ルージュ トラファルガー エスプリ ドゥ パルファン
原名:Rouge Trafalgar Esprit De Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:80ml/ 57,420円
公式ホームページ:ディオール
ディオールの「エスプリ ドゥ パルファン」5部作とは?

©DIORBEAUTY
ジュエリーの世界に例えると、「エスプリ ドゥ パルファン」は作品の中心となる石です。「エスプリ」は、オートクチュールと香水を最も直接的に結びつけるものです。そのためオリジナルの香りをよりミニマルな視点でとらえ、贅沢な濃度で力強くその香りの特長を強調しています。クリスチャン・ディオールは常に自分をクチュリエの調香師だと考えていましたが、「エスプリ」はその考えを体現しています。
フランシス・クルジャン(以下すべての引用は彼からのもの)
「ラ コレクシオン プリヴェ」のどの香りに取り組むか選ぶにあたり、私はメゾンの歴史と自分自身の歴史の両方に目を向けた。「ラッキー」「グリ ディオール」「ルージュ トラファルガー」が、ディオールの歴史に最も近いと感じました。そして「アンブル ニュイ」と「ウード イスパハン」は、個人的に私に訴えかけてきました。特に後者は、祖父母のアルメニアのルーツに敬意を表し、感傷的な香りだと感じました。
2018年から発売されているディオールのフレグランスの最上級コレクション「メゾン クリスチャン ディオール」が2025年2月7日に「ラ コレクシオン プリヴェ」の名に戻り、原点回帰する過渡期である2024年9月6日にコレクション内で「エスプリ ドゥ パルファン」5部作が発売されました。
ディオールの初代調香師であるフランソワ・ドゥマシーが生み出した5つの傑作を、二代目調香師フランシス・クルジャンが、メゾンの伝統を活かして、ファッションを濃縮した「エスプリ ドゥ パルファン」へと昇華させました。特別なものをさらに特別なものにするようにして生み出された香りです。
元々70年代後半から、フランスの贅沢品税から逃れるために、ディオールは「エスプリ ドゥ パルファン」という新しいフレグランス・ラインを作っていました。その中には「ミス ディオール」や「プワゾン」もありました。クルジャンはこのカテゴリーを復活させたいと考えていました。
パヴロヴァにインスピレーションを得た、究極のレッドチェリーの香り

クリスチャン・ディオール(右)による1953年のコレクション風景。@Christian Dior

トラファルガー・ドレス @Christian Dior

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「エスプリ ドゥ パルファン」は、メゾンの最も複雑でユニークなフレグランスを掘り下げ、「香りのシルエットを再定義する」夢の機会でした。
これらの新しいフォーミュラは、オリジナルを単純に増幅したものでも、オリジナルに刹那的なひねりを加えたものでもない、むしろ十分に親しみを感じるものにまったく新しい魅力的なテイクを加えたものである。
オリジナルのファンには、彼らのシグネチャーフレグランスの新たな一面を発見してもらえるだろう。おそらくエスプリは、日常使いするオリジナルのナイトドレスのような役割を果たすことでしょう。
一方、ディオールのフレグランスの王冠を飾る宝石のようなフレグランスに初めて触れる人には、5つの特別な香りを、是非楽しんでもらいたい。
「エスプリ ドゥ パルファン」5部作のうちのひとつである「ルージュ トラファルガー エスプリ ドゥ パルファン」のオリジナルは、2020年に発売された「ルージュ トラファルガー」でした。
「トラファルガー」という言葉がディオールによってはじめて使われたのは、1953年のオートクチュール・ショーにおいてでした。当時、ひとつのショーで200着以上ものデザインが発表されていました。そんな二時間の長丁場のショーが中だるみしないようにキラードレスとして「トラファルガー」と呼ばれる赤い(ルージュ)ドレスのシリーズが、サタンなどといった挑発的な名前がつけられ発表されたのでした。
元々「トラファルガー」の語源は、1805年10月21日に、スペインのトラファルガー岬の沖で行なわれた「トラファルガーの海戦」から来ています。この海戦の敗北により、ナポレオン・ボナパルトの英国侵略の野望は潰えたのでした。
以後、長年にわたり、「トラファルガー」という名がディオールの赤いリップスティック、赤いアイシャドウ、チーク、アクセサリーのコレクションなどで使用されてきました。

