ジョルジオ・アルマーニの革命
全てはブロンディの『コール・ミー』からはじまりました。いいえ、もっと正確に言うならば、ジョルジオ・モロダーのシンセサイザーからスタートしました。
そう1980年代のファッション・シーンはこの瞬間始まったのです。無機質なシンセサイザーの響きと、デボラ・ハリーの「お暇ならいつでも電話してね」という誘いと、マリブを疾走するメルセデス・ベンツ450SLと、ジョルジオ・アルマーニのスーツを着たリチャード・ギア(1949-)から始まったのでした。
「狂騒の80年代」の幕開けです(日本のバブル景気は1986年12月から1991年2月)。映画だけでなく、ファッション史上、この作品が生み出した革命は、それまでファッションに全く興味のなかった男性達にとって、アルマーニという単語が、女性にとってのシャネルの如き響きとなったところにあります。
それは『アメリカン・ジゴロ』という映画の中で、お金持ちのご婦人に対して、知性と美貌と夜の技能を生かし、奉仕する仕事(ママ活)に従事しているジュリアン・ケイという青年の描写が与えた影響でもありました。
それは、肉体も含めて、女性が男性を見定める時代の開幕宣言であり、今まで男性が女性に対してしていたことが、男性にも適応されることをはっきりと示した作品でした。そう、自分の奥様・彼女に対してセクシーさを求めるように、女性が自分の旦那様・彼に対してセクシーさを求めるようになったのです。
この感覚の変化をもたらしたのが、ジョルジオ・アルマーニの革命のもっともすごい点でした。
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1980年はアルマーニを着たリチャード・ギアと共にやって来た!
ジョン・トラボルタがアルマーニを抜擢した!
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ロデオ・ドライブにかつてあったJuschiとカートジェイガーの店舗の前にて。
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ブティックにて。三面鏡の前でジョルジオ・アルマーニのスーツを仕立てるジュリアン・ケイ。作中では使用されなかったアルマーニのコートが右端にある。
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そのアルマーニのコートを着るリチャード・ギア。
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ビバリーヒルズでコートを着ることはほとんどありません。
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中のストライプのシャツとネクタイのバランスが絶妙です。
当初、ジュリアン・ケイ役は、『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)で大スターになったジョン・トラボルタが演じることで確定していました。そして、彼のマネージャーは、監督のポール・シュレイダーに、ジョルジオ・アルマーニの衣裳を使用することを提案しました。
1979年当時、アルマーニは、アメリカでは全く無名の存在だったため、3人はミラノに飛び、アルマーニとミーティングを重ねました。結果的に、トラボルタは降板するも、アルマーニは、本作の衣裳を担当することになり、アルマーニ革命の狼煙は上げられたのでした。
撮影開始まで、僅か2週間を切ったときに、急遽リチャード・ギアの出演が決定したため、トラボルタの188cmのスマートな体型に合わせて作っていたアルマーニの衣裳は、180cmはないと思われるリチャード・ギアのマッチョな体型に合わせてすべて作り直されたのでした。
ちなみにラクダの毛のトレンチコートは、『アメリカン・ジゴロ』のスチルにはよく出てきますが、結局は作中では使用されませんでした。アルマーニのメンズコートの特徴ともなるボタンがなく、シングルで、サッシュベルトを締めるという、かなりエレガントなデザインです。
ジュリアン・ケイのファッション1
オープニング・ルック
- サンドベージュのシングル・ジャケット、2つボタン、ベントレス、ノッチラペル、フラップポケット
- グレーのプリーツ入りのトラウザー、ハイウエスト
- ライトブルーのストライプシャツ、フラップポケットの位置に特徴がある
- 白のピンドットのあずき色のタイ
- タン色の細レザーベルト
- ダークブラウンのカップトゥ・レザーシューズ
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ライトブルー地にスカイブルーのストライプが入っているシャツ。
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そして、このポケットの位置。左胸下にあるフラップポケット。
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ニーナ・ヴァン・パラントのメンズシャツ姿も魅力的です。
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アースカラーのジャケットと、スカイブルーのシャツの見事なバランス。
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アメリカン・ジゴロを象徴する写真。
ジュリアン・ケイのファッション2
ダブル・ジャケット×ブルーデニム
- サンドベージュのダブルのジャケット、パッチポケット、ノーベント、少しワイドなノッチラペル
- 白シャツ
- アルマーニのウェイファーラー風サングラス、鼈甲
- ブルーデニム
- キャメル色のレザーシューズ
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ダブルのジャケットとブルージーンズという斬新なアンサンブル。
男女同権。男性も女性に見定められる時代のはじまり。
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丹念にボディメイクを欠かさないジュリアン。
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すごくセクシーなトレーニングパンツです。
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逆さにぶらさがって凄いトレーニングをしています。
ジュリアン・ケイのファッション3
ショーファー・スタイル
- ブラックスーツ、ノッチラペル
- 白のボタンダウンシャツ、左胸下にポケット
- 白のハンカチーフ
- 黒のレジメンタルタイ
- ブラック・レザー・シューズ
ジョルジオ・アルマーニは、1990年代の10年間に、ブラックスーツを再評価させたのでした。
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ビバリーヒルズ・ホテルにショーファーの仕事で。
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運転手としての着こなしです。
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どのシャツも襟が短いことに注目。
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伝統的なレジメンタルタイにブラックスーツの珍しい組み合わせ。
ジュリアン・ケイのファッション4
カクテルタイム
- ファッション3のジャケットを、ゴールデン・ブラウン・ウール・カシミア・ジャケットに着替える。ノッチラペル、ノーベント、シングル
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ジャケットの美しい生地感が分かる写真。
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ビバリーヒルズホテルのポロ・ラウンジ。
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ファッション・ショーを見に来ていたミシェル(ローレン・ハットン)と出会う。
作品データ
作品名:アメリカン・ジゴロ American Gigolo (1980)
監督:ポール・シュレイダー
衣装:ジョルジオ・アルマーニ
出演者:リチャード・ギア/ローレン・ハットン/ニーナ・ヴァン・パラント