【パリで一緒に】
Paris When It Sizzles 『麗しのサブリナ』(1954)で共演したオードリー・ヘプバーン(1929-1993)とウィリアム・ホールデン(1918-1981)が再び共演したロマンティック・コメディ映画。
撮影は、『シャレード』の撮影より前の1962年7月から11月にかけて行われたが、映画が公開されたのは1964年4月でした。ユベール・ド・ジバンシィが衣装を担当したオードリーの主演作の中で、最も知名度の低い作品です。
トニー・カーティスがクレジットなしのカメオ出演でありながら、準主役並みに現れるこの作品が、もし監督が当初予定されていたブレイク・エドワーズ(『ティファニーで朝食を』)だったならば、この作品は間違いなく『グレートレース』(1965)のような愉快なものになったことでしょう。
あらすじ
エッフェル塔が見えるパリのラグジュアリー・ホテルの豪奢なメゾネットタイプの一室で、かつて売れっ子だった映画脚本家のリチャード・ベンソン(ウィリアム・ホールデン)は、高額の前払い金で依頼された映画『エッフェル塔を盗んだ娘』の脚本執筆に取り掛かっていました。しかし、1ページも書けずに酒浸りの毎日を過ごしていました。
ついに締切まであと2日となり、新たに雇われることになった若き女性タイピスト、ガブリエル・シンプソン(オードリー・ヘプバーン)が、飼っている鳥かご持参でやってきました。どうやら2日間住み込みの契約で雇われたようです。
魅力的なガブリエルからイメージが湧き上がり、リチャードはようやく本気を出して脚本の執筆にとりかかることになりました。自分たちをモデルに、娼婦のギャビーと謎の男リックという登場人物を創造し、パリ祭を舞台にしたサスペンスもののラブ・ストーリーを書きつづりながら、脚本内のストーリーと同じように、恋に落ちていく二人。
悲劇的な結末で強引に脚本を書き終えたリチャードに対して、大反対したガブリエルは、締切日の朝、鳥かごだけ置いて去っていきました。
パリ祭の当日であるこの日、恋人とデートしているガブリエルを見つけ、「忘れ物をわざと置いて行って気を引いたんだよね」と彼女を強引に引き寄せるリチャード。そして、脚本を仕掛け花火に投げ込み、ハッピーエンドに書き換えることを約束しながら、エッフェル塔の花火に見守られ、シャイヨ宮の噴水で二人は口づけを交わすのでした。
ファッション・シーンに与えた影響
『パリで一緒に』は、オードリー・ヘプバーン×ユベール・ド・ジバンシィの作品の中でも、最も知名度の低い作品と言えます。しかし、この作品には、30代前半のオードリーの魅力をたっぷり引き出している〝永遠に色褪せないオードリー・スタイル〟が存在します。
この作品がファッション業界に影響を与え続けている要素を羅列していきましょう。それは以下の3点です。
- パリジャンシックなジバンシィのスカートスーツ
- 60年代エレガンスを体現するエルメスのハンドバッグ
- ジバンシィのオレンジドレスに見ることが出来るシャーベットカラーのスタイリングの提案
この作品と、その二日後に撮影が開始された『シャレード』をひとまとめにして、「60年代パリジャンシックの教科書」として、現在もファッション業界においては〝不滅のバイブル〟となっています。ファッションだけでなく、ヘアスタイル、メイクアップに至るまで見ごたえのある作品です。
作品データ
作品名:パリで一緒に Paris When It Sizzles (1964)
監督:リチャード・クワイン
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ウィリアム・ホールデン/トニー・カーティス/マレーネ・ディートリッヒ