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【ジバンシィ】キセリュズ ルージュ(アニック・メナード)

ジバンシィ
©Givenchy Beauty
ジバンシィ
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キセリュズ ルージュ

原名:Xeryus Rouge
種類:オード・トワレ
ブランド:ジバンシィ
調香師:アニック・メナード
発表年:1995年
対象性別:男性
価格:100ml/17,050円
公式ホームページ:ジバンシィ

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1995年は、ジバンシィにとって『大転換期』でした。

ジョン・ガリアーノによるジバンシィの1996-97年秋冬オートクチュールコレクション。

モデルはシャローム・ハーロウ。

1984年にジバンシィから発売されたウィメンズ・フレグランス「イザティス」はドミニク・ロピオンにより調香されました。そしてそのカップリング・フレグランスとして1986年に発売されたのがアルベルト・モリヤスにより調香された「キセリュズ」でした。

非常に読みにくい不思議な名前のこの香りは、元々「Keryus」の名で発売される予定でした。語源はギリシャ語の「Κύριος/Kyrios」であり、〝主、支配者、マスター〟を意味し、既に少しばかりボトルが製造されていました。

しかし、イヴ・サンローランの「クーロス」(1981)とそっくりな名の響きのため抗議され、ギリシア神話風の「キセリュズ=Xeryus」に変更されたのでした。そのため最初の頃の「キセリュズ」のボトルは、「Keryus」の名の上にステッカーが貼られたものでした。

その続編として1995年に誕生したのが「キセリュズ ルージュ」でした。

1995年とはジバンシィにとってユベール・ド・ジバンシィが、1995-96年秋冬オートクチュールコレクションを最後に引退し、1996年春夏コレクションからジョン・ガリアーノが後継者に抜擢されたジバンシィにとって歴史的な一年でした(1996-97年秋冬コレクションの2回のみでディオールに移籍し、後をアレキサンダー・マックイーンが引き継ぎました)。

炎のように魅惑的でエネルギッシュなオリエンタル・ウッディの香りは、当時新進気鋭の調香師だったアニック・メナードにより調香されました。

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1995年にジョン・ガリアーノはジバンシィの後継者となった。

©Givenchy Beauty

情熱の真っ赤なバラを、バラの香りを一切使わずに、あなたの胸に咲かせるこの香りは、暗闇の中、立ち並ぶ幾千もの蝋燭の先にいる、最愛の女性のもとへと駆け抜けていく、疾走感を、素肌を透かして心にまで感じさせてくれる香りです。

フレッシュでジューシーなグレープフルーツとキンカンに、流れる水のようにアクアティックで独特なグリーンカクタスの甘やかな香りが注ぎ込まれていくようなみずみずしい感覚からこの香りははじまります。すぐにピメントが赤い情熱で香り全体を満たしてゆきます。

冷たいグレープフルーツの果汁と、ぬるいサボテンウォーターと、灼熱地獄から流れる溶岩のように突き刺すピメント×タラゴン×ゼラニウムが絶妙なバランスで、アンバーとひとまとめになり、ジバンシィ初の〝男性のためのオリエンタルの香り〟に包まれてゆきます。

情熱の炎に燃えるウイスキーのような〝渋くて辛い〟それでいて酔わせるような濃厚な色香に溺れていくような感覚の中、赤い海の中に、ドライな流木=シダーウッドを見つけ出し、ギリギリで制御された、動と静の美学の果てに、ジャングルの島へと辿り着きます。

再びサボテンが到来します。今度は、水のようではなく、フルーティな果肉の香りを解き放ってゆきます。情熱と冷静さの間に生い茂るサンダルウッドのクリーミーさに、心地よく翻弄されていく余韻。つまりは何か行動を起こす瞬間に、景気づけに一杯リキュールを口に含んだ瞬間のような〝上がっていく心持ち〟を、素肌で味わうことが出来ます。

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夕陽に照らされ、赤色に染まる情熱のサボテンの香り

©Givenchy Beauty

アニック・メナード様の香りの恐ろしさは、既にこの初期の香りから存在していたことが分かります。情熱の赤いバラの香りではなく、サボテンの緑が夕陽に照らされ情熱の赤いサボテンの香りとなるのです。バラの棘が女性的であるならば、サボテンの棘は男性的なイメージなのです。

喉が渇くまで水を我慢させた後に、水ではなく、酔わせるハーブ系のリキュールを飲まざるを得ない状況に追いやるように、素肌ごと酔わせていくのです。

赤が象徴する、セクシーな男性のイメージが全て詰め込まれた香りです。男が男として生まれたことに喜びを感じさせてくれる香りとも言えます。女性にとって、スパイスが爆発するこの香りの爆発に巻き込まれたら、とんでもない不幸が舞っているかもしれない、そんな危険な時限爆弾のような男のヒリヒリする魅力にハートを撃ち抜かれる香りとも言えます。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で「ときどき、アニック・メナードの作品(ブラックヒプノティック プワゾン)に、モダニストの焦燥感を感じ取ってしまう。クラシカルな雰囲気の構成を、モダンな材料のみで徹底的に作り直して築き上げたいという衝動を。それは香水業界の中でも、もっともむずかしいとされている。ひとえに天然の香料の複雑な香りを、合成香料の新しいアコードで表現しようということだけでもたいへんな労力だ」

キセリュズ ルージュは「アビルージュ」に感覚的には似ているが、最終的には説得力に欠ける。甘過ぎるせいだろうか?それとも、安っぽ過ぎるせいだろうか?説明するのはむずかしい。傑作まであと一歩といった感じで、もどかしい」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:キセリュズルージュ
原名:Xeryus Rouge
種類:オード・トワレ
ブランド:ジバンシィ
調香師:アニック・メナード
発表年:1995年
対象性別:男性
価格:100ml/17,050円
公式ホームページ:ジバンシィ


トップノート:メキシコ産&アメリカ産グレープフルーツ・エッセンス、キンカン、サボテン
ミドルノート:ピメント・アコード、アフリカン・ゼラニウム
ラストノート:カナダ産シダーリーフ・エッセンス、サンダルウッド、ホワイトムスク