1960年代、ダイビング・ルックに人々はときめいた!
オープニングで空を飛んだジェームズ・ボンドは、次にカリブの海深くへと潜ってゆきます。神秘的な熱帯魚や獰猛なサメが登場するエメラルド・ブルーの海をダイビングする姿に、当時の世界中の人々はときめきました。
1960年代とは、陸海空においての大冒険時代だったとも言えます。そしてそのことがこの時代のファッションにも大いなる影響を与えることになりました。
それは冒険家スタイル。宇宙服、飛行服、潜水服が、ファッションに大いなる影響を与えたのでした。
ちなみに18週間の撮影スケジュールのうちの8週間はバハマでのロケでした(1965年3月から5月にかけて)。さらに予算のほぼ半分は、巨大な水中翼船「ディスコ・ヴォランテ」を含むケン・アダムのセットや小道具に費やされました。

1966年1月7日号のLIFE誌の表紙を飾った、ダイビングウェットスーツを着たショーン・コネリーの写真。

やはろ昭和のボンドのイメージと言えば、この壮大な胸毛でしょう。

ダイビングウェットスーツで戦う男。

そして、最後の最後に美女とウェットスーツで空飛ぶボンド。
絶対に欠かせないモノ。

ボンドと言えばタキシードとウォッカ・マティーニと美女。
ボンド・ムービーで必ず登場するファッションの一つが、タキシードです。これは日本人にとって、最も縁の薄いファッションです。多くの男性にとって一生のうち一回着るか着ないかのこのスタイルの格好良さは、「非日常の日常」につきます。
それはまさに、着るだけで、洗練の二文字を肉体に叩き込んでくれる<大人の男>を教えてくれる「着る教材」なのです。
男性が男性のグレードを上げていく国内の旅の地が、京都であるとするならば、それをファッションに当てはめると、それはタキシードなのです。
旅もファッションも、端的に言うなら、全く同じです。「どの道行きで、どんな人たちと交流し、何を見て、何を味わうか?」なのです。それにしても、この作品のボンドのスーツ・スタイルには、前3作から一つの変化が生まれています。
それはこの作品以降、ショーン・コネリーの演じるボンドは、決してポケットチーフを使用しなくなったことでした。
ちなみにカジノのレストランでボンドはドミノと同伴し、ベルーガのキャビアとドン ペリニヨン55年を注文しています(『007/ロシアより愛を込めて』ではテタンジェを飲んでいた)。
ジェームズ・ボンドのファッション7
タキシード・スタイル
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- ミッドナイトブルー・モヘア/ウール混合ディナージャケット。シングル、スリム・ショールカラー、1ボタン、ノーベント、同色のトラウザー
- 黒サテンのバットウィング・スタイルのシルクボウタイ
- 白ストライプ・ドレスシャツ

ボンド・ムービーにカジノは欠かせません。ドミノを黒と白のタキシードの男たちが挟み込んでいます。

タキシードを着て生まれてきたような男。

全身のシルエットも完璧です。
エミリオ・ラルゴのファッション2
ホワイトタキシード
- ホワイトダブル・ディナージャケット、ショールカラー、4つボタン、ノーベント
- ブラックトラウザー
- ホワイト・プリーツ・ドレスシャツ、コットン、2スタッズシャツ
- ホワイトサスペンダー
- ブラック・サテンボウタイ
- ブラックレザーシューズ

美しい海を背景にホワイトタキシードを着るラルゴ。

アイパッチの悪役イメージを作り上げた人。

黒のアイパッチと怖いくらい相性の良い黒い蝶ネクタイ。

どこからどう見ても善人ではなさそうな大物の存在感。

かなり独特な2スタッズシャツ。
エミリオ・ラルゴのファッション3
ブロンズストライプシャツ
- 白地にブロンズストライプ・コットンシャツ、イタリアンカラー(クーパーカラー)、サイドベンツ
- ベージュのリネンパンツ
- ブルーのダービーシューズ

かなりラグジュアリー感のある、ゴールドベージュのトラウザー。

左側の男性のカバナシャツが素敵。

襟はイタリアン・カラーです。

ボンドムービーの悪党に相応しい貫禄があります。
ジェームズ・ボンドのファッション8
リゾート・スタイル
- ロイヤルブルー・キャンプカラーシャツ、マザーオブパールのボタン四つ、両脇にパッチポケット
- 同色のトラウザー
- ブラックレザーのスリッポン・ローファー
- ショートブリムのポークパイ・ハット
- クールレイ「N135」、カリ・ミシェルがデザインしたウェイファーラー
- ロレックス・サブマリーナー Ref.6538

ボンドらしくない派手なハット。

ロレックス・サブマリーナー Ref.6538

当時、スターとして売り出されていたドイツの新人女優モニカ・ブルッガーとショーン・コネリー。

全体のファッションが分かる写真。

フェリックス・ライターのシアサッカーのスーツも渋い。
Qのアロハシャツ

パイナップ柄のアロハシャツ
Q(デスモンド・リュウェリン)がバハマにまで救援で駆けつけてきてくれます。このQとボンドのやり取りがなければボンド・ムービーを見た気にならないのです。
パイナップ柄のアロハシャツに半ズボン姿のQがとてもキュートです。
ジェームズ・ボンドのファッション9
ダイビングウェットスーツ
- 赤のダイビングウェットスーツ
- ジャンセンの白のショートパンツ
- フレッド・ペリーのネイビーポロシャツ「M3」
- ブルーゴーグル

ライダースのような真紅のウェットスーツに白パンツの配色の妙。

そして、水色のゴーグルも追加。

スキューバダイビングはまだこの頃は、一般的ではなく、未知の世界でした(一般的になりはじめるのは60年代末から)。

クライマックスの水中戦闘シーンのために60人のダイバーが参加しました。

60年代ファッションの一つはダイビング・ルックです。

ウェットスーツの下に、フレッド・ペリーのネイビーポロシャツ。
作品データ
作品名:007/サンダーボール作戦 Thunderball(1965)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョン・ブレイディ
出演者:ショーン・コネリー/クローディーヌ・オージェ/アドルフォ・チェリ/ルチアナ・パルッツィ/マルティーヌ・ベズウィック
- 【007/サンダーボール作戦】最初から最後まで空飛ぶジェームズ・ボンド
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.1|空を飛ぶショーン・コネリー
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.2|ショーン・コネリーとケン・アダム
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.3|ショーン・コネリーとダイビングウェットスーツ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.4|ショーン・コネリーとラグジュアリー・リゾート
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.5|クローディーヌ・オージェという絶世の美女
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.6|クローディーヌ・オージェ=水中銃を持つ女
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.7|クローディーヌ・オージェとウェットスーツ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.8|元祖・峰不二子 ルチアナ・パルッツィ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.9|ルチアナ・パルッツィとレーシングスーツ
