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映画の中のオードリー・ヘプバーン・ファッションの全て②<オードリーとジバンシィ>

オードリー・ヘプバーン
ヘプバーンカット。1950年代半ばのオードリーのイメージは、ショートカットだった。
オードリー・ヘプバーン
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女神級の存在感を見せた『麗しのサブリナ』ルック



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オードリー・ヘプバーンを象徴する単語の三つがこの作品から登場しました。それは「妖精」「アンドロギュヌス」と「ユベール・ド・ジバンシィ」です。

オードリーの主演2作目である『麗しのサブリナ』は、1953年9月29日から12月5日にかけて撮影されました。一方で、『ローマの休日』は、同年8月末より世界中で公開されており世界中がオードリー・ヘプバーン旋風に包まれようとしていました(翌年1954年3月25日にオードリーは、アカデミー主演女優賞を獲得しました)。

オードリーが最も美しい瞬間は、『ローマの休日』と『麗しのサブリナ』を撮影したショートカット時代でしょう。それは若さだけでなく、ヘアスタイルとメイクアップと洗練されたファッションにより生み出された永遠のアンドロギュヌス性によるものでした。

そして、このメイクアップこそが、現在の日本において10代から20代の女性を虜にしているメイクアップの元祖とも言えるものであり、オードリー映画史上最強のアイブロウの濃さを誇るサブリナ・メイクと呼ばれるものなのです。

それは、観客の視線を眉と目に集中させ、オードリーの角ばった頬を和らげる効果を生みました。更に淡い色のリップを厚めに塗り、ぷくっとした唇で、シャープな逆三角形のラインを作り上げたのでした。

『麗しのサブリナ』時代のオードリーのヘアメイクについては、『麗しのサブリナ』1(オードリー・ヘプバーンとエスティ・ローダーについて)をご覧ください。

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主演第2作 麗しのサブリナ(1954年)当時25歳

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大富豪の運転手(庶民)のじゃじゃ馬娘が、2年間のパリ留学で、洗練されたレディになって帰国するというストーリーは、オードリーに再び変身を要求しました(アン王女からアーニャのように)。そして、ロングヘアーからショートカットになったオードリーは、アン王女のプリンセスのイメージから、ヴォーグから抜け出してきたかのようなファッション・モデルのイメージへと見事に転生を遂げました。

パリから帰ってきた美女。この洗練された美しさは、明らかに今までのハリウッドスターには存在しない美しさでした。その大きな瞳に見つめられると、男性も女性もドキドキしてしまいそうな不思議な魅力を感じさせます。美しい少年がメイクをして、タイトなスーツを着ているような存在の背徳感。そうです彼女こそ、ハリウッドに誕生した始めての巴里のアメリカ人でした。

『麗しのサブリナ』は、ファッション史において、最も重要な映画の1つです。それはオードリー・ヘプバーンというファッションモデル体型(170cm)の女性が、女性にとって憧れとなったからです。このことが、ファション業界と映画界の距離を縮め、以後多くのファッションモデル達が、映画界に進出するきっかけになったのです。

ちなみにこのジャジー・スーツは、ユベール・ド・ジバンシィの1953年春夏のコレクションの中から、オードリーが最初に本人の前で選んだ服でした。ショーでファッションモデルが着ていたものと同じものをジャストフィットでオードリーが来た事にジバンシィはたいそう驚きました。

ジバンシィは回想します。「オードリーが、ターバンとスーツを着た瞬間に、朝訪ねてきた痩せっぽちな少女は消えうせていました。「私はこれを求めていたんです!」と嬉しそうに話すオードリーを見て思いました。〝私の服が生きている!〟と。その時、私ははじめて服は着る人によって表情を変えるということを知りました。それは何か魔法を見ているようでした」

『麗しのサブリナ』におけるジバンシィとの出会いの逸話の詳細は、『麗しのサブリナ』2(ジバンシィとフェラガモ)をご覧ください。

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ジバンシィの前で軽くオードリーが踊りだす。



『麗しのサブリナ』のアイコンドレスと言えば、ウエストから下に翼が生えているような印象を与えるこのカクテル・ガウンです。ジバンシィが古代ギリシア建築に見られる幾何学様式を自分の服にも応用したこのドレスは、装飾を取り払ったシンプルな装いにこそ、ファッションの真髄があると信じて疑わなかったオードリーにとって、理想のドレスでした。シンプルなように見えて実に手の込んでいるドレスです。

オードリーは、ジバンシィの前で、このドレスを選んだとき、嬉しくなって思わず、初対面の彼の前で、軽く踊り出したのでした。

何よりも、斬新なのは、オードリー自身が考案したスタイリングでした。それは長めの白グローブに、アクセサリーはたったひとつ真珠のイヤリングだけというものであり、それは、それまでの女性の豊満な魅力とは全く違った一面を引き出す明確な意志の勝利でした。

この撮影当事、監督のビリー・ワイルダーは有名なコメントを残しています。「彼女の出現は、膨らんだ胸の魅力を過去のものにしてしまうだろう」。

このスノードリフト・ドレスについての詳細は、『麗しのサブリナ』4(オードリー・ヘプバーンとリトルブラックドレス)をご覧ください。