ラッキー エスプリ ドゥ パルファン
原名:Lucky Esprit De Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:80ml/ 57,420円
公式ホームページ:ディオール
ディオールの「エスプリ ドゥ パルファン」5部作とは?

©DIORBEAUTY

ディオールの1955年のショーでランウェイを歩くルーシー〝ラッキー〟ダウファー © Christian Dior
ジュエリーの世界に例えると、「エスプリ ドゥ パルファン」は作品の中心となる石です。「エスプリ」は、オートクチュールと香水を最も直接的に結びつけるものです。そのためオリジナルの香りをよりミニマルな視点でとらえ、贅沢な濃度で力強くその香りの特長を強調しています。クリスチャン・ディオールは常に自分をクチュリエの調香師だと考えていましたが、「エスプリ」はその考えを体現しています。
フランシス・クルジャン(以下すべての引用は彼からのもの)
「ラ コレクシオン プリヴェ」のどの香りに取り組むか選ぶにあたり、私はメゾンの歴史と自分自身の歴史の両方に目を向けた。「ラッキー」「グリ ディオール」「ルージュ トラファルガー」が、ディオールの歴史に最も近いと感じました。そして「アンブル ニュイ」と「ウード イスパハン」は、個人的に私に訴えかけてきました。特に後者は、祖父母のアルメニアのルーツに敬意を表し、感傷的な香りだと感じました。
2018年から発売されているディオールのフレグランスの最上級コレクション「メゾン クリスチャン ディオール」が、2025年2月7日に「ラ コレクシオン プリヴェ」の名に戻りました。そんな原点回帰する過渡期であった2024年9月6日に、コレクションのなかに「エスプリ ドゥ パルファン」5部作が発売されました。
ディオールの初代調香師であるフランソワ・ドゥマシーが生み出した5つの傑作を、二代目調香師フランシス・クルジャンが、メゾンの伝統を活かして、ファッションを濃縮した「エスプリ ドゥ パルファン」へと昇華させました。特別なものをさらに磨き上げ生み出された〝究極のプリヴェ〟です。
元々70年代後半から、フランスの贅沢品税から逃れるために、ディオールは「エスプリ ドゥ パルファン」という新しいフレグランス・ラインを作っていました。その中には「ミス ディオール」や「プワゾン」もありました。長らくクルジャンはこのカテゴリーを復活させたいと考えていたのでした。
50年代のディオールのマヌカンのような気高きスズランの香り

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「エスプリ ドゥ パルファン」は、メゾンの最も複雑でユニークなフレグランスを掘り下げ、〝香りのシルエットを再定義する〟夢の機会でした。
これらの新しいフォーミュラは、オリジナルを単純に増幅したものでも、オリジナルに刹那的なひねりを加えたものでもない、むしろ十分に親しみを感じるものにまったく新しい魅力的なテイクを加えたものです。
オリジナルのファンには、彼らのシグネチャーフレグランスの新たな一面を発見してもらえるでしょう。おそらくエスプリは、日常使いするオリジナルのイブニングドレスのような役割を果たすことでしょう。
一方、ディオールのフレグランスの王冠を飾る宝石のようなフレグランスに初めて触れる人に対しても、5つの特別な香りを、是非楽しんでもらいたいと願っています。
「エスプリ ドゥ パルファン」5部作のうちのひとつである「ラッキー エスプリ ドゥ パルファン」のオリジナルは、2018年に発売された「ラッキー」でした。この香りは、クリスチャン・ディオール(1905-1957)が愛した〝幸福を呼ぶ花〟スズランをテーマにしています。
「ラッキー」のスズランは多くのホワイトフラワーとブレンドされていました。そのためクルジャンは、この香りのスズランは、他の花の香りに埋もれてしまったと感じていました。
これを修正するために、エスプリでは配合を減らして、スズランのブーケを洗練させてウッディな香りと対比させることにしました。そのことにより、いまだかつてないほど官能的な「ラッキー」が誕生しました。
それは〝幸運の守り神〟としてのスズランというよりも、ムッシュが愛したマヌカン、ルーシー〝ラッキー〟ダウファーの妖艶さを伴わせた類い稀なる気品を感じさせるスズランと言えます。日本においては、5部作の中で最も売れている香りです。