フランスで最も有名なル カフェ マルリーのパヴロヴァ。
フルーティな香りは、一般的に人気があり、非常に主流であると見なされているため、ラグジュアリーなフレグランスには浸透しない香りのカテゴリーだ。
フルーティな香りを取り入れることで、オリジナルのスピリットを受け継ぎながらも、力強さ、重厚さ、激しさをバックボーンとしたエレガントなアコードを見つけることにしました。
このディオールの「トラファルガー」の究極形態として、スパークリングするチェリーの洗礼を受け止めるバラの気高き香り「ルージュ トラファルガー エスプリ ドゥ パルファン」が誕生したのでした。
クルジャンは、この究極のチェリーを生み出すために英連邦発祥のケーキ、パヴロヴァにインスピレーションを得たのでした。
チェリーの赤い衝撃からはじまる、運命の赤いドレスの香り

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使われている原料をすっきりと整理し、削ぎ落し、研ぎ澄まし、意図した以上の効果を引き出し、大胆に破壊しました。私は、これらの香りがその力強い香りの軌跡を通して、真の芸術的ポジションを確信するものにしたかったのです。
かつて私の先生がこう言っていました。「花の香水を作るとき、花だけだったら花は見えません。コントラストが必要なのです」
最初から最後までしっかりとチェリーが君臨するこの香りは、ピリっとスパークリングするピンクペッパーと甘酸っぱく砂糖漬けされたチェリーの赤い衝撃からはじまります。
スプレーを吹きかけた瞬間、フレッシュな摘み立てのチェリーと砂糖漬けされた熟したチェリーが、泡立つスパークリングワインとひとまとめになるような、贅沢なチェリーの感覚に満たされていくようです。
この香りの戦慄的なところは、ひたむきに、迷うことなく鮮やかなチェリーカクテルシャワーが、素肌の上に咲き誇るブルガリアン・ローズとターキッシュ・ローズのバラの二重奏の上に、降りかかるところにあります。
このあたりで、この香りが人間ならば〝美人もここまでくるとかえって恐ろしい〟そんな存在であることを気づかせてくれるでしょう。ディオールのレッドドレスは、一度着ると脱ぐことの出来ない魔性のドレス。それはやがて、ジャミーなストロベリーやブラックカラントなどの赤い果実が際限なく追加され、まるであなた自身が極上のスイーツの化身となるような〝食べたくなる赤〟で周りを魅了していくのです。
コレクションの中で、クリスチャン・ディオールがクチュリエとして、第二次世界大戦の血塗られた〝赤の時代〟から、女性の美しさを開花させる情熱に満ちた〝赤い時代〟へと突き進んでいく、ディオール黎明期の精神をもっとも強く反映した、情熱の赤い薔薇と燃えるような赤いチェリーを思わせる、赤い運命のドレス香りです。
クルジャンがかつて調香したバーバリーの「バーバリー ハー」の遺伝子を感じさせる香りですが、この香りには、たっぷりベリー系のフレグランスが感じさせる媚びた感じや、チープな子供っぽさは一切存在しません。ディオールのレッドドレスを着ることが出来る女性のために生み出された、最初から最後まで高級感に満ちたベリー・フレグランスです。
トム・フォードの「ロスト チェリー」の真逆を行く、青少年の夢のような憧れの大人の女を生み出す「ロスト・チェリー(ボーイ)」の香りと言えます。若い男性にとってのチェリーボムです。
香水データ
香水名:ルージュ トラファルガー エスプリ ドゥ パルファン
原名:Rouge Trafalgar Esprit De Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:80ml/ 57,420円
公式ホームページ:ディオール
トップノート:チェリー、ピンクペッパー
ミドルノート:ブルガリアン・ローズ、ターキッシュ・ローズ
ラストノート:レッド・フルーツ