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【ラルチザン】ミュール エ ムスク(ジャン・ラポルト/ジャン=クロード・エレナ)

ラルチザン パフューム
©L'Artisan Parfumeur
ラルチザン パフューム
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ミュール エ ムスク(黒いちごとムスク)

原名:Mure et Musc
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン
調香師:ジャン・ラポルト、ジャン=クロード・エレナ、ルシアン・フェレーロ
発表年:1978年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/24,420円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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ジャン=クロード・エレナと共に生み出したムスク革命

©L’Artisan Parfumeur

ジャン・ラポルト

ラルチザンの奇跡!それは市場を使わないという19世紀以前のやり方で、今世紀(20世紀)最後の偉大なる香水ブランドになったことです。

ジャン=クロード・エレナ

ラルチザンの不思議さは、おなじみの香料を使って、とんでもなく変な香りを生み出したり、とんでもない香料で、とんでもなく素晴らしい香りを生み出すところにあります。

チャンドラー・バール ニューヨーク・タイムズ

ラルチザン・パフュームは、世界ではじめてのニッチ・フレグランス・ブランドです。それは、1976年にジャン・ラポルト(1938-2011)によって創業されました。科学者の彼は、1972年に、後に世界的なコスメ・ブランドになるシスレーを創立した3人のうちの一人でした。

ちなみに公式ホームページなどに記載されているシスレーの社史では、創業はウルベール・ドルナノ伯爵によって1976年になっています。それはこの年に、3人からほぼ休眠化していたシスレーを買収した年です。

ラルチザン・パフュームが1976年に創業されたのは、ジャンが、1970年代に絶大な人気を博していたパリのキャバレー「フォリー・ベルジェール」(マネやロートレックの画題にもなった)の振付師の友人の依頼により、ショーダンサー達が着るバナナのコスチュームのために、バナナの香りを調香しようとしたことがきっかけでした。

ほんの冗談のようなきっかけから生まれたこのフレグランス会社は、マスター・パフューマーになったばかりのジャン=クロード・エレナルシアン・フェレーロの協力もあり、その名の意味「香りの職人」に相応しい香りを生み出すことが出来ました。その香りの名を「ミュール エ ムスク(黒いちごとムスク)」と申します。

1978年にラルチザンがはじめて発売した7つのフレグランスのうちのひとつでした。そして、発売と同時に、「パリジェンヌの香り」と呼ばれるほどの爆発的な売れ行きを示し、『フレグランスのフランス革命』とまで言われたのでした。「ミュール エ ムスク」とは、フランス語で「ブラックベリーとムスク」という意味です。

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史上はじめて作られたブラックベリーの香り

©L’Artisan Parfumeur

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コットンのようなフルーティーな香りが肌に完璧に溶け込みます。この香水が人々を魅了したのは、当時、いまだかつてないほど肌に近い香水だったことからです。

ジャン=クロード・エレナ

史上はじめてブラックベリーを香水に使用したこの香りは、クリーンなムスクが流行する導火線に火をつけた香りとも言われています。

ブラックベリー(正確には、ラズベリーケトン=フランビノン)と(今では過剰摂取レベルの)ホワイトムスク(ガラクソリドとエチレンブラシレート)、さらにブラックカラントバッドの組み合わせという非常に大胆な調香を行い香水業界に一大センセーションを巻き起こしました。

ムスクをフルーツによって引き立てるというスタイルは当時かなり斬新でした。フルーツとムスクを組み合わせることに成功したこの香りのすごい所は、そのシンプルな使用香料の数にありました。そうして生み出された〝透明感〟は、後のジャン=クロード・エレナのスタイルの片鱗を感じさせます。

そんな素肌を濡らさずに、シャワーを浴びていくような感覚に満たされるこの香りは、アロマティックなバジルとタラゴンが、水の流れのように澄みやかなレモンとオレンジに溶け込むようにしてはじまります。

すぐにピリっとしたブラックベリーとレッドベリーのカクテルが、きらめくムスクとオークモスにかき混ぜられながら、注ぎ込まれてゆきます。そこには、フルーティだけど甘くはなく、水分と太陽の光で泡立ち弾けるブラックベリーがあります。

高級な天然石鹸の香りと言うよりは、ベリーのフレッシュ、ジューシー、グリーンなどのあらゆる面にムスクが共鳴し合い、この香りを女性の肌越しに香った瞬間、その人の等身大の甘い艶のある匂いに夢中になるような、その人の肌の奥から匂い立つように、自然体の魅力を増殖してくれる香りなのです。

まさに「女子に憧れられるアイドルの作り方」を45年前に易々とやってのけた香りとも言えます。高嶺の花ではなく、〝手の届きそうな憧れ〟にあなたがなる香りなのです。

ちなみに2003年に、亀井明子によりコロン・ヴァージョンが調香されました(現在は廃盤)。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ミュール エ ムスク」を「フルーティ理髪店」と呼び、「オリジナルのミュール エ ムスク(1978)を手がけたジャン・フランソワ・ラポルトの発想は天才的だった。エチレンブラシレートとラズベリー風味のクリーミーな合成ムスクに、けば立った生のレッドベリーノートを含んでいる。その結果、とてつもない輝きと透明感あふれる香りを生み出した。」

「ラルチザンパフュームはミュール エ ムスクの処方に手を加える。エチレンブラシレートをほかのムスクと入れ替え、その結果を台無しにしてしまった。もしオリジナルをもっていたら、大事にとっておくか、私に送ってほしい。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ミュール エ ムスク(黒いちごとムスク)
原名:Mure et Musc
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン
調香師:ジャン・ラポルト、ジャン=クロード・エレナ、ルシアン・フェレーロ
発表年:1978年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/24,420円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム



トップノート:アマルフィ・レモン、オレンジ、マンダリン・オレンジ、バジル
ミドルノート:ブラックベリー、レッドベリー
ラストノート:ムスク、オークモス