ディオールを着るルーシー・ダウファー、1952年 © Christian Dior

ルーシー・ダウファーとクリスチャン・ディオール、1955年 © Christian Dior
クルジャンにとってのスズランの思い出

若き日のフランシス・クルジャン。
フランシス・クルジャンにとって、スズランの香りは、特別な思い入れがあります。
それは彼が1985年に、14歳の時バレエダンサーになる夢を諦めた時に、ファッション雑誌『VSD』を手に取り、イヴ・サンローランの「オピウム」を共同で開発したジャン=ルイ・シュザックなどの調香師に関する記事を読んだ瞬間からはじまる思い出です。
クルジャンは、即座に調香師になりたいと考え、ディオール・パルファムとランコムにそれぞれ手紙を書き、どうすれば調香師になれるかを尋ねました。そしてランコムの幹部から返事を受け取りました。
そこには当時ヨーロッパで数少ない正式な調香学校の一つであったヴェルサイユにある香料国際高等学院イジプカ(ISIPCA)のアドレスが書いてありました。
そして苦学の末に入学することとなりました。トレーニングの1年目に、調香師としての香りの吸い込み方を学び感動を覚えました。それは速く、そして優しく吸い込むことにより、脳が飽和状態にならないように、最小限の空気だけを吸い込むというコツでした。
さらに天然香料から合成香料まで、何千もの成分を香りだけで識別するよう指導され、アコードと呼ばれる独自のフレグランスブレンドを作るトレーニングがはじまりました。この時、はじめて作ったアコードがスズランでした。
「スズランのアコードを作った日、私は自分が神になったと思いました。スズランの花は繊細すぎるので、天然のエッセンスを蒸留することはできません。しかし、4つの原料――刈りたての草の香り、アーモンドの香り、安物のラベンダーの香り、そして虫歯の香り――を揃えれば、生み出せるのです」
クルジャンにとってスズランの香りは、それを嗅ぐたびに、自分の心をあの頃の感動へと立ち返らせるタイムマシーンなのです。そんな彼にとって特別な存在である〝スズランの香り〟に取り掛かったのが「クルジャンのラッキー」なのです。
レディディオールを持つホワイトミニドレスが似合う女性の香り

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使われている原料をすっきりと整理し、削ぎ落し、研ぎ澄まし、意図した以上の効果を引き出し、大胆に破壊しました。私は、これらの香りがその力強い香りの軌跡を通して、真の芸術的ポジションを確信するものにしたかったのです。
かつて私の先生がこう言っていました。「花の香水を作るとき、花だけだったら花は見えません。コントラストが必要なのです」
爽やかな水のようなスズラン。クリーミーでありながら透き通るようなオリジナルの「ラッキー」が、レザーというよりも、砂糖漬けされたスズランのすっきりとしたグリーングルマンな甘さで満たされていくようにしてこの香りははじまります。
すぐに素肌の上に、レディディオールなどのラグジュアリーなバッグで感じることが出来る、洗練されたカーフレザーの香りが広がってゆきます。
春の太陽の下、裸足で、軽やかに草原を駆け抜けていくホワイトワンピースを着た、笑顔が魅力的な女性が、太陽が沈み、夜になり、一転して、スティレットヒールを履き、妖艶なホワイトミニドレスを着て、甘い微笑でパーティの男達を魅了する、そんな官能的なスズランの香りです。
つまり、オリジナルの「ラッキー」が春の芽吹きを暗示していたとすれば、その「エスプリ」は満開の庭園です。確かにスズランが主役ですが、花の青々とした緑の特徴が引き出され、きらめきと爽やかさを演出しているのです。
香水データ
香水名:ラッキー エスプリ ドゥ パルファン
原名:Lucky Esprit De Parfum
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2024年
対象性別:ユニセックス
価格:80ml/ 57,420円
公式ホームページ:ディオール
トップノート:スズラン
ミドルノート:レザー
ラストノート:ウッディ・ノート