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ブルガリ

【ブルガリ】オムニア(アルベルト・モリヤス)

ブルガリ
©BVLGARI
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オムニア

原名:Omnia
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2003年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:40ml/9,300円、65ml/12,400円

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10周年を記念して生み出された〝すべてのブルガリ〟

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ブルガリは、官能的な蛇をモチーフにした〝セルペンティ〟が代表的なハイジュエリー・ブランドです。1992年に世界ではじめてのティー・フレグランスであるオ パフメ オーテヴェールによって、フレグランス部門への進出を果たしました。

そして、フレグランス発売10周年を迎える2003年に発表されたのが、この「オムニア」でした。オムニアとはラテン語で「全ての」という意味です。後に「オムニア」シリーズとして現在も根強い人気を誇るシリーズ第一作目です(もちろん発売当初はシリーズ化の予定はなかった)。

すべてのオムニア・シリーズはアルベルト・モリヤスによって調香されています。

「オムニア」シリーズは今でこそ〝20代前半の女性にとって、ブルガリの中で最も手に取りやすい〟という位置付けなのですが、最初の「オムニア」の香りは、東洋の神秘をイメージさせるなんとも魅惑的な、20代前半の女性が使いこなせないような香りでした。

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21世紀に生み出された「香りの東方見聞録」


13世紀に中央アジアや中国を旅し『東方見聞録』を記したヴェネツィアの商人、マルコ・ポーロ(日本をジパングと呼んだ人)が航海中に発見した香辛料を惜しみなく使用した香りです。マルコ・ポーロは4年かけて中国にたどり着き、そこで初めてお茶と生糸に出会いました。

ティー・フレグランス10周年の集大成とも言える「オムニア」はマサラチャイの香りです。インドを代表するミルクティーである〝チャイ〟の誕生は、インドに対する英国の過酷な植民地時代(1858年から1947年まで)まで遡ります。

インドで作られた良質な紅茶が、英国に送られ、商品にならない紅茶の葉だけが残され、インドの庶民の手に渡ることになるのですが、そのままでは到底飲めたものではありません。そのため美味しく飲むために大量のミルクと砂糖を足し味付けしていったのがチャイの誕生につながったのでした。

さらにそこにジンジャー、シナモン、カルダモンといった香辛料を足したものをマサラチャイと呼びます。

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マサラチャイとホワイトチョコレートの香り


フレッシュで軽やかな酸味の効いたマンダリン・オレンジを、透かして見るように、ウォータリーなロータスが満たしていく感覚からこの香りははじまります。すぐにシトラスは減退し、温かみのあるジンジャーが加わります。

そして、カルダモンとサフランを中心に、ブラックペッパー、クローブ、シナモン、ナツメグといった香辛料にミルクが注ぎ込まれ、混ざり合います。このようにしてエキゾチックかつミルキーなマサラチャイの香りは誕生してゆくのです。

ロータスがこの香りに及ぼしている影響はとてつもなく、この香りが、かなり控えめで儚く感じられるのも、この水中花のためです。そして、マサラチャイはパウダリーな側面を煌かせ、ソーピィーな広がりも見せてゆきます。

さらにシンクロするようにスモーキーなガイアックウッドが、リッチなホワイトチョコレートを運び込んでくれます。あくまでもアクセント程度の役割を担うからこそ、この香りはグルマンにならないのです。

やがて、ドライダウンするにつれ、クリーミーなサンダルウッドとトンカビーンが円やかに肌の上で存在感を現してゆきます。不思議な表現ですが、ウッディな匂いがする口溶けの良いホワイトチョコレートではなく、ホワイトチョコレートの匂いがする木の香りとなります。

ロータスが、ムスキーな側面により、ボディーローションのように香り全体を引き伸ばすように、奥ゆかしく繊細に肌に密着しながらもほのかに香るクリーミーなマサラチャイの儚い官能性を生み出してくれるのです。

いわゆる【中東オリエンタル】の香りのような、重厚なウッディとぴりりとドライなスパイスが混ざり合ったものではありません。そんなブルガリの東洋のスパイスに対する深い愛が、シルクロードを渡って長い旅路からたどり着くスパイスの香りの総決算である「レ ジェンメ」を2014年に生み出すことになるのでした。

発売当時、ファブリース・ルグロによるボトル・デザインは、香水に興味のなかった人々に対しても、目を引くデザインとして話題になりました。それはキャップが存在せず、2つの円が重なり合い縦の∞を生み出している印象的なデザインです(今も引き継がれている)。ボトルカラーはマサラチャイを連想させるブラウン色でした。

キャンペーン・モデルは、『プラダを着た悪魔』(2006)にも出演したファッション・モデルアリッサ・サザーランドが起用されていました。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「オムニア」を「アーモンド・サフラン」と呼び、「色の異なる粗悪な姉妹品はさておき、オリジナルのオムニアは真に革新的。スイートで、ミルキーなナッツ様のラクトンにサフランの粉っぽい、酸っぱい匂いが混じり合い、まるでサンダルウッドのような満足感がある。」

「抱き締めたくなるパウダリーなアーモンドフローラルも入っている。けれど、このおとなしい配合を退屈から救っているのは、1)おいしそうでスパイシーなアーモンドなのに、食べられませんと宣言する渋いウッディノート、2)フレーバーではなく香水を纏っていることを思い出させる、安っぽいシトラスウッディのコロンの処方がひそんでいる。とてもいい香水で、影響を与えてきたことも確か。ニッチなフレグランスでは「イドール」「トム・オブ・フィンランド」。メジャーでは「マニフィーク」がそう。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:オムニア
原名:Omnia
種類:オード・パルファム
ブランド:ブルガリ
調香師:アルベルト・モリヤス
発表年:2003年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:40ml/9,300円、65ml/12,400円

トップノート:マンダリン・オレンジ、サフラン、ジンジャー、カルダモン、ブラックペッパー
ミドルノート:クローブ、シナモン、ナツメグ、インディアンアーモンド、ロータス、マサラ・チャイ
ラストノート:ホワイトチョコレート、ガイアックウッド、サンダルウッド、トンカビーン