「ゴ~ルドフィンガァ~」タイトルを叫ぶ主題歌のはじまり。
007シリーズ第三作目となる本作によって、後のボンドムービーの定番の流れは作り上げられました。その定番の一つが「つかみはOK」なオープニング・アクションと、その後のタイトル・ソングです。
さて記念すべき(実質的な)主題歌第一号『ゴールドフィンガー』を歌うのは、シャーリー・バッシー(1937-)です。以後、パンチの利いたタイトル連呼が、ボンドムービーの主題歌のスタイルとなり定着していきます(もちろん、次作においても、トム・ジョーンズが、タイトルの「サンダーボール」を連呼しました)。
ボンドムービーの主題歌の魅力は、秀逸なタイトルデザインと合わせ鏡です。タイトルムービーを担当したのは前作に続きロバート・ブラウンジョンでした。全身金箔の女性に作中シーンがレイアードされ流れ流れてゆきます。ブラックの背景にゴールドの様式美。ゴールドは常に女性の魔性を高めていきます(そして、男性の欲情を厳かに誘う)。
この作品を見たフェデリコ・フェリーニは、息もつかせぬ展開に感動を覚えたと言われています。さらにスティーヴン・スピルバーグの最も好きなボンドムービーであり、五代目ジェームズ・ボンド、ピアース・ブロスナンが生まれて初めて見た映画。そんな007最高傑作との呼び声の高い本作のファッション的な魅力を解剖していきましょう。
ブランディングとは、定番を多く作ること。
成功するシリーズものには、定番のパターンが多く生まれてゆきます(寅さんが、最初に見る夢や、「それを言っちゃあ、おしまいよ」などなど)。そのお約束があるからこそ、熱狂的なファンのハートを鷲掴みにすることが出来るのです。ボンドシリーズにおいて、それは以下のものです。
- オープニング・アクション
- タイトル・デザインと主題歌
- ボンド・ファッション
- ボンドカー
- ボンドガール
- スケールの大きな悪役
- 秘密兵器
- 魅力的なロケーション
- マネーペニーとQとM
定番を多く持てば持つほど、そのうちのどれかを人々は待ち望むようになります。そして、常に高まるその期待値を越えるもののみが、生き残っていくことになります。ボンド・ムービーがシリーズ化されるきっかけになった本作を見ていると、ひとつの興味深い事実を知ることになります。
それはまさにひとつのブランドの誕生であり、エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、シャネル、ディオールのようなラグジュアリー・ブランドのブランディングの流れととてもよく似ています。
ジェームズ・ボンド・スタイル1
ホワイトディナージャケット
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- ホワイトディナージャケット、シングル、1つボタン(マザーオブパール・ボタン)、スリム・ピークドラペル、ベントレス
- フランク・フォスター、透かしストライプのフロントプリーツシャツ、サテン、マザーオブパール・ボタン、カマーバンド着用せず
- ブラックサテン・シルクボウタイ
- ラウンドゴールド・カフリンクス
- ミッドナイトブルー・トラウザー、サイドアジャスター
- ロレックス、サブマリーナー6538
- ブラックレザー・チェルシーブーツ
ジェームズ・ボンド・スタイル2
プレイスーツ
- ベイビーブルーのタオル地のプレイスーツ(ジャンプスーツ)、フロントジップ
- 水色のスリッポン
作品データ
作品名:007/ゴールドフィンガー Goldfinger (1964)
監督:ガイ・ハミルトン
衣装:エルサ・フェネル
出演者:ショーン・コネリー/オナー・ブラックマン/ゲルト・フレーベ/シャーリー・イートン/タニア・マレット
- 【007/ゴールドフィンガー】空飛ぶギロチンハットと黄金美女
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.1|ショーン・コネリーとロレックスとワルサーPKK
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.2|ショーン・コネリーとアストンマーティンDB5
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.3|ショーン・コネリーとハロルド坂田
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.4|ショーン・コネリーとアンソニー・シンクレア
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.5|黄金美女シャーリー・イートン
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.6|元祖・美魔女オナー・ブラックマン
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.7|オナー・ブラックマンのパンツ・ルック
- 『007/ゴールドフィンガー』Vol.8|タニア・マレットと黄金美女たち