作品データ
作品名:アメリカン・ジゴロ American Gigolo (1980)
監督:ポール・シュレイダー
衣装:ジョルジオ・アルマーニ
出演者:リチャード・ギア/ローレン・ハットン/ニーナ・ヴァン・パラント
アルマーニ革命とは何だったのか?

スーツの背中に注目。ヨーク仕立てです。

ウォルター・ヒルの『ウォリアーズ』(1979)のポスター。

のちのウォルター・ヒルの『48時間』(1982)と『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)でアルマーニの衣裳が使用されました。

相手の男性のシャツの柄はなんとタータンチェックです!
ジュリアン・ケイ・ルック18 ノータイ・スタイル
- ライトグレー・フランネルジャケット、ダブル、ピークドラペル、ヨーク・ディテール、パッチポケット、ノーベント(ルック7と同じ)
- ライトグレーのシャツ、ショートポイントネック
- ライトグレーの細身のレザーベルト
- ライトグリーンのトラウザー
- ライトグレーのレザーシューズ
私は過去の持つイメージとオーラについて、いつも多くのことを考えてきた。私自身の過去、私の家族の過去、そして私の幼い頃の唯一の楽しみであった映画の過去、映画が確かに私のデザインに影響を与えたと、私は認識している。そして映画が私の最初の愛情であったことも理解している。私は映画監督になりたいと思っていた。この情熱は、まだ私の血の中を流れている。
ジョルジオ・アルマーニ
ファッション・ショーではなく、映画だからこそ、どれだけの月日が経とうとも、人々は、その中の登場人物のファッションを現実と結び付けて、現在に置き換えて考えやすいのです。DVDとブルーレイが、ファッション業界にもたらした革命は、過去の映画が高画質で蘇ることにより、当時のファッションが生き生きと蘇ったということです。
それは本作のファッションも例外ではなく、アルマーニのアンコン革命とは、結局のところ、アンコン・ジャケットよりも、メンズスーツに使用した素材と色彩の革命だったということを教えてくれます。そして、プチプラ・ファッションとは、つまりはファッション感度の執行猶予に過ぎないということを、嫌というほど教えてくれるのです。
アルマーニのブラック・スーツ

ミシェルの夫に別れろと詰め寄られるジュリアン。彼のネクタイはアメリカ式のレジメンタルタイです。

このブラック・スーツはショーファーの時のものと同じスーツだろう。
ジュリアン・ケイ・ルック19 ブラックスーツ再び
- ブラックスーツ、ノッチラペル
- 白シャツ、ショートポイントカラー
- ゴールドタイ、ブラックピンドット
- ブラック・レザーシューズ
ブラック・スーツを着ているジュリアンにレオンが一言いいます。「葬式帰りみたいだな」と。確かにこの時代のブラック・スーツに対する印象は、一般的にそういったものでした。
しかし、12年後に、『レザボア・ドッグス』(1992)の中で、悪党たちが全員ブラック・スーツで現れた瞬間、ブラック・スーツは〝クール〟の象徴へと転化したのでした。そして、21世紀のエディ・スリマンによるディオール・オムのスーツにおいて、ブラック・スーツはモード且つ〝スーパークール〟の地位を勝ち取ったのでした。
アルマーニのポロシャツ。

かぎ編みのカーディガンを着るミシェルとポロシャツのジュリアン。

ラグジュアリーなポロシャツとブルージーンズ。

ミシェルのアースカラーのスタイリングもとても魅力的です。
ジュリアン・ケイ・ルック20 ポロシャツ
- ヌードカラーのポロシャツ、ロングスリーブ
- タン色の細身のレザーベルト
- タイトなブルージーンズ
- カルティエのタンク・アメリカン
こういったヌードカラーのポロシャツにブルージーンズが見事に合うのも、タンカラーのベルトが差し込まれているからです。本作は、ジャケットの映画である以上に、細身のベルトの映画でもあるのです。