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【ディオール】ラッキー(フランソワ・ドゥマシー)

クリスチャン・ディオール
©Christian Dior
クリスチャン・ディオール
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ラッキー

原名:Lucky
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール

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『21世紀のディオール』のスズランの香り

ムッシュ・ディオールの胸元に注目。©Christian Dior

ディオールオム2014年秋 デザイナー:ラフ・シモンズ ©Christian Dior

ムッシュ・ディオールのポケットには、エンピツとノートのほかに、もうひとつ大切なものが入っていた。それは、ディオールの言葉によれば、幸運(ラッキー)をもたらすチェーンだった。

ハートがふたつ、スズランの芽がひとつ、それに、金の硬貨、木の枝先、四つ葉のクローバー、そして、金の星がついたチェーンで、ディオールはポケットに手を突っ込んでは、そのチェーンをいじるのが好きだった。

『ディオールの世界』 川島ルミ子

私がこのコレクションの中で最も苦労した香りは「ラッキー」でした。幸運のお守りとしてオートクチュールの服にスズランの小枝を忍ばせていたムッシュ・ディオールの習慣に敬意を表したいと思いました。ただし、それがフレグランスのメインノートになるのではなく、ディオールの服を着たマヌカンがランウェイを歩いた時、はじめてスズランの存在が現れるように、後から徐々に香りが現れるようにしたかったのです。

フランソワ・ドゥマシー(2019年のインタビューにて)

ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」という3種類の香りからはじまりました。そして、2009年に「アンブル ニュイ」が発売され2017年までコンスタントに新作がリリースされていました。

このコレクションが、2018年に「メゾン クリスチャン ディオール」として一新されました。そして、新作のうちのひとつとして「ラッキー」が発売されました。クリスチャン・ディオール(1905-1957)が愛した〝幸福を呼ぶ花〟スズランをテーマに、ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。

ムッシュ・ディオールは、ファッションショーのランウェイにおいて、ラッキーチャームとして、ドレス、帽子、シューズの見えないところにスズランの小枝を忍ばせていました。そして、ムッシュの葬式においても、その棺はスズランで覆われていたのでした。

1957年10月29日、クリスチャン・ディオールの葬儀において、ムッシュの棺はスズランで覆われた。

そんなムッシュ・ディオールが生前エドモン・ルドニツカと共に生み出したスズランの香りが、「ディオリシモ(ディオリッシモ)」でした。

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オゾンノートによりフルーツが香るスズラン

ジョン・ガリアーノ時代のディオール、2007FW、モデル:ジゼル・ブンチェン ©Christian Dior

©Christian Dior

©DIORBEAUTY

「ラッキー」の香りに身を置くと、すぐにスズランの香りがするわけではありません。最初は白い花のブーケからはじまります。やがてゆっくりとスズランの香りが漂ってくるのです。それは丁度、ディオールのドレスを着ているとき、裾の内側にスズランがあることに気づかないのと同じ考え方です。後になって初めて気づくのです。まるで〝幸運〟を発見したように、スズランが香るのです。

フランソワ・ドゥマシー

ディオールの「ディオリシモ」を生み出したエドモン・ルドニツカにゆかりのある二人の調香師が、2016年にそれぞれのスズランの香りを生み出しました。ジャック・キャヴァリエの「アポジェ」とジャン=クロード・エレナの「ミュゲ ポースレン」です。

2016年は『スズランの復権』の年でした。そんな流れに対して、極秘裏に〝ディオールの新たなるスズランの香り〟を創作中だったフランソワ・ドゥマシーは、大きなプレッシャーを感じることになりました。

そういう事情もあり「メゾン クリスチャン ディオール」の最初の12作品の中で、〝最も苦心した作品〟であると回想している「ラッキー」は2018年に発表されたのでした。

そんな〝幸運の花〟の香りは、ロマンティックなホワイトフローラルのブーケからはじまります。甘やかなジャスミンとローズを中心に、チューベローズ、オレンジブロッサム、イランイランが、アルデハイドによって、軽やかにエアリーにかき混ぜられてゆきます。

すぐに、「アクア ディ ジオ」のようなオゾンノートがフルーティさを降り注ぎ、ホワイトフローラルがクリーミーさを増す中、フレッシュグリーンなスズランが花を咲かせるのです。

爽やかな水のようなスズランがそこにあります。クリーミーでありながら透き通るような「ラッキー」を、「ディオリシモ」にレイヤードすることを強くお勧めします。びっくりするほど生命力に溢れるスズランが肌の上に誕生するはずです。

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ディオールのスズランに挑戦したデュマシー

ディオール2016SS ©Christian Dior

三種類のディオールのスズランについて、MCDにとても詳しい知人に徹底分析して頂きました。以下この知人の言葉をお借りましょう。

オリジナルの「ディオリシモ」にはオペラ歌手の風格があり、ふくよかで肉感的です。そして、情熱的な色彩を感じる圧倒的で伸びやかな歌声で存在感を示してくれます。

一方、現行の「ディオリシモ」はスーパーモデルです。肉感は失われて線の細さはあるけれど芯の強さを感じさせ、細部に煌めきがあり、品格がある。

最後に、「ラッキー」は、繊細で儚く、美しさと脆さの境界線で静かに佇む女優。ただ、時間と共に炙りだす絵のように現れるスズランの生っぽさが生きる事への制限(=香料の規制)を受け入れながらも凛として香る、そんな印象です。

自由に表現・創作ができた昔と違い、様々な制約の中で、ドゥマシーは現代の調香師の中では最も恵まれた環境 <使える香料・設備・チーム> にいる一人として、「ディオリシモ」の再調香に向き合った結果、ルドニツカの類まれなる才能に対して、さらに畏怖の念が高まったことだろうと思います。

だからこそ、ディオリシモを改編せざるを得なかった罪滅ぼしとして、或いは引退を見越して、ルドニツカへのオマージュではなく、50年のキャリアの集大成として、〝スズランの香り〟に挑戦したのではないかと感じるのです。

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香水データ

香水名:ラッキー
原名:Lucky
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール


シングルノート:スズラン、ホワイト・フラワーズ、オゾンノート

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