ボンドはもうダサいと言われかけた瞬間
ティモシー・ダルトン(1946-)自身は、スーツスタイルよりもカジュアル・スタイルが好きな人であり、それがニュー・ボンドのワードローブに影響を与えているのですが、製作陣は、ここはスーツを着て欲しいというシーンに対しては絶対に引きませんでした。
それはどんな時であろうとも、Mと接するときはスーツであるべしということです。
ボンドムービーがメンズファッションの永遠のバイブルである理由は、その世界観の中にはしっかりとした普遍的なドレスコードが存在し、それが80年代には、ボンドはもうダサいというイメージを生み出しました。
しかし、そうであっても貫き通したからこそ、21世紀においては、若者が見ても、「だからカッコイイ」という普遍性につながったのでした。

ボンドとアストンマーティンV8 ヴァンテージ・ヴォランテ
四代目ボンド・スタイル3
グレー・スリーピース・スーツ
- グレー・ヘリンボーン・スーツ、3ピース、ダブルベンツ、ノッチラペル
- ホワイトドレスシャツ
- ブラックタイ
ティモシー・ダルトンがニュー・ボンドに選ばれ、すぐに撮影が行われたため、ダルトンのためにビスポークで作られたスーツは一着もなかったのですが、このスリーピースはとてもダルトンに似合っています。

グレーは男の真価を引き出してくれるカラーです。

ダルトン=ボンドはいちいち仕草がカッコいいです。
四代目ボンド・スタイル4
スポーツコート
- ベンジャミン・サイモン、黒、茶、青、緑色のガンクラブチェックのウールのスポーツコート、2つボタン、シングルブレスト、ダブルベンツ、ノッチラペル
- ダークブラウンのフランネルパンツ(上下対のデザインに見える)
- ホワイトドレスシャツ
- ダークブラウン・ニットタイ
- ブラウンのレザーベルト
- ブラウンのスリッポン
ガンクラブチェックとは、1874年にアメリカにガンクラブが結成されたときのユニフォームとして採用され、命名されたスコットランドの高地由来のチェック柄です。

ガンクラブチェックの教科書のようなアンサンブル。

表情の作り方、目線、話すタイミング全てが超一流のボンド像。

ダークブラウンのニットタイ
四代目ボンド・スタイル5
ネイビーストライプスーツ
- ネイビーチョークストライプスーツ、3ピース、3つボタン、ダブルベンツ、ノッチラペル
- ホワイトドレスシャツ
- ダークネイビータイ
- ブラックスリッポン

Q=デスモンド・リュウェリンが登場するとほっとします。

チョークストライプがわかる写真。
四代目ボンド・スタイル6
ネイビーのカシミヤコート
- ダークネイビーのカシミヤロングコート、3つボタン
- グレーのフランネルスーツ、ノッチラペル、2つボタン
- ブラックレザーベルト
- ホワイトドレスシャツ
- ネイビータイ
- 黒のオックスフォード

80年代の特徴でもあるロングコートのボタン位置は低め。

チェコスロバキアのシーンは全てウィーンで撮影されました。

コートの中のスーツ。

マリアム・ダボとダルトンと監督のジョン・グレイ。
KENZOを着るジェームズ・ボンド

マリアム・ダボのスキージャケットはFILAです。

KENZOのレザーカーコート
ジェームズ・ボンドがKENZOを着るのは後にも先にもこの作品だけです。KENZOは1983年からメンズラインをスタートしていました。
控えめで、スパイという仕事柄目立たないカラーアンサンブルです。それでいてスタイリッシュさも兼ね備えており、そこがロジャー・ムーアのボンドとの明確な違いです。
さらに、高級車を運転するアクションシーンにも違和感がなく、ウィーンの高級ホテルにチェックインするにも不足ではないという、良きレザーアイテムの万能性を伝えてくれています。
四代目ボンド・スタイル7
レザーカーコート
- KENZO、レザーカーコート、セットインスリーブ、スタンディングカラー
- ダークグレーのシェットランドウールセーター、クルーネック、ラグランスリーブ
- ライトグレー・コットンシャツ
- チャコールグレーのウールパンツ
- ブラックレザーグローブ
- ブラックレザーブーツ

中にはシェットランドウールセーターを着込んでいます。

80年代半ばのレザージャケットはオーバーシルエットでした。

撮影中に談笑する二人。こんな姿さえもカッコいいダルトン。
作品データ
作品名:007 リビング・デイライツ The Living Daylights (1987)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ティモシー・ダルトン/マリアム・ダボ/アンドレアス・ウィズニュースキー/ジェローン・クラッベ/ジョー・ドン・ベイカー