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『シャレード』Vol.5|ケーリー・グラントのファッション哲学

その他の男優たち
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ケーリー・グラントから学ぶメンズ・ファッションの黄金律

ずっとオードリー・ヘプバーン(1929-1993)が共演を望んでいた伝説のハリウッドスター、ケーリー・グラント(1904-1986)。彼にとって『シャレード』は70本目の映画であり、1962年は映画生活30年の節目に当たっていました。そして、オードリー・ヘプバーンは彼にとってきっかり50人目の共演女優でした。

ケーリーはこの作品の後、『がちょうのおやじ』(1964年)と『歩け走るな!』(1966年)の2作品に出演した後、映画界から引退しています。

イギリス出身のケーリー・グラントはその洗練されたファッション・センスにより、1940年代から1950年代にかけて〝メンズのファッション・アイコン〟として世界中の紳士たちの憧れの存在でした。本作では、50代後半でありながら、相変わらずハイセンスなケーリーがそこにはいます。

監督のスタンリー・ドーネンが「かねてから好きな映画のひとつである『北北西に進路を取れ』のような映画を作りたかった」と意気込んでいたこともあり本作のスーツの一部は、その時と同じように、サヴィル・ロウのキルガー・フレンチ・スタンバリーで仕立てた可能性があります。

私は自分が格別にファッション・センスが良いとは思っていません。なぜなら他の人の努力と自分の努力を比較する限り、私はお洒落な最新の服を手に入れたことがないからです。

私のスーツの中には10年、20年前のものもあり、その多くは既製品で値段も手ごろです。オーダーメイドのものは、ロンドン、香港、ニューヨーク、ロサンゼルスといったさまざまな都市のさまざまなテーラーで作られたものです。

ケーリー・グラント



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ヒッチコックが作らなかった最高のヒッチコック映画

淡いブルーのシャツとフレンチブルーのシルクタイの絶妙なバランス。

ジャケットの美しい生地感が伝わってきます。

ケーリー・グラントは常にひとつのことを三度試みた。どのショットも、どのシーンも、大袈裟に、控え目に、そしてその中間と三通りを演じた。いずれどのやり方が効果的かわかるのだが、その前にすべての可能性を試してみなければ気がすまなかった。彼は常になにかを探し求めていた。

ジェームズ・コバーン

この作品は、「ヒッチコックが作らなかった最高のヒッチコック映画」と呼ばれています。そして皮肉にも1963年にアルフレッド・ヒッチコックが作った映画『』よりも興行収入の良かった作品でした。

ちなみにヒッチコックはかつて、グラントについて「私がこれまでの人生で愛した唯一の俳優」と語ったことがあります(『断崖』『汚名』『泥棒成金』『北北西に進路を取れ』の主演をつとめた)。

本作の大ヒットの影響の下、スタンリー・ドーネンは二匹目のどじょうを狙い、1966年にマルク・ボアンがデザインしたディオールを着たソフィア・ローレンとグレゴリー・ペックで同じようなサスペンス『アラベスク』を撮ったのですが、興行的に大失敗しました。

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ケーリー・グラントのスーツスタイルの黄金律

チャコールグレーのフランネルスーツ

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ジャケットは、スリムなノッチラペルでシングルベントです。

ブラックカーフの2アイレットダービー

本作でケーリー・グラントがシャワーを浴びていたスーツは、ハスペルのスーツです。そんな彼の〝スーツ選びの心得〟は、時代を超えて生き残るファッション・アンサーと言えます。

私は仕事柄、これまで何十着ものスーツを購入してきたが、共通しているのは〝中庸〟であることです。つまり、自意識過剰にファッショナブルでもなく、突飛なものでもなく、かといって保守的でもなく、時代遅れでもない。

ラペルは広すぎず狭すぎず、パンツはタイトすぎずルーズすぎず、コートは短すぎず長すぎず。まさにシンプルであることが、私にとってのセンスの良さなのです。

私は、男性の服も女性の服と同じように、男性の体型の良い部分に注目させ、悪い部分を目立たなくさせるものだと信じています。

さらに、理想的な一着目のスーツについてこう語る。

もし予算が限られていて、スーツが1着しか買えないのであれば、私なら目立たないものを選びます。黒に近い紺色で、軽い生地で、昼も夜も着られるようなもの。

理想の二着目のスーツについては

グレーのウーステッドかフランネルが一番使いやすいと思います。色は薄すぎず、濃すぎず。そして、今回は中程度の重さで、いわゆる10オンス以上の生地ではありません。

ドレスシャツについては

シャツは、夜は白が基本ですが、汗が出るような所に行く場合は、日中は水色や控えめなストライプのシャツを着るのが実用的です。襟の形は、首や顔の輪郭に合ったものを選ぶとよいでしょう。

