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【ティファニーで朝食を】ダイヤモンド以上に輝くオードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーン
オードリー・ヘプバーン
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【ティファニーで朝食を】

Breakfast at Tiffany’s オードリー・ヘプバーン(1929-1993)の人気の絶頂期に生み出されたロマンティック・コメディ映画。トルーマン・カポーティの中編小説を原作に、後に『ピンク・パンサー』シリーズを撮ることになるブレイク・エドワーズが監督した作品。ヘンリー・マンシーニの音楽もとてもお洒落です。

オードリーの衣裳は、ユベール・ド・ジバンシィイーディス・ヘッドによるものです。とにかく最初から最後まで、画面の隅から隅まで見逃せないほど、1960年のハイセンスを集めた玉手箱のような作品です。

ちなみに題名の『ティファニーで朝食を』の意味は、以下の原作の一文からよく伝わると思います。

ねえ、いいこと。ほら、いやったらしい赤に心が染まるときってあるじゃない。それはブルー(青)とはまた違うの。それは太っちゃったときとか、雨がいつまでも降り止まないみたいなときにやって来るものよ。哀しい気持ちになる、ただそれだけ。

でもいやったらしい赤っていうのは、もっとぜんぜんたちが悪いの。怖くってしかたなくて、だらだら汗をかいちゃうんだけど、でも何を怖がっているのか、自分でもわからない。何かしら悪いことが起ころうとしているってだけはわかるんだけど、それがどんなことなのかはわからない。

そんな時タクシーをつかまえてティファニーに行くと、とたんに気分がすっとしちゃうんだ。その店内の静けさと、つんとすましたところがいいのよ。そこではそんなにひどいことはおこるまいってわかるの。隙のないスーツを着た親切な人たちや、美しい銀製品やら、アリゲーターの財布の匂いの中にいればね。

ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所が、この現実の世界のどこかに見つかれば、家具も揃え、猫に名前をつけてやることだってできるのにな。

『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ 1958年(村上春樹訳)

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あらすじ

1960年のある日の早朝、ニューヨークの五番街のティファニーの前でタクシーが止まります。そして、その中からリトルブラックドレスを着たホリー・ゴライトリー(オードリー・ヘプバーン)が降りてきます。ティファニーのショーウィンドウを眺めながら、コーヒーの紙コップを片手にクロワッサンを食べています。

彼女は、大金持ちの男性を見つけ、玉の輿に乗ることを夢見ながらパーティー三昧の生活をしている得体の知れない美女です。

そして、お昼にタクシーがホリーの住むアパートの前で止まります。ホリーの部屋の上に売れない作家ポール・バージャック(ジョージ・ペパード)が引っ越して来ました。

ポールはインテリア・デザイナーの裕福なマダム〝2E〟(パトリシア・ニール)のツバメでした。ある晩、ポールの部屋の窓を叩くホリー。どうやら、しつこく男性に言い寄られ、自室から退散してきたようです。自分の兄フレッドに似ているポールに親近感を抱き〝フレッド〟と呼ぶようになり、二人は打ち解けあいます。

翌日ホリーのホームパーティーに招待されたポールは、自由奔放なホリーにどんどん魅かれていきます。収監中のマフィア、サリー・トマトに毎週面会し、彼と話すだけで多額の報酬が貰えるといういかがわしいバイトにも一緒に付いていくポールは、すっかりホリーに夢中でした。

そんなある日、アパートを監視する怪しい中年男性がいました。ポールの部屋に来た2Eは、夫が雇った私立探偵ではないかと不安を感じていました。しかし、真相は、ホリーが兄と浮浪児同然だった14歳のとき、救われ、結婚した男性だったのでした。

そうでありながら、ホリーはテキサスの田舎からある日突然失踪して、ハリウッドを経由して、ニューヨークに流れ着いたのでした。

ポールはホリーに迎えに来た夫を引き合わせます。しかし、もう帰ることは出来ないと夫に伝え、バス停で別れを告げました。その夜、ホリーは倒れるまで酔いたいとポールとニューヨークの夜の街を飲み明かします。より親密になる二人。でもホリーの生活態度を戒めたポールに対して「女からお金をもらうのはなれっこでしょ?」と口論になってしまうのでした。

お昼前、久しぶりに小説が売れ、喧嘩のことなど忘れ、その喜びをホリーに伝えるポール。そのお祝いを兼ねて二人は五番街でデートすることになりました。

〝今日は一日したことないことをするのよ。変わりばんこに〟ということで、まずティファニーで買い物をする2人。所持金が2人合わせて10ドルしかなかったので、コーンキャンディーのおまけの指輪に刻印をいれてもらいました。

最後に雑貨屋で、お面をかぶり、そのまま店を出て、万引きする2人。一心不乱に駆けて逃げ、アパートの玄関先で、そのお面を取って<今まで心を覆っていたものも一緒に取って>はずみでキスをする2人。利害関係のキスで生きてきた2人が、心のキスを交わした瞬間でした。

そして、それは2人が今までしたことのないことを共有した瞬間でした。

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ファッション・シーンに与えた影響


『ティファニーで朝食を』は、1960年10月から1961年2月にかけてニューヨークとハリウッドで撮影されました。ユベール・ド・ジバンシィのリトルブラックドレスをはじめ、通行人のファッション、小道具、インテリアの端々に至るまで『いつの時代に見ても古さを感じさせない』ダイヤモンドのように輝く〝不滅のスタイル〟が散りばめられた〝スタイルの教科書〟と言えます。

羅列するとキリがないのですが分かりやすいところで、この作品がファッション業界に影響を与えた要素を羅列していきましょう。それは以下の7点です。

  1. リトルブラックドレスが生み出す魔法の教科書
  2. ティファニーという言葉の響きにダイヤモンドの輝きを与えた
  3. パールネックレスの復権
  4. オリバー・ゴールドスミス。ビッグフレームのサングラスを不滅のものに
  5. 三宅一生に影響を与えた一枚の布切れラップドレス
  6. バーバリーのトレンチコート
  7. シャネルの2.55バッグ

この作品の中でオードリーが使用していたあらゆるファッション・アイテム(スリーピングマスクにいたるまで)は、今もなお時代を超えて、世界中の女性の心を捉えて離しません。究極のファッション・ムービーとは、トレンドを超えた〝不滅のスタイル〟を教えてくれる映画のことを指すのです。

だからこそ、ファッションやアートにかかわる人々は、この作品を、〝環境ムービー=目覚めのコーヒー〟として定期的に流すことにより、センスのブラッシュアップに役立てるのです。

作品データ

作品名:ティファニーで朝食を Breakfast at Tiffany’s(1961)
監督:ブレイク・エドワーズ
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ/イーディス・ヘッド/ポーリーン・トリジェール
出演者:オードリー・ヘプバーン/ジョージ・ペパード/パトリシア・ニール/ミッキー・ルーニー/マーティン・バルサム