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【ゲラン】フェーヴ グルマン(クリスティーヌ・ナジェル/オーレリアン・ギシャール)

ゲラン
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フェーヴ グルマン

原名:Fève Gourmande
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル、オーレリアン・ギシャール、デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2023年
対象性別:女性
価格:100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン

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ついに復活した「グルマン コキャン」

オリジナルの「グルマン コキャン」©GUERLAIN

2005年、パリ・シャンゼリゼ通り68番地のゲラン本店のリニューアルオープンを記念して発売された「ラール エ ラ マティエール(芸術と貴重なる生の素材)」コレクション。

全ての「ラール エ ラ マティエール」の香りは、ある貴重な1つの素材に絞り、それをいまだかつてない芸術的な側面から、新たな光を当て、素材の深みやコントラストを強調することにより生み出されています。

この〝世界で最も貴重な原料を使ってゲランのパッションを表現して欲しい〟というコンセプトにより生み出されるコレクションから、2023年に発売された「フェーヴ グルマン」は、デルフィーヌ・ジェルクにより調香されたことになっているのですが、実際はそうではありません。

「女性の官能性を呼び覚ます」をコンセプトに、2008年に生み出されたゲランのエクスクルーシブ・フレグランス・コレクション「エリクシール シャルネル(=肉感的な秘薬)」から、最初に発売された3作品のうちのひとつである「グルマン コキャン」が新たなる名前を与えられたものです。

このコレクションは、時のクリエイティブ・ディレクター、シルヴェーヌ・ ドゥラクルトマチルド・ローランと共にジャン=ポール・ゲランの下で学んだ女性)により生み出されました。

「チョコレートは、身体に塗りたくるものではなく、食べるものよ!」と、説教されてしまいそうなチョコグルマンの香りは、クリスティーヌ・ナジェルオーレリアン・ギシャールにより調香されました。永らく復活が望まれていた香りです。

〝フェーヴ入りのグルマン〟と新たに名付けられたこの香りの意味は、フランス語の「フェーヴ」を「空豆」と直訳するのではなく、フランスで毎年1月6日の公現祭に食べるガレット・デ・ロワ=「王様の菓子」という、折込パイ生地にアーモンドクリームがサンドされた伝統菓子の中に入っている、フェーヴと呼ばれる小さなおもちゃの意味です(切り分けたときにコレが入っていると「王様」と呼ばれる)。

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本物のチョコレートより食べたくなる、危険この上ないグルマン。

©GUERLAIN

子供時代を思い起こさせるカカオから、これまでにない成熟した魅力が引き出されました。フェーヴ グルマンでは、スモーキーなティーアコードの深みとローズの輝くような優雅さが独特にブレンドされています。

絵画に例えるなら、それはサルバドール・ダリが描くシュールレアリスム作品です。

デルフィーヌ・ジェルク

元々の名前である「グルマン コキャン」とはフランス語で〝いたずらな食いしん坊〟の意味です。無邪気で大胆な魅力をふりまく女性をイメージした、デリシャスでセクシーな香りです。そして、その名に全く遜色がないほどにワンプッシュした瞬間から清いまでに甘いグルマンの香りが鼻腔をくすぐります。

ただし、明らかにオリジナルよりフレッシュな(濃厚ではない)黄金のラム酒にバニラが溶け込んでいく情景からこの香りははじまります。すぐに、クリーミーなラム×バニラに、ビターチョコレートのようなカカオとパチョリが重なることで美しさを高めながら、高級チョコレートの食感を素肌の上に引き伸ばしてゆきます。

やがて、ピンク色の砂糖漬けされたローズ(華やかな正統派ローズの香りも伴うベリーの香り)に渋いスモークティーが注ぎ込まれ、甘くてビターなチョコレートを神秘的な香りで引き立ててゆきます。どうやら「グルマン コキャン」に、デルフィーヌがさらに手を加えたようです。スモーキーティーが透き通るように煌めきます。

かくして本物のチョコレートより食べたくなる、チョコレートが素肌の上に生み出されていくのです。恍惚のグルマン、昇天するグルマンとでも申しましょうか、とにかく危険この上ないグルマンです。

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子は抱きつきたくなり、夫は抱きしめたくなる香り

©GUERLAIN

しかし、何よりも、この香りを創造した二人の女性(シルヴェーヌ・ ドゥラクルトとクリスティーヌ・ナジェル)の恐ろしさは、女性の官能性を呼び覚ます香りを作ると同時に、子供たちに母親への強い愛情を掻き立てる香りを創造した所にあります。

昼間は、子供が抱きついてくる香りであり、夜は、夫が抱きついてくる香りです。それは母性愛とロマンティックな感情を同時に掻き立てる「奇跡のグルマン」なのです。

ただし、母性愛を必要とせず、ロマンティックな感情よりも、騒がしい恋愛を求める時には、不愉快以外の何物でもない「甘ったるい悪臭」となります。ある一定以上のレベルの香水の面白いところは、その人の置かれている状況を如実に反映するところにあります。

数滴の「ドゥーブル ヴァニーユ」をブレンドすると、ダイヤモンドシンドロームを香りで体感することが出来るでしょう。合計約10万円ものフレグランス・コンバイニングをして、冷静な判断が出来る人などそうそういない。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、オリジナルの「グルマン コキャン」を「過剰なジンジャーブレッド」と呼び、「調香師ジャック・ゲランが史上もっとも偉大なパティシエだとしたら、ゲランは自分たちが発明し、完成させ、今は批判ばかりしているグルマン(美食)系の香水に追従する必要はない。昔のゲランが手がけたグルマン系は大家族の夕食、とりわけ調理中の風景をすべて詰め込んだような香りだった。」

「「ミツコ」はピーチと一緒にフロアワックスの香りがするし、「シャリマー」もバニラとともにペンキの臭いがする。食べ物をそのまま香りに見立てても胸が悪くなるような香水しかできないことは、すでに90年代にわかっていたはず。」

「今さら試みるなら、せめてゲップではなく涎を誘うものであってほしかった。これではまるで、カサノバの物語に出てくる18世紀の貴族だ。食べ過ぎの消化不良で死にそうな彼らは、飢えた物乞いを見て「お前のようになりたい」と叫ぶのだ。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:フェーヴ グルマン
原名:Fève Gourmande
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:クリスティーヌ・ナジェル、オーレリアン・ギシャール、デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2023年
対象性別:女性
価格:100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン


シングルノート:カカオ、ラム、スモーク、ローズ、ティー、パチョリ