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ジェーン・フォンダ1 『バーバレラ』1(2ページ)

ジェーン・フォンダ
ジェーン・フォンダ
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作品名:バーバレラ Barbarella(1968)
監督:ロジェ・ヴァディム
衣装:パコ・ラバンヌ/ジャック・フォントレー
出演者:ジェーン・フォンダ/アニタ・パレンバーグ/ジョン・フィリップ・ロー/マルセル・マルソー/デヴィッド・ヘミングス

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21世紀、世界はバーバレラを中心に回っている

1968年公開当時のポスター。

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元祖カメレオン女優。ジェーン・フォンダ様。

背中の線は、オンナの履歴書。

それにしても、後にこの作品がマニアの間で古典と言われ、一部の人々からはヴァディムと私の代表作と思われるような作品になるとは想像もしなかった。なぜそうなったのかを理解し、この作品の独特な魅力と楽しさがわかる境地に達するまでには、長い歳月がかかった。

ジェーン・フォンダ

世界一の無責任男ロジェ・ヴァディム(1928-2000)から、現代の日本男児が学ぶべきものは少なくないだろう。

彼が、ブリジット・バルドーを生み、カトリーヌ・ドヌーヴを生み出したのである。そして、もう一人、ジェーン・フォンダを生み出したのもヴァディムだ。そして、ロジェ・ヴァディムに捨てられた女たちは、ことごとくその才能を開花させた。一方で、ヴァディムは、女たちを捨てるたびにその才能を枯渇させていった。

そんな、ロジェ・ヴァディムが、最後の輝きを見せたのが、『バーバレラ』でした。これからはスペース・オペラの時代であり、セクシーに、戦うオンナの時代なんだ!と覚醒したヴァディムが、大人のための「不思議の国のアリス」=バーバレラを映像化したのでした。そして、この作品が、後世のファッション・シーンにおいて多大な影響力を持つことになるとは、当のヴァディム自身も全く想像しなかっただろう。

その持ち味であるアメリカ的ないい娘の無邪気さで、彼女はエロチックなコメディーにまさにはまり役のヒロインになった・・・彼女は自分がしていることの卑猥さに気づきながら楽しく愉快に演じている。そしてこの無邪気な猥褻さによって、彼女は汚れたヒロインを演じながら、裸になったその他大勢の女優たちとは一線を画している。

ポーリン・ケイル

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史上初めてファッション・デザイナーがデザインした宇宙服。

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バーバレラ・ルック1 宇宙服
  • シルバーの潜水服のような不恰好な宇宙服

物語は、バーバレラの宇宙船から始まる(ここで描かれている宇宙は、21世紀的な現実性の追求ではなく、極めてファンタジック!)。船内は、一面茶色の毛皮で覆われています。そして、ジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」と月の女神像を背景に、不恰好な宇宙服を着て無重力状態の人物が映し出されるのです。新たなるヴィーナスの誕生は、無重力から生み出されたのでした。

オープニング・タイトルのシークエンスは、バーバレラが毛皮張りの宇宙船内に逆さまになって浮かびながら「宇宙服」を脱いでいくシーンだった。映画史上最初にして最後の無重力状態でのストリップショー。この前代未聞のシーンのために、様々な装置が作られた。クロード・ルノワールは、ある夜、ホテルのバスルームで女性とお楽しみの最中、このシーンの撮影方法を思いついた。

ジェーン・フォンダ



1962年に、ジャン=クロード・フォレによって描かれたフランスのSFコミックが原作である主人公バーバレラを演じるジェーン・フォンダは、当時最もセンセーショナルなファッション・デザイナーだったパコ・ラバンヌがデザインした8種類もの衣装にチェンジしました。

この作品の勝利は、歴史上初めてファッションとSFを結びつけたことにあります。

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伝説の『無重力ストリップ』

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ヘルメットから、その美貌が現れるシーンのリハーサル。

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ロジェ・ヴァディムとジェーン・フォンダ。

まず、宇宙船内のセットを、歩いて出入りできるように普通に置くのではなく、セットの開口部が巨大なサウンドステージの天井と向き合うように設置する。そしてその開口部に分厚いガラスをはめ込み、カメラをその上の梁から吊るす。私が梯子をのぼってガラス板の上に立つと、カメラからは、私が浮遊し、私の背後に宇宙船があるように見える。そこで私がゆっくりと宇宙服を脱ぎ出すとともに、送風機で私の髪と脱ぎ捨てた宇宙服に風を吹き付ければ、脱ぎ捨てた服も私と一緒に浮遊しているように見える。私はガラスが壊れて、ガラスの破片の中に素っ裸で転がることになるのではないかと怖かった。

ジェーン・フォンダ

自分の容姿が女として完璧でないことも怖かったが、それでも私にはできないとは言えなかった。だがヴァディムは映画のクレジットの文字で隠すべきものはきちんと隠すと約束してくれ ー実際、その通りにしてくれた。

ジェーン・フォンダ

無重力ストリップ・シーンの素晴らしさは、ボブ・クルーによる〝ザ・60S〟なソフト・ロック風の主題歌による部分もとても大きいです。ニューヨークのサイケデリック・バンド〝グリッターハウス〟(残念ながら公開当時この曲は全く注目されず、売れなかった)が歌う、生温かい情熱的なムードが、21世紀に失われた、どこか官能的で、日曜の午後のようなムードに包み込んでくれるます(サンドラ・ホーンが歌う峰不二子のテーマ曲「ラブ・スコール」のように)。

そして、パコ・ラバンヌのデザインした宇宙服の造形の素晴らしさ(緑のワンポイントが利いています)。潜水服のようなずんぐりむっくりな宇宙服のパーツがどんどん剥ぎ取られていき、ジェーン・フォンダの白く輝くような美肌が、果実の皮を剥くが如く、ぷるりんと現れていくのです。ぞっとするほどに美しい指先からはじまり、蹴上げるようにレッグパーツを健康的に脱いだ後の、クの字の生脚の美しきこと美しきこと・・・

そして、ヘルメットから恍惚の表情のジェーン様の顔が現れるのです。そのヘルメットを取り、金髪がふんわりと乱れる中から、アルファベットが飛び出します(さりげなく、ガラス版に転がるヘルメットを蹴飛ばし、手で押しのけようとするジェーンの仕草がとてつもなく可愛い)。いよいよお待たせしましたとばかりに、全裸になるために、三角形の前掛けを取ります。そして、全裸になった後に、その三角形が、足先に絡みつき、人魚姫の尾びれのような瞬間を生み出すのです。

『バーバレラ』の無重力ストリップに影響を受け、1994年、カイリー・ミノーグが「Put Yourself On My Place」のPVで再現しました。

さらにアリアナ・グランデも、2014年の「Break Free」のPVで再現しています。

基本的に、ミュージック・ビデオと映画の違いは、そのカッティングの多さなのだが、結局この3つの映像を比べてみると、最も新しいアリアナのものが、もちろん最高に可愛らしく撮れているのだが、一方で、全く深みも味わいもないものになっていることが分かります。

結局は、オリジナルのゆる~いソフト・ロックに合わせてストリップするうっとりするようなジェーン・フォンダの前では、子供のお遊びにしか見えなくなってしまうのが、アリアナ・グランデというポップスターの本質とはいえ、それはまた21世紀のポップスターに依存しているファッションシーンの生み出すファッションの軽さの本質が垣間見えるのです。