作品データ
作品名:アメリカン・ジゴロ American Gigolo (1980)
監督:ポール・シュレイダー
衣装:ジョルジオ・アルマーニ
出演者:リチャード・ギア/ローレン・ハットン/ニーナ・ヴァン・パラント
少しだけ登場するパープルワンピ
ミシェル・スタットン・ルック8 パープルワンピ
- パープルのロングワンピ、半袖、深いVゾーン
80年代オンナの大人のエレガンス
ミシェル・スタットン・ルック9 究極のエレガンス
- ふわっとしたラペルの清潔感あふれるベージュの半袖ブラウス。袖が美しくドレープを描く
- キャメル色の細身のベルト
- サンドベージュのペンシルスカート
- ボッテガ・ヴェネタの茶色のクラッチ
- カルティエのタンク
本作におけるミシェルの最も美しい瞬間を示すファッションは、この後に続く3つの80年代スタイルでしょう。そこには、21世紀の現代にも適用できる大人の女のエレガンスがあります。
何よりも衣服はコロコロ変わっていっても、決して変わらないボッテガ・ヴェネタのクラッチ・バッグ。その一点に対する拘りが、ミシェルという女性の本質を示してくれます。それは彼女の性質が、有閑マダムの暇つぶしで、若い男性をとっかえひっかえ遊んでいるという性質ではなく、一つのものを愛する性質であるということです。
ローレン・ハットンの革命
40歳を過ぎて、ほかの人がメイクを担当したときはひどかった!まるで売春宿の女将みたいだったわ。でもローラ・メルシエが、中年にさしかかった素敵な女性というコンセプトで私をメイクしてくれたの!
ローレン・ハットン
本作に出演後、ローレン・ハットンは、40歳を過ぎてからモデルの仕事がほとんど来なくなってしまいました。もっとも、当時のファッション・モデルにとって、それはローレンだけの話ではありませんでした。1970年代から80年代にかけて。「若さこそがパワーだ!古いものは悪だ!」という風潮があったのです。
そして、ローレンはもはやファッション雑誌を見ることもやめていました。
つらかったのです。自分は容赦なく年をとっていくのに、モデルたちはどんどん若くなっていくんですもの。
ローレン・ハットン
もうファッション・モデルの仕事は辞めようと、バーニーズ・ニューヨークからの広告依頼を断ります。しかし、とりあえずスティーヴン・マイゼルという男に撮ってもらう事になり、仕事を引き受けたのでした。そして、その時掲載された広告写真にローレンは衝撃を受けたのでした。
マイゼルはわたしを女の子のように撮らなかったはじめてのフォトグラファーです。その広告が出てから、私は道で女性に声をかけられ、こういわれるようになりました。「ありがとう。あなたのおかげで、ようやくわたしたち中年女性が忘れ去られた存在ではなくなったわ」
ローレン・ハットン
47歳から、写真修正を一切行わないことを条件にファッション・モデルとして復帰した1989年のバーニーズの広告がきっかけとなり、若さを強調したファッション広告に傷ついた中年女性たちが自信を取り戻したのでした。
若さだけがもてはやされるのは、歴史的、社会的な問題です。・・・その広告が出るまで、だれもわたしたち中年女性には目もくれませんでした。それは何百年も続いてきた歴史的な事実で、若さを失うや、女性はご用済みになってしまいます。けれども、バーニーズの写真は、40歳をすぎても女性が美しくセクシーでいられることを示してくれました。
ローレン・ハットン
ローレン・ハットンの革命。それは、1989年のバーニーズ・ニューヨーク、及び、レブロンのエテルナ27のキャンペーン・モデルとして、フォトグラファー・スティーヴン・マイゼルと共に生み出された革命だったのです。
いままでの人生で、この3年間(バーニーズとレブロンと専属契約した1989年から1991年の3年間)ほど自慢できる年はありませんでした。モデルというのは、女らしさを体現する存在です。あらゆるサイズ、体型、年齢のモデルが生まれるべきですし、現在では実際にそうなりつつあります。・・・わたしは自分がやりたいことだけではなく、人のためになることを見つけたのです。何よりも見せかけだけの職業に思えたものを、重要な職業に変えるお手伝いができたのではないかと、自負しています。
ローレン・ハットン