ジバンシィのパリジェンヌ・ルック
1953年7月の終わりに、4回目のコレクションの準備中であり、多忙を極めていたユベール・ド・ジバンシィを、はじめて訪れたオードリー・ヘプバーンは、色々行き違いがあり、作業中のジバンシィの協力が得られず、彼女自身で、ジバンシィのブティックに吊るされている前回コレクションの残りの服から衣裳を選ぶことになりました。
そんな1953年春夏のコレクションの中から、オードリー・ヘプバーンが、一番最初にジバンシィの目の前で選んだ服がこれでした。
オードリーはこのスーツを〝ジャジー・スーツ(jazzy suit)〟と呼びました。ショーでファッションモデルが着ていたものと同じものをジャストフィットでオードリーが着こなしたことにジバンシィは大変驚きました。
ジバンシィは回想します。「オードリーが、ターバンとスーツを着た瞬間に、朝訪ねてきた痩せっぽちな少女は消えうせていました。「私はこれを求めていたんです!」と嬉しそうに話すオードリーを見て思いました。〝私の服が生きている!〟と。その時、私ははじめて服は着る人によって表情を変えるということを知りました。それは何か魔法を見ているようでした」
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パリから帰国したサブリナは、洗練されたレディのようです。
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監督の演技指導を受けるオードリー。このスーツのシルエットの凄さが分かる写真です。
サブリナのファッション4
パリジェンヌルック
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- オックスフォード・グレーのウールの〝ジャジー・スーツ〟、ジバンシィ1953SS
- 黒グローブ
- 黒レザーのデルマンのローヒールパンプス
- イヤリングはバーグドルフ・グッドマンで購入したAido
- ブリーフケースはKoret
- ターバンハット、パールグレイのシフォン・プリーツ、ジバンシィ1953SS
〝ジャジー・スーツ〟は、絞りに絞ったウエストから広がるフェミニンなカーブが素晴らしいクラシカルなペプラムスーツです。衿なしのダブルで、スクープネックラインに、ストレートラインのスカートが特徴です。
初日に、彼女(オードリー)は準備を整えてセットへやってきた。台詞はすべて暗記していた。わたしが台詞を絞り出す必要はなかった。愛想がよくて美しい彼女に、5分後にはみんなが恋をしていた。わたしも含めて、全員がこの娘に恋をした。わたしには夜中に寝言をいう困った癖があった。寝返りを打ってぺらぺらしゃべりまくる…だが幸いなことに、わたしの妻のファーストネームもオードリーだった。
ビリー・ワイルダー
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ウィリアム・ホールデンとオードリー。ジャジー・スーツとターバンハットのアンサンブルが最も魅力的な瞬間。
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オードリーのこの笑顔に誰もが夢中になってしまうのです。
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ジバンシィのファッションモデルが着ていたドレスをそのまま着こなせる恐るべき人。
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ラゲージの上にのっかかるメンズライクなバッグもステキ。
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オードリーのこのアングルが大好きです。
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このサブリナのヘアスタイルは永遠の女性の憧れです。
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ジバンシィのヘッドドレス。
サブリナのファッション5
サブリナドレス
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- サブリナドレス、ジバンシィ1953SS
- 長めの白グローブ
- アクセサリーは、真珠のイヤリングのみ
- 黒の低めのサテンのパンプス。レネ・マンシーニ1953SS
サブリナドレスは、≪イネス・デ・カストロ≫にインスパイアされたデザインです。ストラップレスで、ドレス全体に、18世紀の白ビーズが散りばめられています。
そして、ペンシルスカートの周りに、同じ花柄のパネルスカートが後ろになびき、生地は白シルクのオーガンジーです。バスト部分とパネルの裾に施された黒のシルクの糸による花柄の刺繍と、ヘムの黒色のラッフルが特徴です。
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素晴らしいたたずまいです。本当にお顔が小さいですね。
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胸の谷間が存在しないからこそ気品のある美しさが生み出される。
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ジバンシィらしいアフリカ大陸を想わせる大胆な刺繍です。
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この裾からすぅ~っと出る足の甲が、美の真骨頂を生む。
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イブニングドレスの美女とプードルの写真という発想の斬新さ。
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あまりにも有名なこの写真のドレスの刺繍の色は金色なのですが、実際のドレスの刺繍の色は黒色でした(金色でもステキ!)。
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これが正解です。実際のドレスの色は純白に黒一色の刺繍でした。
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オードリー・ヘプバーンとウィリアム・ホールデン。
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奇跡の直角三角形シルエット!
24歳の女優が自分の足で見つけたサブリナドレス
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オードリーは、お伽噺の中に存在できる稀有な女優でした。
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究極の美とは、見せすぎないところからはじまる。
『麗しのサブリナ』のアイコンドレスと言えば、ウエストから下に翼が生えているような印象を与えるこのカクテル・ガウンです。ジバンシィが古代ギリシア建築に見られる幾何学様式を自分の服にも応用したこのドレスは、装飾を取り払ったシンプルな装いにこそ、ファッションの真髄があると信じて疑わなかったオードリーにとって、理想のドレスでした。シンプルなように見えて実に手の込んだドレスです。
オードリーは、ジバンシィの前で、このドレスを選び、軽く踊りました。そして、それを見たジバンシィは、このドレスのことを〝スノードリフト・ドレス〟と形容するようになりました。吹雪の中、波打つ雪原のように優雅にドレスが波打つからです。
オートクチュールのデザイナーに直接会って、衣装を選んだ24才のハリウッド女優。『サブリナ』のオードリーは他のあらゆる作品のオードリーよりも輝いて見えるのはそんな情熱が〝不滅の輝き〟を生み出しているからなのでしょう。彼女は自分の行動力により、ジバンシィと映像美を結びつけたのでした。
ただ、新しいものからおしゃれなものを見つけ出すサイクルを繰り返すだけで、そこに情熱がなければ、ファッションはただの資源の無駄使い(もしくは着せ替え人形の発表会)で終わります。
オードリー・ヘプバーンとユベール・ド・ジバンシィにあって、今の私たちにないものを真剣に考える時期になった気がします。そんな自戒の気持ちも込めて、「カイエ デ モード」は創造されています。
作品データ
作品名:麗しのサブリナ Sabrina (1954)
監督:ビリー・ワイルダー
衣装:イーディス・ヘッド/ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ハンフリー・ボガート/ウィリアム・ホールデン