーティフローラルの香りは、ジボダン社のモーリス・モランにより調香されました。

ギリシア神話に登場する女戦士だけの騎馬部族アマゾーン=アマゾネスからインスパイアされた香りです。つまりこの香りは、女性が社会的にどんどん活躍するようになっていった70年代当時、彼女達=『新しい女戦士たち』にとっての馬=上質な服、バッグ、宝石、車、ハイスペックな恋人、そういったものを香水に投影しています。

スポンサーリンク

エルメスのフルーツは、熟することがないのです。

1982年 ©Hermès

1976年 ©Hermès

1981年 ©Hermès

エルメスから女性に捧げた祝砲であるかのように、シトラスと共に弾け出すラズベリーをアルデハイドが泡立てるようにしてこの香りははじまります。

すぐにブラックカラントとガルバナムが、酔わせるようなグリーンフルーティの閃光により、キリっとしたビターな空気を広がらせてゆきます。爽やかですが、ここまで甘い囁きは一切なしです。

そして、頭の上を女性の操縦士が乗る戦闘機が駆け抜けていくような勇ましさと共に、オークモスのシャワーが天上から降り撒かれるのです。

〝タフでクールで優しい女性=ひそやかに燃える女〟がそこに現れます。だんだんとスズランとブルガリアン・ローズがスーっと滑らかな甘やかさを加え、エレガントでクールなグリーンフローラルの鎧が全身にフィットするように素肌と一体化していくのです。

やがて、だれよりも情の深い姿を露わにしていくように水仙とヒヤシンスがみずみずしく濡れそぼち、広がるアイリスがジャスミン、イランイランといった花々を満開にさせ、クリーミーに溶かしてゆくのです。

そして、サンダルウッドとベチバーを中心にシダー、アンバーが、なんとか体面を取り繕うようにドライウッディな風で全身を乾かしてくれるのです。

若々しくて颯爽としているブラックカラント×ガルバナムのコンボが、シプレローズのエレガントな伴奏の中で、グリーンフローラルの静かなきらめきに変化していく…濃厚ではなく、馬に乗って駆け抜けていくような優雅な風通しの良さを感じさせる香りです。

都会のアマゾネス。それは白いブラウスが似合うエレガントな佇まいのエルメス美女がコンスタンスを肩掛けし、表参道駅の地下から地上に上り立つロマンティックな瞬間のようです。心の中に情熱を秘め、あからさまにあざとさやセンスの良さをひけらかさない、(流行に流されることはない)〝本物〟に常日頃触れている女性の磨き上げられた〝魂〟のような香りです。


何はともあれ、1974年発売当時、世界中の人々の、このフレグランスに対するイメージはテレンス・ヤング監督の『アマゾネス』(1973)に一点集中したことでしょう。

スポンサーリンク

現行版は、2017年にリニューアルされたもの

©Hermès

ボトルのラベルを後ろから見ると…©Hermès

「たくさんの花々、赤いフルーツと木々の香りが、女性の中の勇ましさと快活さを高めてくれるような香り」とジャン=クロード・エレナが形容したリニューアル版は、よりシトラスが強く、よりクリーミーなフルーティフローラルの甘さ際立つ香りになっています。

1989年に一度リニューアルされ、現行のものは2017年に再度リニューアルされたものです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「上手に作られているが、さっぱり興味のわかないウッディフローラル」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:アマゾン
原名:Amazone
種類:オード・パルファム
ブランド:エルメス
調香師:モーリス・モラン
発表年:1974年
対象性別:女性
価格:100ml/23,320円
公式ホームページ:エルメス


トップノート:マンダリン・オレンジ、カッシア、ガルバナム、ヴァイオレットリーフ、ネロリ、ベルガモット、ブラジル産ローズウッド
ミドルノート:水仙、アイリス、ラズベリー、ジャスミン、ヒヤシンス、スズラン、ブラックカラント、ブルガリアン・ローズ
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、シナモン、オークモス、ベチバー、ネロリ、イランイラン、シダー