ネクタイについては

幅が広すぎず、狭すぎず、どんな服装にも合う黒のフーラード地がベストだと思います。高価なネクタイは、シワの抜けが早いし、結び目もしっかりしているので、贅沢は言えません。個人的には、柄も色も控えめなものを愛用しています。

最後にシューズについてこう語る。

私は、若き日に父からシューズに関するアドバイスを受けました。安いシューズを4足買うより、いいシューズを1足買ったほうがいいというのです。上質の革を使った1足は、粗悪な4足よりも長持ちするし、手入れをすれば、どんなに古くなっても、あなたの判断力とセンスの良さを証明し続けることができます。

もし、街で履くシューズを一足に絞るのであれば、黒がいいでしょう。二足目はダークブラウンがベストでしょう。どんなスーツにも合います。

モカシンシューズは、飛行機や車の中で簡単に脱ぐことができるので、私にとっては必須であり、特に旅行時には便利です。

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ケーリー・グラントのロレックス


この作品の中で、ケーリー・グラントは、ロレックス オイスター プレシジョン 6426を着けています。上の予告編の2分20秒あたりを見ると、ロレックスにシャワーをかけて「防水だ」と言っています。

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ジェームズ・コバーンのコーデュロイスーツ

本作において、60年代のメンズ・スタイルの最先端を行くJC。

ギンガムチェックのシャツ。

本当に死んでいるのか、鏡を鼻の下に置き確認する。

チェルシーブーツ。

仕草がイチイチ格好良いJC=ジェームズ・コバーン。

コーデュロイスーツ
  • ピンクブラウンの2つボタンのコーデュロイスーツ。ノッチラペル、スリムシルエットにシングルベント
  • ネイビーブルーのギンガムチェックのボタンダウンシャツ
  • 細いブラックのスクエアニットタイ
  • 黒のチェルシーブーツ

70年代の原田芳雄のようなジェームズ・コバーン(1928-2002)の佇まいが素敵です。60年代の英国のモッズを想わせるシルエットと、コバーンの男臭さがミスマッチかと思いきや、意外にマッチしています。

大脱走』(1963)の撮影を終えて、ミュンヘンから撮影に駆けつけたコバーンは、撮影も半ばを進んだころ、ようやくオードリーと会話を交わすようになり、彼女が『荒野の七人』(1960)を見て、コバーンこそこの役柄に適役だと監督に薦めてくれたことを知ったのでした。

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ウォルター・マッソーのピンドットタイ

ダークネイビーのフランネルのスリーピーススーツ。3つボタンにノッチラペル。

そしてライトブルーのコットンシャツ。

クライマックスで着ている別のスーツ。

ピンドットタイがお洒落。

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アクアスキュータムのレインコート

女性がカラフルな服を着ているときは、男性は落ち着いたカラーの服を着るべし。

ハリウッドスターの風格があります。

首もとの絶妙なバランス。

ケーリー・グラントのステンカラーコート
  • アイボリーカラーのアクアスキュータムのコート。ラグラン・スリーブで背中がケープバック。5つボタンのシングル。比翼仕立て。表からも裏からも使えるスロッテッド・ポケット。タブカフス
  • 濃紺の3つボタン段返りの2ピーススーツ。サイドヒップポケット

ケーリーと一緒に仕事をするのはとても楽だった。演技はみな彼がやってくれるので、わたしは反応するだけでよかったの。

オードリー・ヘプバーン

ケーリー・グラントのコート選びについてのお言葉をひとつ。

私は、オーバーコートは、首元までボタンがあり、開けてもすっきり見えるものを選びます。防寒のために厚手のコートを着ているのに、Vネックで胸の一番弱い部分を露出する男性がいるのは不思議なことです。首元までボタンがあるオーバーコートを着れば、マフラーを巻く必要はありません。

最後に服全般に対するお言葉。

服の手入れをし、清潔に保つこと。香りの強いコロンや石鹸は使わない方がいいと思います。私は男性に会ったとき、その人が男性のような香りがするか、まったくしないか、あるいは女性のような香りがしないことを好みます。

靴下はきちんと履きましょう。靴下のたるみほど、せっかくの身だしなみを台無しにするものはない。ポケットに重いものを詰め込んだり、あまり使わないカードで財布を膨らませたりしないようにしましょう。身だしなみだけでなく、スーツの仕立ても台無しにしてしまいます。

作品データ

作品名:シャレード Charade(1963)
監督:スタンリー・ドーネン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ケーリー・グラント/ウォルター・マッソー/ジェームズ・コバーン/ジョージ・ケネディ