ジバンシィのシャーベット革命
『パリで一緒に』は、オードリーの作品の中で知名度の高い作品ではありません。しかし、この作品がもし1962年から63年にかけて『シャレード』の前に公開されていたなら、知名度はもう少し高かったはずです。
特に、映画の中で、シャーベットカラーやパステルカラーをユベール・ド・ジバンシィが初めて本格的に使用したオードリー・スタイルは必見です。この作品は、ファッション史という観点において、再評価に値する作品です。
この業界において、誰一人、彼女をねたむ人はいませんでした。オードリーこそがロマンティック・コメディの〝最高の女優〟という評判を疑う人などいませんでした。なぜなら彼女の仕事に対するストイックな姿勢と勇気、そして強い責任感は、仕事仲間の尊敬を集めていたからでした。いつも時間を守り、撮影現場に来たときには台詞をちゃんと覚えていました。
彼女に関するかぎり、かんしゃくや気紛れといった、よくある映画スターの負の部分は誰も見たことがなかったと思います。彼女は人をはっとさせるような謙虚さで、この完璧なマナーを守り抜いていたのです。オードリーに言わせれば、こんなにすてきなキャリアに恵まれるのは自分の運がいいからだ、ということになります。彼女は自分自身が満足できるまで、けっして努力を怠りませんでした。
レスリー・キャロン
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劇中使用されなかったリトルブラックドレス。
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1962年のフランス版「ヴォーグ」の撮影に使用されました。
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オードリーとウィリアム・ホールデン
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オードリーのプライベート・バッグは、常にシンプルでエレガントなものでした。
ガブリエル・シンプソンのファッション5
エナン帽とコタルディ
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- クリーム色のシルクブロケード生地のホワイト・コタルディ。アクセントとして黒のベルベットのVネックの縁取り
- エナン帽、ビジューつき
- ブラックのキトンヒールパンプス
エッフェル塔の仮装パーティのシーンで、オードリーは14世紀のヨーロッパ貴族のコスチュームで登場します。
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仮面舞踏会のシーンで、14世紀のコスプレをするオードリー
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オードリーには、アップスタイルがとても似合います。
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14世紀のヨーロッパの貴族ファッション。
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当時、ホールデンと付き合っていたキャプシーヌ。彼女はオードリーの生涯の親友となります。
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高い円錐型のエナン帽(角という意味)は、シリアから伝道したもの。
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ジバンシィのデザインしたコタルディ。
ガブリエル・シンプソンのファッション6
ピンクドレス
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- シルク・ブロケードのピンク・カクテルドレス、ノースリーブ、ジバンシィ61/62AW
- 白のロンググローブ、エルメス
- ピンクのクラッチ
- ピンクのキトンヒールパンプス
『ティファニーで朝食を』(1961)においてオードリーが着ていたショッキングピンクのカクテルドレスが、シャーベットカラーに進化を遂げ、ラストシーンに登場します。
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とても可愛いピンクのデカリボン。
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後ろから見るとこのリボンの可愛らしさがよく分かります。
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30代の女性の魅力を引き立てる、シャーベットカラーのピンクドレス。
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本作のスカートのシルエットは全て同じです。
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アップスタイルが映えるバックシルエット。
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すごく珍しいピンクドレスの写真。
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ラストシーンの写真。スカートの裾の凝ったデザインが分かります。
作品データ
作品名:パリで一緒に Paris When It Sizzles (1964)
監督:リチャード・クワイン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ウィリアム・ホールデン/トニー・カーティス/マレーネ・ディートリッヒ