オードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーン39 『パリで一緒に』1(2ページ)

    作品名:パリで一緒に Paris When It Sizzles (1964)
    監督:リチャード・クワイン
    衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
    出演者:オードリー・ヘプバーン/ウィリアム・ホールデン/トニー・カーティス/マレーネ・ディートリッヒ



    1964年公開。しかし、撮影は1962年に行われたもの。

    撮影当時33歳だったオードリー・ヘプバーン。

    劇中劇のタイトルは、『エッフェル塔を盗んだ娘』。

    ユベール・ド・ジバンシィが衣装を担当したオードリー・ヘプバーンの主演作の中で、最も知名度の低い作品と言われるのが本作『パリで一緒に』です(1979年の『華麗なる相続人』と言う人もいる)。オードリーと、パリと、ジバンシィと、コメディという王道の組み合わせが、奇跡的に失敗したこの作品の最大の難点は、物語の設定のつまらなさとウィリアム・ホールデン(1918-1981)にあったと言えるでしょう。そして、もし監督が当初予定されていたブレイク・エドワーズ(『ティファニーで朝食を』)だったならば、この作品は間違いなく『グレートレース』(1965)のような愉快なものになったことでしょう。

    『大いなる幻影』(1937)、『バーバレラ』(1968)や『007私を愛したスパイ』(1977)の名カメラマン、クロード・ルノワールが当初、撮影監督を担当していました。しかし、オードリーの要求により、『麗しのサブリナ』『シャレード』『おしゃれ泥棒』『暗くなるまで待って』を撮影したチャールズ・ラングに途中で交代されました。撮影は1962年7月から11月にかけて行われたのですが、映画が公開されたのは1964年4月でした。それだけこの作品は、パラマウント社にとって失敗作の予感をさせていたのでした。ちなみにこの作品の撮影終了の2日後にオードリーの代表作の一つになった『シャレード』の撮影が始まったのでした。

    左から、ウィリアム・ホールデン、ユベール・ド・ジバンシィ、オードリー、メル・ファーラー(当時のオードリーの夫)。

    本作のオードリーの衣装と香水はユベール・ド・ジバンシィによるものです。しかし、ここで一つ問題があります。この作品の中に香水は登場しません。そして、もちろん映像からは香りを嗅ぐことは出来ません。であるにも関わらず、〝香水はジバンシィからの提供〟と記載されています。ちなみに、この撮影の間中、オードリーが身に纏っていた香水は、1957年にジバンシィが彼女のために創り出したランテルディでした。

    どれほど映画の中で、そのファッションが魅力的であろうとも、その映画の中の主人公が魅力的でなければ、彼女の着るファッションはその輝きを放つことは出来ないのです。そういった点においては、この作品は、ジバンシィにとって不幸な作品でした。



    オープニング・ファッション

    全編シャーベット・カラーのジバンシィを着るオードリー。

    帽子とジャケットの形状の良く分かるショット。

    50年代後半から60年代半ばにかけて流行カラーだった黄緑色のスカートスーツ。特にヒッチコックが愛したカラー。

    60年代に流行したノーカラーのスーツ。

    野外ロケシーンが多い割には、パリ感が上手く演出されていませんでした。

    今回のオードリーのヘアスタイルは、短く刈った前髪を下ろして、長めの髪を中心で膨らませて、後ろでまとめ上げる形。

    誰もが魅了されるオードリースマイル。

    セリーヌフィービー・フィロが2017年に発表した〝クリスプ〟にそっくりなエルメスのクラシカルなバッグ。

    ハンドバッグのもう一方の側面はフラップに。

    ウィリアム・ホールデンと休憩中のオードリー。

    ガブリエル・ルック1 ノーカラー・スーツ
    • 白のクローシェ、ラッカーで麦わら帽子風に、ジバンシィ
    • インナー白のノースリーブカットソー、ホワイト・シルクリネン、ジュエルネックライン
    • 3/4ラグランスリーブ、黄緑色のノーカラーのスカートスーツ、2つのフェイクポケット付きのウールスカート、ジバンシィ62SS
    • 白のロンググローブ、エルメス
    • エクリュカラーのフラットシューズ、レネ・マンシーニ61SS
    • 白のレザーハンドバッグ、エルメス、エクリュカラー、62年にオードリーが購入した私物

    60年代に入ると、テレビも雑誌もカラー化が進んでいきました。そして、ファッションも、そんな時代の空気に反応するかのように、より視覚的な楽しみを共有するようにカラフルになりました。この作品におけるオードリー・ファッションはそんな時代の空気を先駆けするかのように、当時としてはクローズに使用することの珍しいシャーベットカラー(もしくはパステルカラー)で彩られた5着のジバンシィに身を包んでいます。

    退屈ともいえるストーリーを度外視して、オードリーのファッションだけを見てみると、オープニング・スーツをはじめ、どれもオードリーの〝洗練〟と〝活発さ〟と〝モード感〟と〝カワイイ〟を見事にミックスさせた素晴らしいデザインでした。特にこのスカートスーツのAラインが美しく、平面的なジャケットと立体的なスカートのアンバランスなバランスは、やはりオードリーだからこそ着こなせる〝選ばれしモード感〟に満ち溢れています。

    本編で使用されなかった水色のスカートスーツ。




    ボーイフレンド・カーディガン

    恐らくリチャード・ベンソンの物と思われるカーディガン。

    オードリーがプレッピーを着る意外性。

    映画というものは、ある時代の〝生きていたファッション〟を残す遺跡なのです。

    リチャード・ベンソンのものと思われるカーディガンを着てリラックスするガブリエル。男性諸君、心して聞いてください。ある女性の気持ちをあなたへと傾かせるための最短距離となる方法は、あなたの衣服をさりげなく彼女に来てもらうことです。

    男性と女性の愛情は、何かを共有した瞬間に生まれるものなのです。この戦法に最も有効なものが、ライダース・ジャケット、カーディガン、ボタンダウンシャツです。



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