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『007/サンダーボール作戦』Vol.1|空を飛ぶショーン・コネリー

ジェームズ・ボンド
ジェームズ・ボンド
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『007』が最も『007』らしかった時代の最高傑作。

007/ゴールドフィンガー』で頂点に達したかのように見えたボンド・ムービーの快進撃は実はほんの始まりに過ぎませんでした。本作は前3作品を超える大ヒットとなりました。

そして、作品の1/4が水中で撮影されたというこの作品のオープニングは、グレーのスーツを着たジェームズ・ボンドが空を飛び始まるのでした。

スーツにジェットパックを背負うボンドとダイビングスーツに水中銃を背負うボンド。この作品の強烈な二つのジェームズ・ボンド像が、ビジネスもヴァカンスも極限まで楽しむという「人生を楽しむ男性」を象徴する存在へとボンドを昇華させたのでした。

空を飛んでも、水中に潜っても、ボンドは常にイイ女を見逃さないアンテナを張り、微笑を忘れず、そして、ユーモアのセンスも忘れないのです。

ジェームズ・ボンドの魅力の本質とは、どこか無責任男を髣髴とさせる所にあるのです。彼に最も似合わない言葉は「一生懸命」であり、それは男のエレガンスとは、やせ我慢の美学でもあるということを教えてくれるのです。

このポスターイメージに尽きる!タキシードにジェットパッドを装着する007。もちろん髪の乱れはなし。

そして、スペクターNo.2のラルゴを演じるアドルフォ・チェリ。白のタキシードに黒の眼帯。悪役はこれくらいコクなくちゃ!

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史上初めてスーツを着て空を飛んだ男。

伝説のジェット・パックを装着するJB。

『紳士の必需品!』これが日常生活で使用されるようになる時代が来るのだろうか?

ジェームズ・ボンドがオープニングで空を飛んだ瞬間に、世界中の男たちは、この男に一生ついていこうと決めたはずです。

それほど今見てもカッコ良く、現在アパレル及びファッション関係の仕事に従事する20代から40代の(リアルタイムでは見ていない)男性に対しても、影響を与えている「男のダンディズム」を体現するシーンです。

スーツを着るときは完璧にパリッと決め、ヴァカンスに出かけるときは、見るからにリラックスしたリゾートウェアを着ることを信条とすることによって、ファッションのふり幅が広がり、その感度が研ぎ澄まされていくのです。

ボンド・ムービーが現代に至るまで「メンズ・ファッション」を先導している理由は、スーツやタキシードだけでなく、リゾートウェアのお披露目の場としても機能しているからなのです。

1984年7月28日にロサンゼルスオリンピック開会式にて実演された。

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ジェームズ・ボンド・スタイル1

ジェットパック・グレースーツ
  • テーラー:アンソニー・シンクレア
  • ダークグレー、フランネル、3ピーススーツ、シングル、2ボタン。スリムノッチラペル、6ボタンベスト、ノーベント
  • ターンブル&アッサーのスカイブルー・ポプリンドレスシャツ
  • ブラック・シルクタイ
  • ブラックレザー・スリッポンロウブーツ

ダークグレーとスカイブルーの絶妙なアンサンブル。

女装した敵と格闘するボンド。この女装が変装になってません!

最もスーツのディテールが分かる写真。

ラペルはかなり細めです。

こういうちょっと馬鹿げたアイデアも007の醍醐味です。

それにしてもグレースーツとの相性がとても良いです。

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英国ポップス界のジェームズ・ボンド=トム・ジョーンズ

元は、前作の主題歌を歌っていたシャーリー・バッシーにより歌われた「Mr. Kiss-Kiss Bang-Bang」という曲が主題歌だったのですが、急遽、タイトル名の入った主題歌であるべきというユナイテッドアーティストの主張により、トム・ジョーンズが起用されることになりました。

ジョン・バリーにより急遽作詞作曲されたこの曲は、あまりに高いキーで作られていたため、トム・ジョーンズはレコーディング終了と同時に卒倒したと言われています。

とにかくパワフルかつ、脂汁が飛んできそうな、フェロモン全開の、まさにジェームズ・ボンドの主題歌に相応しい情熱的な曲です。

それにしても、主題歌の候補だったジョニー・キャッシュの曲はどう考えても西部劇の主題歌です。

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ボンドムービーに重要な魅力的な悪党

眼帯をつけた紳士ラルゴ。ボンドムービー史上人気の高い悪党の一人は、肩掛けコート姿で登場します。

ボンドムービーに必要不可欠なのは、魅力的な悪党の存在です。ここでひとつ間違いを犯してしまいがちなのが、30代の見栄えの良い俳優を起用すると言うことなのですが、そうすると貫禄が失われてしまいます。

ボンドムービーの悪党に最も必要な要素は、ボンドと対等に戦うことが出来るよりも、莫大な財力と組織力と鉄の精神で、「壮大なる悪」を徹底する組織力なのです。だからこそそれだけの組織を率いている説得力=貫禄が必要なのです。

本作で、世界的な犯罪組織スペクターのNo.2であるラルゴを演じたアドルフォ・チェリ(1922-1987)にはその貫禄がありました。ロマンスグレーと日焼けした肌になぜか眼帯という外見に、ファッションセンスも歴代の悪党の中でずば抜けた存在でした。

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ラルゴ・スタイル1

キャメルコート&ダークグレースーツ
  • キャメルコート、3つボタン、ノッチラペル、シングルベント
  • ダークグレーのスリーピーススーツ、ウーレンフランネル、ナローラペル、段返り3つボタン、ノーベント、コンチネンタル・スーツ
  • クリーム色のドレスシャツ
  • 白い水玉模様のブラックタイ
  • ブラックレザーシューズ
  • ダークグレーのソフト帽
  • クリーム色のレザーグローブ
  • ブラックレザーの書類バッグ

肩掛けコート・スタイルで颯爽と登場するラルゴ。

ロマンスグレーに眼帯というアンバランスなバランス。

ブラックレザーの書類バッグも〝かなり出来るヤツ〟イメージを生み出しています。 

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男なら「ブロンド美女」にミンク・マッサージの優しさを。


ミンク・グローブで女性をマッサージするジェームズ・ボンド(=JB)。男ならこうありたいと思わせる瞬間。ちなみに、この女性(モーリー・ピータース。老けて見えるが1942年生まれの当時20代前半)は、JBが療養中の療養所の女性看護士であり、JBが全身マッサージ器で殺されかけた時に、ピンチをチャンスに転じさせてセックスに持ち込んだのでした。

こういった展開の安易さが、男性にとっては(微笑ましく)魅力的に移り、ある種の女性にとっては嫌悪感に結びつくわけなのです。

そんな女性には、もちろんミンクのマッサージも効かないことでしょう。私はどうせならJBにミンク・マッサージを受けて喜ぶオンナでありたいと望みます。

作品データ

作品名:007/サンダーボール作戦 Thunderball(1965)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョン・ブレイディ
出演者:ショーン・コネリー/クローディーヌ・オージェ/アドルフォ・チェリ/ルチアナ・パルッツィ/マルティーヌ・ベズウィック