『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』Vol.2｜ピアース・ブロスナンとブリオーニ

戦闘に最も向かないファッションで戦うスパイ＝五代目ボンド

歴代ボンドの中でも、ピアース・ブロスナン（1953－）のジェームズ・ボンドは、スーツやタキシードを着て戦うシーンがもっとも多いボンドだったと言えます。そして、この作品においてもブリオーニのスーツを着て、BMWの後部座席から遠隔操作して、壮絶なるカーチェイスを繰り広げてくれます。

ここにボンドムービーの本質を見ることが出来ます。機能性の良さではなく、極限までダンディズムを突き詰める姿勢です。ボンドムービーの中で最も相性の悪いファッションとは、スポーティーなスタイルなのです。

つまりは、スポーティーなスタイルが良く似合う若者たちとは別世界の物語だからこそ、ボンドムービーは永遠に独特な光を放ち続けることが出来るのです。それはまさに踊って歌うスタイルに飽きた大人たちのためのファンタジーなのです。

作中には登場しないオールブラック・スタイル。

イタリアン・マフィアの相談役のようなボンド

前作に引き続きボンドカーとしてBMW（750iL）が登場します。

ブリオーニらしい独特なカラーのカシミアコート。

ブリオーニのカシミアコートを着る五代目ボンドは、洗練されたボンド像というよりも、イタリアン・マフィアの相談役（コンシリエーレ）のような知性と貫禄を感じさせます。

そして、この作品において登場する全てのスーツ・スタイル（全てブリオーニ！）において、前作のように粋なポケットチーフは一切登場しません。

生地はホーランド＆シェリー

とてつもなくエレガントなカシミヤコートのシルエット。

1930年代風のピークドラペルがとても似合ってます。

ジェームズ・ボンドの絶対条件は、タキシードが易々と着こなせるスタイルの持ち主であることです。

とてつもなく格好いいドレスシャツ。

タキシードほど着こなしの難易度の高いメンズ・ファッションはありません。

よく見るとタキシードにショールカラーのベストというかなり珍しい組み合わせ。

1930年代風のシルエット。

このスーツスタイルでカーチェイスを繰り広げるのです。

ネクタイを乱しながら銃を撃つ男の色気。

スニーカーで組み合わせるなんてハンパなことはしない！それが殺しのライセンスを持つ男のスタイルだ！

ネクタイの形状がよくわかる写真です。

作品データ

作品名：007 トゥモロー・ネバー・ダイ　Tomorrow Never Dies（1997）
監督：ロジャー・スポティスウッド
衣装：リンディ・ヘミングス
出演者：ピアース・ブロスナン／ミシェール・ヨー／テリー・ハッチャー／ゲッツ・オットー／ジョナサン・プライス